見出し画像

【roots】老年期 《35章》矢車菊の花畑

あれからオスカーとシャーロットはデイブの家の庭を畑にしてトマト、ハーブ、玉ねぎ、人参など野菜を季節ごとに育てて街へ売りにだしていた。
特にパスタソースの評判が良く瓶詰めされたトマトソースは即完売の大人気だった。

10年が経ち2人は27歳になっていた。
デイブとルビーがこちらに来た年齢に近い。
オースティンは起業家として成功し、2人の商売の助けとなってくれていた。
「そろそろ自分の店を持ったら?」といつも助言してくれていた。

ある日、街のマンションの1階にカフェに丁度良い物件があるから見にこないかとオースティンから連絡が入った。
街に納品がてら2人は見に行く事にした。
デイブとルビーが再会したカフェのような気がして、とても気に入った。カウンターと少しのテーブル席の小さな店だった。

ただオスカーは店を切り盛りしたら畑が疎かになるのではと心配だった。あそこで作ったものを提供出来なかったら意味がない。
考え込むオスカーを見てシャーロットが
「瓶詰めと野菜を売る店から始めたらどう?」と提案した。
「なるほど、販売店なら。僕は作って運ぶ今と変わらないんだ」ホッとした様子にシャーロットは
「店員さんを雇ったら?」と付け加えた。
「そういうやり方もあるね」
2人は店をその日に契約して、
すぐ店の外に張り紙をして販売員を募集した。

人当たりの良い明るく楽しい感じの女性を3人雇ってシャーロットが店長、オスカーがオーナーとして店がスタートした。
5年が経ち、畑と店の両立も順調に運び。
オスカーが週に2日、サンドイッチとジュースも出す様になっていた。

デイブたちが閉じてから15年。オスカーは32歳。
何かを成す男になると誓ったあの日の通りに毎日が充実している。
カランと店のドアが開き、20歳前後の若い青年が入って来た。「パスタソースを下さい」
「今日はトマトとクリーム系があるけど…」オスカーが案内すると「オスカーが得意なのはどっち?」と言った。「え?」
「アリソンに教わった方が食べたいな」とにっこり笑って言った。
「デ、デイビッド!!」
オスカーは思わず大声で名前を呼び青年を抱きしめた。「いつ?いつ来たの?」
「今日だよ。ルビーも一緒なんだ。」
「連れて来て!住む所は?あの森に一緒に住もう!!」大の大人が少年にしがみつき嬉々としてはしゃぐ姿にアルバイトの女の子は驚いていた。

もういいかな?とルビーがひょっこりと顔を出した。髪の長いポニーテールの美しい少女。
「ルビー!!久しぶりだね。15年ぶりだ!」とオスカーは声を上擦らせて喜んだ。
「会いたかったわ!デイブがまたやらかして。来るのに時間がかかったのよ」とルビーは笑って告げ口をした。デイブは参ったなと頭をかいて
「オスカーは何才になったの?」と話を変えた。
「もう32歳です」と姿勢良く真っ直ぐに立った。
「大きくなったわけだな。」と20歳位のデイブに言われてオスカーは嬉しくて泣き出した。

いよいよ店の女の子は、この不思議な会話に耐えられずシャーロットへ電話した。

「先に森へ行ける?」オスカーが言うと
「まだあそこに住んでくれてるの?」とデイブが嬉しそうに聞いた。「もちろん!あの家の庭で畑をして、ここで売ってるんだ」
「頑張ったのね」ルビーに労われてオスカーはまた涙がこみ上げた。
「シャーロットが喜ぶな。ありがとう。来てくれて。本当に」3人が再会を充分に堪能していると
「オーナー、奥様から電話です」と店の女の子に言われた。
「え?なんだろう。どうしよう。驚かせたいし…秘密に出来るかな」とぶつぶつ言いながら電話を替わった。
「オスカー大丈夫?変なお客様が来て泣いてるって?店の女の子が心配してるんだけど」とシャーロット。これは黙っているのは無理だなと「ちょっと、待ってね」とオスカーはデイブに電話を渡した。
「仕方ない、説明お願いします」
デイブは受話器を受け取ると「もしもし、シャーロット元気かい?」とはつらつとした声で聞いた。若い男性の声にシャーロットは
「元気ですけど…」いぶかしげな声を出した。
困ったデイブは「ルビーにかわります」と受話器をパスした。
「え?え⁈待って!待って!」シャーロットの声が受話器から遠くまで聞こえた。
ルビーが嬉しそうに「もしもし♡」と言うと「ルビー!!すぐ、すぐ行くわ!一歩も動かないでね!!一歩もよ!!」と言ってガチャンと電話が切れた。ルビーが2人に「一歩も動くなって。すぐに来てくれるって!」と笑って報告した。

to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?