![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/114240974/rectangle_large_type_2_af3aa22d1235867a25afbba63d0e65a2.jpeg?width=1200)
【小説講座】設定作りに必要なのは骨格となる3要素! ジャンルを決定する「問題の大きさ」について解説 小説講座その6
これまでシーンを描く練習をしてきてもらいました。ここからは設定を作る練習を行っていきます。
これができれば、いよいよ本格的に長編小説を書いていくことができるでしょう。まずは設定を作るために重要な3つの要素について解説していきます。
シーンから設定を作るのに重要な物語の骨格となる3要素
小説の設定の作り方は様々です。物語を書きながらプロットを書く人もいれば、最初に人物の設定だけ深く作る人もいます。描きたいシーンやオチを思いついて、それに合わせて設定を作る人もいるでしょう。
今回は練習なので、これまで書いて貰っていたシーンを元に、設定を詰めていくパターンをやっていきたいと思います。今までやってきたことの応用で、最も再現性の高い理論です。
このパターンを学ぶには、あらかじめシーンについての3つの要素を知っておく必要があります。3つの要素の説明のために文章を使うので、これまで書いた小説の中から気に入っているものを手許に用意して下さい。
これまで練習で書いた対話式小説から長編にしたいものを選ぶ
要素1・そのシーンの前に何が起きているのか把握する
小説のシーンは、そのシーンだけ突然発生している訳ではありません。必ずそのシーンに繋がる流れがあり、そしてそのシーンは別のシーンに続いていきます。
これは冒頭のシーンでもラストシーンでも同じ。冒頭のシーンに繋がるエピソードゼロが存在する筈ですし、ラストシーンの後も語られない物語が続いていく事でしょう。
以下では対話式小説の設定の言語化をしていきます。皆さんはやり方を参考に、自身で書いた対話式小説で、同じ様に考えてみてください。
ファストフードの店内で、男子高校生と女子高生が話している。
「『ぽっくりさん』て知ってる?」
「恋愛のおまじないだよね」
男子高校生が尋ねると、女子高生は当たり前だと言わんばかり。
しかし女子校生の返答に、男子高校生は首をひねった。
「『ぽっくりさん』って、恋愛のおまじないだとか、そんなかわいいものだっけ?」
聞いた話ではもっとエグかったような……と、男子高校生は呟く。
あら、と。女子高生は根拠を明かした。
「私『ぽっくりさん』にお願いしたら、木村くんと付き合えたし」
「マジ?」
女子高生の言葉に、男子高校生は驚いた様子。女子高生の冗談かとも疑ったが、彼女はいたって真面目な雰囲気だ。
「マジか~。俺も根岸と付き合えるように、お願いしてみようかな」
恋愛のおまじないというが本当であれば、男子高校生にとっても無視はできない。
しかも女子高生と木村が付き合えた、というのが重要だ。なぜならその可能性は極めて低かったのだから。
別に女子高生がかわいくない訳ではない。むしろクラスでもかなり人気の高い方だ。
でも木村は根岸とかなりいい雰囲気だったのだ。もうすぐ付き合うと誰もが思っていたし、裏ではすでに付き合っていた可能性だってある。
女子高生がその木村と付き合えたのであれば、『ぽっくりさん』の力は本物かのしれない。
だから男子高校は、意中の根岸と付き合える可能性に、一も二も無く喜んだ。
しかし女子校生は何でもないことのように、何かとんでもないことを口にする。
「どうだろ。根岸はもうすぐ死ぬんじゃない?」
「なんで!?」
女子高生の突然な言葉に、男子高校生は思わず立ち上がる。
驚きと恐怖と、僅かな怒り。把握できない感情が、男子高校生の中で熱を持った。
「あ……」
周りからくすくすと笑い声が聞こえ、ばつが悪くなる。
座り直す頃には、女子高生の言葉は悪ノリだったのではないかと、無理矢理自己解決しそうになっていた。
