助演女優賞
寝起き。
もう外は人工的な明かりで街が照らされている時間。
成人式のために伸ばしたのにコロナのせいで一生使うこともなく目標を失ってしまった長い髪を縛って眼鏡をかけ、部屋着にスカートを履いてスーパーに既製品を買いに家を出る。
人前で理想の自分を綺麗に着飾っている私にとってはその時間が至福でもある。
誰にも見向きもされず1人で自分のことだけを考える時間。その時だけは、音楽を味方に、無敵になれているような気がする。
何も社会に貢献をしていないのに贅沢にご飯だけ食べているなんて、とんだゴミ人間だなと思いながら日々を過ごしている。
最近は何も上手くいかない。
俺のDMをメモ代わりになんでも送ってくれていいからね、なんて言ってくれる優しいバンドマンがいる。
助けを求めようとDMを開いたけれど何も打たずに閉じる。
これを何度も何度も繰り返す。
本当は話を聞いて欲しい、でも少し怖い。
送ったらどうなるんだろうという起こるかも分からない未来のことばかり考える。
いつもそうだ。
中学生のときからずっと死にたいと思ってきたものの結局その先が怖くて実行できずにいる。
生きるぞ!と振り切ることも、死を決心することもできない。
そんな自分が一番弱いと思う。
そんな弱い自分が嫌いだ。
周りの声に流される自分が、嫌いだ。
でもそれと同じくらい、流されている自分が大好きである。
なんて、綺麗事を言える強さなんてものも私にはないけど。
本当はスマホをこの部屋から外に投げたいし、目の前にあるパソコンを叩き落としたい。
でも結局それもできない。
いつも真面目な自分に、もう1回考え直せと言われる。
そんな自分に何度も救われたけれど何度も殺された。
そのせいで確立されてきたアイデンティティが拡散されつつある。
自分で自己を創っては壊していく。
一進一退。でも日進月歩。
こうやって人間は成長していくのかもしれない、
今日も主人公になれないまま、理想な自分の仮面を被り、自分が求める理想の自分を演じる。