【小説の書き方】破綻しないプロットの作り方! 思考プロセスをトレースして解説 小説講座その8
前回はラストシーンの仮決めを行いました。後は無理のない設定を組み立てていけば、物語作成まであと一歩です。
ラストシーンに至る物語の道筋を、逆算で照らし出していきましょう。
ラストシーンに至る設定を組み立てる
対話式小説の形で、以下のようなラストシーンを書き出しました。
このラストシーンが成立するために必要なのは、「なぜ樋口が怪我をしているか?」という理由付けです。これについては「巨大な敵モンスターを倒した時に怪我した」とでもしておきましょう。
では「どうやって倒したか?」ということになります。これは4人で協力して戦って倒したというのが普通でしょう。なので「この4人がモンスターを倒せるぐらい強い」必要があります。
これは後でキャラ設定に入れるので、メモしておきます。
これで最低限ラストシーンのために必要なパーツが分かりました。また小林さんが最後スカッとするためには、それまでに「小林さんが不遇である」必要もあるでしょう。
これもラストシーンに至るための設定として、掘り下げていく必要があります。
このようにラストシーンに必要な要素を書き出していきましょう。これは設定の矛盾を避けるために非常に大切な要素になります(たとえば書いている内に4人の能力で魔物を倒せないことが判明すると、伏線無くご都合主義で勝つしかなくなります)。
今までやってきたことを総動員して、しっかりと設定を明確化していって下さい。
必要な設定に至る道筋を立てる
ラストシーンに至るために必要だと判明した設定は、以下の通りです。
モンスターを倒して樋口が大ダメージ
一時的に4人は共闘状態
4人はモンスターを倒せるぐらいには強い
小林さんは不遇だった
クラスで異世界転生
樋口が魅了の魔法でやりたい放題
樋口は整形美人
回復魔法で整形が戻る
ではこれを膨らませて、逆算で設定を作っていきます。筋道を立てるのが目的なので、設定はまだざっくり作っていきます。
『クラスで異世界転生し、樋口が魔法でクラスメイトを魅了』→『邪魔になった小林はグループから追い出され、異世界を一人で彷徨う』
これで小林が不遇な理由ができ、小林が樋口に復讐をする正当性も生まれます。またこれだと小林だけ魅了が効かなかったことになるので、「ヒールのおかげで効かなかった」など理由を付けておきましょう。
この時点での物語の解決すべき問題は、「追放した樋口に仕返しをする」辺りになるかと思います。ジャンルは異世界転移に決定していますが、問題の大きさや解決方法は意識しておきましょう。
注意しなければいけないのが、追放された小林の行動です。普通の女子高生が異世界を彷徨っていのは結構大変でしょう。
実はキャンプやサバイバル知識があるという設定を付けるか、早めに現地の人と会わせて保護してあげるのがいいでしょう。
今回は現地の人に助けて貰うパターンを選びますが、単純に小林が保護して貰うのでは彼女の立場が下がります。
ここから成り上がりをするのであればそれでいいのでしょう。しかし今回解決したい問題は、「追放した樋口に仕返しをする」こと。
小林の立場を旅人より上にする方がストーリーの進みがよくなります。
『怪我していた旅人たちをヒールで助ける』
『ヒールが貴重な魔法と判明』
現地の人と友好的にしたいのであれば、何かしら助けてあげるのが定石。何も持っていない小林が現地の人を助けられるとしたら、ヒールくらいしかありません。
なら現地の人が怪我をしており、それをヒールで直すのが自然。また小林は町の外に追放されているので、町の外を出歩いている旅人を助けるとしっくりきます。
この時ヒールが貴重な魔法であれば、小林はより旅人たちに重宝して貰えるでしょう。
これなら旅人たちに無料で水や食料を貰っても、違和感がありません(旅人たちにとって怪我を治して貰えるのは、わざわざ医者に掛かるレベルの重大事になりますから)。
『なんやかんやあって旅人たちと町へ戻る』
そしてんやかんやあって、小林は旅人達と一緒に樋口たちのいる町に戻ります。この時のなんやかんやは、旅人たちのキャラ設定を組まないと作れません。
今は枠組みを作っているので、一旦置いておいて下さい。
『町では樋口が魅了の魔法でやりたい放題』
『旅人から魅了の魔法の詳細や弱点を聞く』
町では樋口が調子に乗って好き勝手している事にします。それでこそ、倒すべき敵となるというもの。
そして樋口を倒したいのであれば、相手の情報を知るのが大切!ということで、旅人から『魅了の魔法の詳細や弱点』を聞いておきましょう。
そして魅了の魔法の弱点を知ったら、今度は樋口の弱点を知りたい所です。一番自然なのは、樋口の知り合いの女子から整形の情報を聞くことかと思われます。