「冗談だよな?笑えねーけど」
男子高校生は少々不機嫌に、女子高生に問い詰める。
女子高生はそんな男子高校生の正常性バイアスにはお構いなし。何も写さないガラスのような瞳で、とても静かに口にした。
「恋愛ってね、かわいいものじゃないんだよ」
ぽかんとする男子高校生を横目に、女子高生は立ち上がる。バイバイと手を振り、店の外に出て行ってしまった。
胸の中のざわつきに不快感を覚えたが、男子高校生は彼女を追うことができなかった。
追ってしまえば、根岸が死ぬという冗談が、実は事実なのだと認めてしまうような気がしたから。
このシーンは2人の男女がファストフード店で話をしています。まずは何があってこのシーンが起きているのかを整理していきます。
偶然、もしくは約束して2人でファストフード店にきた
2人は学外で話す程度には仲が良い
共通の知り合いがいる
2人の周囲でぽっくりさんというおまじないが流行っている
男子高校生Aはぽっくりさんの噂を誰かから聞いた
女子高生Bはぽっくりさんで根岸を呪った
男子高校生Aは根岸に片思い
女子高生Bは木村が好きで付き合った
女子高生Bはぽっくりさんを利用して木村と付き合った
女子高生Bのぽっくりさんのせいで、根岸が死ぬかもしれない
整理してみるとこんな感じです。
ざっくり言えばぽっくりさんという呪いを使って、女子高生Bは根岸に呪いをかけ、木村と付き合っていますそして呪いを掛けられた根岸は、いずれ死んでしまう。
こういった背景があり、それを「女子高生Bから伝えられて、男子高校生Aが今初めて知った」と言うのがこのシーン。そしてこれを知った男子高校生Aがどう行動するのか?というのが、この先の繋がりです。
まずは手許のシーンは起きるために、何があったのかを書き出して把握して下さい。
そのシーンの前に何が起きたのか書き出す
要素2・人物の関係が物語を動かす
先程はそのシーンに繋がる背景を整理して把握して貰いました。次に注目するのは、キャラ同士の関係値。
というのも、男子高校生Aと女子高生Bが元々どういった関係なのかが、物語の骨格を作るからです。
たとえば2人が殆ど話したことがないクラスメイトなのであれば、男子高校生Aは根岸を助け、女子高生Bを懲らしめるムーブをするでしょう。
では男子高校生Aと女子高生Bが元々幼馴染で、高校に入る前はお互いに好きだったとしたら?こうなると単純に男子高校生Aが女子高生Bを懲らしめる、簡単な話ではなくなるでしょう。きっと人間の苦悩と、悲しい恋愛が織りなされることでしょう。
そして女子高生Bはなぜ根岸を呪ったことを男子高校生Aに明かしたのか?それも2人の関係値次第。
男子高校生を苦しめるため?それとも呪いをかけたことを後悔して、無意識に止めて欲しかったのか?女子高生Bが男子高校生Aをどう思っているかによって、行動の理由は変わってきます。
物語を読んでいたらドキドキワクワクする考察ですが、決めるのは作者であるあなたです。
自分の書きたい結末に向かうために、人物の関係値はどれ位が適切なのか?もしくは描きたい人物の関係値だと、物語はどう進んでいくのか?しっかり設定を作らなければいけません。
もちろん根岸や木村を含めた、他の人物との関係値も設定しておく必要があります。つまり人物が増えれば増える程、物語は複雑化していく訳です。最初の内は人物を少なめにしておくと、破たん無く進められるでしょう。
今回については実際に登場している2人について、軽く説明できれば大丈夫です。
書いたシーンの登場人物の関係値を明らかにする
要素3・問題の大きさや解決できるか否か
男子高校生Aと女子高生Bの関係値が、物語を大きく動かすのは理解できたかと思います。そしてもう1つ重大なキーとなるのが、問題の大きさやそれが解決できるかどうかです。
例示した物語なら、問題はもちろん「ぽっくりさん」。
ぽっくりさんが解決できないのであれば、男子高校生Aの好きな根岸は死んでしまいます。普通に進めればバッドエンド。実は女子高生Bが男子高校生Aに振り向いてもらいたかった、ヤンデレエンドでもいいかもしれませんが。
