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私はあなたと結婚がしたい


「出会った瞬間にこの人と結婚すると思った」という言葉と、それに賛同する声を何度か目にしたことがある。そういう直感のようなものを信じられない私が、 結婚したいと思った人の話をしようと思う。

私は昔から、恋にはよく振り回されてきた方だった。

少女漫画が好きで、暇さえあれば妄想や空想ばかりするような子供だったので、恋人がいた事も数回はある。初めて出来た恋人には当時、結婚しようねなんて言っていたと思う。少しくらいは本当に結婚するかもと思っていたような気もする。

でもそれは多分、結婚というものが遥か遠くにある憧れのようなものだったからなんだろうなと今ならわかる。もしもあの時、当時の恋人から今すぐに結婚しようと言われたとしても、絶対にできなかった。結局はそんなもんだった。覚悟なんてこれっぽっちもない、ただの口約束レベル。でも、それもそれで可愛かったなと思う。そういう言葉に重みなんて一切感じなくていい年頃だった。

私が結婚という言葉を間近に感じるようになったのは、
23歳のときに友人が当時の恋人と結婚しました、というインスタグラムの投稿を見た時だった。友人の左手に光る婚約指輪を見て、思った。

「あ、もう結婚できる年齢なんだ」と。

正直脳内レベルが中学生くらいから止まってしまったような私からすれば、結婚なんていうのはもっと遠い未来の話で、もっともっと大人の人達がするものだと思っていた。でもそうじゃないとその時初めて思った。
別に何かを焦り始めたわけではなかったけど、その時付き合っていた人と結婚する未来は想像してみた。

想像して、想像できなかった。
その人と、結婚、できないと思ってしまった。

今までの恋愛の終わりは、気持ちが冷めただとか、裏切られただとか、そういう明確に恋が終わる理由があった。でもこの時、私は「結婚が出来ないから」という理由で当時の彼と別れることになった。そのことを伏せるように別の理由を探して当て付けたけど、結局は結婚ができなかったから別れた。

こういう別れ方があるんだな、と少し大人になった時に出会ったのが話題に出すことになる彼だった。
彼とは高校時代に一度付き合っていたことがある。久しぶりに(6年ぶりとかだったと思う)遊びに行かないかという連絡をはじめに、仲良くなった。
6年も時間が空くと、もう元カレ元カノのような気まずさは一切なかったので、仲の良い友人みたいな関係性が心地よかった。心地いいなと思っていた矢先、彼に告白されて付き合うことになった。

彼は付き合った当初からよく結婚を考えていると口にした。結婚を前提に、同棲をしないかと持ちかけられた。私も彼となら結婚を考えてお付き合いしたいと思ったので、その誘いに乗って同棲をはじめることにした。住居を見つけて、役所に住所変更の手続きをしにいった時のことだった。

手続きには一時間弱かかります、と言われたのでベンチで2人待つことにしたはいいものの、当時の私はとても体調が悪くて、眠気に襲われていた。少しだけ眠ってしまおうか、と目を閉じたのが最後、目を覚したのは変更手続きが終わったという呼び出しの時だった。

目が覚めると、彼の肩にもたれかかっていた。
「手続き終わったみたいだよ」という彼は、しきりに私がもたれ掛かっていた方の肩をグルグルと回していたので、尋ねた。

「肩、痛くなかったの」
「痛かったよ」
「起こしてくれてよかったのに。ごめん」
「体調治った?」
「うん。眠気も無くなった」
「よかった、今日は温かいものを食べよう」
「ごめんね。肩、痛かったのに」
「それくらい、いいよ」

彼は肩を一つも動かさずに、私が眠っているそばを離れずにそこにいてくれたらしかった。時間を見るともう40分経っていた。役所からの帰り道、どうしようもなく泣きそうになった。

肩の痺れに「それくらい、いいよ」と言ってくれた。

それがどうしても、嬉しかった。
自分を犠牲にしてまで私の心配をしてくれたあなたと、わたしは結婚したい。

なんてことない、ありふれたワンシーンかもしれない。だけどその瞬間に私は、彼との結婚を決意した。そう思うと、世界に溢れる一瞬をもっと愛おしく思おうと思った。

私はあなたと結婚がしたい。
みなさんが結婚を決めた理由はなんですか。

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