『樋口から逃げてきた女子と合流』
『女子から樋口が整形してるっぽい情報を得る』
女子から話を聞くためには、女子に正気になっていてもらう必要があるでしょう。なので「魅了の魔法が異性にはよく効くが、同性だと効きにくい・何かのきっかけで解ける」という設定を追加しておきます。
この後はいよいよラストシーンに繋がっていく訳です。
『樋口と対峙する』
『町にモンスターが襲来』
まず樋口の所に行きましょう。この時樋口と軽く口論をすると、樋口を倒すべき理由が補強できます。
ただラストシーンでは、樋口に回復魔法を掛けてあげなければいけません。なので、町にモンスターが襲来して、協力して撃退を図る訳ですね。
この時「旅人達を襲っていたモンスターが町に来た」ことにすると、話の繋がりがスムーズになります。
この襲来するモンスターのバックボーンは「なんやかんや」の所に入れましょう。つまり一旦置いておきます。
『小林は仕方なく樋口たちと協力して戦う』
『さっきのラストシーン』
小林と樋口、男子たちは協力して戦います(場合によっては旅人も)。そして、なんとかモンスターは倒すものの、樋口は怪我をしてしまう、と。
こうなればお分かりの通りです。先程のラストシーンに繋がるという流れ。書き出した設定をまとめると、以下の様になります。
「クラスで異世界転生し、樋口が魔法でクラスメイトを魅了。小林はなぜか効かなかった→ヒールのおかげかその他の要因」
「邪魔になった小林はグループから追い出され、異世界を一人で彷徨う」
「怪我していた旅人たちをヒールで助ける」
「ヒールが貴重な魔法と知る」
「なんやかんやあって旅人たちと町へ戻る」
「町では樋口が魅了の魔法でやりたい放題」
「旅人から魅了の魔法の詳細や弱点を聞く」
「樋口から逃げてきた女子と合流」
「女子から樋口が整形してるっぽい情報を得る」
「樋口と対峙する」
「町にモンスターが襲来」
「小林は仕方なく樋口たちと協力して戦う」
「さっきのラストシーン」
旅人と「なんやかんや」を一旦スルーしていますが、これで物語の枠組みは完成。あとはこれで設定を詰めればプロットができあがります。
それに沿って書いていけばいいだけです。次回はプロットの作り方について、もう少し一般化して解説していきます。
おまけ・旅人周りの設定は続きを書くかによる
これで小林さんとヒロインのストーリーラインができました。しかし旅人や「なんやかんや」をほったらかしじゃないかと思われるでしょう。
実はこれらの設定を盛るかどうかは、この物語の続編を書く気があるかで変わってきます。
たとえばこのラストシーンで完結するのなら、旅人はモブで大丈夫。もしくは精々メチャクチャイケメンで、小林さんの恋人になる位の盛り方でいいでしょう。
変に設定盛り盛りにしてしまうと、小林さん達のストーリーに干渉してごちゃついてしまうのです。
ただこのラストシーンの続きを書きたい場合は、この旅人やなんやかんやが重要になってしきます。
なぜなら小林さん達を使って書きたいこと自体は、ラストシーンで終わってしまっているから。続きを書くならまた続編の設定を一から考えるか、使っていない設定を利用するしかありません。
この使ってない設定というのが、本編に関わって来なかった旅人なのです。
続編を作る場合の設定例
例えば、この旅人を実は身分を隠した王子様や勇者だったという事にしてみて下さい。
そうするとモンスターを倒した小林さん達に感動し、こんな事を言い出すかもしれません。
「騎士の称号を与えるから国のために働いて欲しい」
「強い君たちに、ぜひ魔王を倒す手伝いをしてほしい」
そうすれば続編は、これをすればいいのです。
とは言え、ラストシーンの後に脈絡なくそんな事を言い出しても、読者は突然に感じてしまいます。
ではどうするか?お察しの通り、最初に旅人の設定をちゃんと決めておき、本編中に匂わせや伏線を撒いておけばOKです。
最初に説明した通り、「物語は人と人との関わりあい」で動いていきます。つまりこの旅人を、物語を動かすキーにする訳です。
また別に続編を書かなくても、旅人の設定を盛り盛りにしてもダメな訳じゃありません。
ラストシーンの後に樋口が逆上して「小林なんて打算的で心がブス」なんて言い出すものの、実は王子様だった旅人が「小林さんは見返りを求めずに私を助けてくれた。心も美しい女性です」と反論してくれ、樋口が更に惨めになる
なんて。より劇的な結果にしてもいいでしょう。
ただその場合は先ほど言ったように、盛り過ぎた設定が活かせずに、小林と樋口の物語に悪影響を及ぼすなんて事が無いようにだけ気を付けて下さい。
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