ぽっくりさんが解決可能なのであれば、根岸を救う物語になるでしょう。普通に進めればハッピーエンドです。この時は根岸が女子高生Bを許すか否かで、後味も変わってくる事でしょう。
この物語の問題の大きさは、ジャンル決めに大きく関わってきます。これについては後で詳しく解説していく事にしましょう。
まずは手元にある小説で設定されている問題は何かと、その大きさを考えてみてください。
問題の大きさを明確化する
おまけ・問題の解決方法はしっかりと決めておく
問題が解決できるか否かや問題の解決方法については、最初にしっかりと決めておく必要があります。ここがブレると物語がブレてしまいます。
人物の関係性は正直、多少ブレても大丈夫です。最初女子高生Bが男子高校生Aを嫌っている描写があったものの、物語の途中では好きかも知れないという描写も見られる、なんてもの。
基本的に人間の感情は揺れ動くので、「あのシーンで好きになったのかな?」「不器用で気付いてなかったけど、事実は元々好きだったのかな?」という受け止め方をして貰えるでしょう。
一方で問題の解決方法は、こういう訳にはいきません。これを作者が決めないまま物語が進んでしまうと、読者は物語がどこに向かっているのか分からなくなります。
「呪いのもとになったアイテムを壊さないと解決しない」と明示していたのに、実は「7日耐えれば呪いは無くなる」に変えるなどです。
作者が「ぽっくりさんはどう解決しよう?」と分からないまま書いてしまうと、誰も解決まで導けません。どうオチを付ければいいのか分からなくなり、物語は破綻してしまうのです。
もちろん物語の中でキャラクターが、「ぽっくりさんは解決できるのか?」と悩んだり、「呪いは解けないと勘違いしていたけど、実は方法が判明しました」というのは問題ありません。かやらクターは読者と同じく全体的な情報を持たない存在なので、設定がぶれるのとはちょっと違う訳です。
感情はブレてもいいですが、ルールや事実はブレてはいけません。
問題の大きさでジャンルが決まってくる
物語のキーポイントとなる大きな問題の解決。これの解決方法によって、物語の大まかなジャンルが決まってきます。
もちろん異世界転生かSFかなどの舞台のジャンルの話ではなく、もっと細かな物語設定のジャンルの話。恋愛物なのか、ホラーなのか、ミステリーなのか、ファンタジーなのかなどが、物語のキーとなる問題の大きさや解決方法に準拠して決まります。
逆に途中で問題の解決方法を変えてしまうと、ジャンルが変わってしまう事になります。意図した変更なら問題はありませんが、ブレてしまったのであれば読者が戸惑う原因になってしまうでしょう。
問題の大きさによるジャンルの違い
たとえばぽっくりさんの解除はほぼ不可能。それどころか暴走して、どんどん人を殺してしまう呪いだとしましょう。そうなってくると、次に殺されるのは主人公やその仲間かも知れない。
この物語はホラー小説と呼ばれます。
もしぽっくりさんの呪いは条件を揃えなければ発動せず、女子高生Bが主体的に動いているとしましょう。そうすると物語の目的は女子高生Bの策略を看破し、呪いを阻止する事に向かいます。
これだとミステリーに近いです。
次にぽっくりさんの呪いは、非常に弱いものだったとしましょう。どちらかといえば女子高生Bの妄想が、彼女自身を追い詰めてしまっているパターンです。
これはヒューマンドラマや恋愛物になるかと思われます。
ぽっくりさんが完全に暴走して、最終的に世界が滅ぶのであれば世界系。男子高校生がぱっかりさんという別の呪いを呼び起こして、ぽっくりさんと戦うのであればバトルファンタジーとなるでしょう。
このように問題の大きさや解決方法によって、ジャンルが全く違ってくるわけです。
練習で書いた小説を全て確認してみてください。そしてそれらを書き進めると、どういったジャンルになりそうかを考えてみましょう。
自分の考えた問題の大きさや解決方法だと、どういったジャンルになるか考えてみる