#29 17の守護霊
月猫は歩くトラブルメーカーだ。
人生において平穏な日常より、なにかしらのトラブルでなにかと戦っていることのほうが多い。
そんなわたしだが、10年前くらいに、占い師のひとに「あなたには17人の守護霊がいる」といわれたことがある。
1人とか2人くらいに守られているのが普通のなか、わたしは17人。
異常に多いということで、非常にめずらしがられたものだ。
最近友人にこの話をしたところ、「もはやなんかのチームが組めそうだね」という反応をもらい笑わせてもらった。
17人も守護霊がいながらしてこのトラブルの多さ。
それ、ほんとに守ってもらえてるの?
と思われそうだが。
いやこれは、逆にいうと17人いなければわたしの人生ははじめの頃にもう終わっていたかもしれないとわたしは思うのだ。
特大のトラブルにまきこまれはするものの、いつも命だけはぎりぎりのところで守られている。
前回の大雨のときもそうだった。
そして今回。
以前、事故にあったおはなしをしたが、その続きともいえる、危機一髪な話をしてみたい。
そもそもこの事故でも、かすり傷ひとつおわなかったのは守護のたまものかもしれないが。
この事故後、わたしは保険を適用して車を復活させた。
50万くらいの一大仕事だったので、まあまあ大がかりな修理だったと思うのだが、実はそこに修理漏れがあり、気づかずこのまま乗り続けていたら、結構危険だったかもしれないというお話である。
この話の始まりは、今年の夏に行った車検でのことだった。
新車購入後、2回目となる今回の車検。
ディーラーでは高いので、別の業者さんに持ち込んだ。
一日車検で、終了後、思ったより修理費かさんだなーなどと思いながら運転して帰宅していると、目の前のアラートランプが突如点灯した。
ひとつやふたつではない。
みたこともない赤やオレンジのランプが本当に無数に点灯していた。
(わ、なにこれ)
あわてて近くの店舗の駐車場に停車。
色々ボタン押してみても回復しないため、わたしは怖くなって車検工場に電話をかけた。
「走行してたらなんかアラートランプが5、6個突然ついたんですが、なんかわたしやらかしました?」
「どんなランプついてますか?」
「色々ありますが、赤のビックリマークやらオレンジのビックリマークやら、横滑りのマークやら…」
「すぐ工場まで戻ってください」
もう15分くらいまで道は戻ってきていたが、わたしは指示にしたがって来た道を戻る。
(もしかしたら整備のときになんかやらかしたかな?)
もしそうならば値切り交渉をする必要があるな…などと思いながら工場に到着し、待つことしばし。
整備担当の国家2級自動車整備士が説明に現れた。
「今確認しました。今回、車検を通すためにセンサーをまっすぐに訂正したのですが、元々がかなりずれていたため、真っ直ぐ走っているのに横滑りをしているような認識をしてしまい、アラートが複数でたようです」
整備士いわく、元々のセンサーのズレが20ミリ。
通常ありえないほどのズレだという。
「確か去年、事故をしたとおっしゃってましたよね。たぶんその影響だと考えられます」
整備士は続ける。
「右前のタイヤだけが異常にすりへっていたのもそれが原因だったと思われます」
車検前の説明時、右前のタイヤが異常にすりへっていたこと、もうかなりの危険水域にあり、このまま乗っていたらバーストして事故に遭う可能性があったことを話されていたことを思い出す。
「そういえば事故の後から、ハンドルさわらずにアクセル踏むと、左にすすんでたんですよね。あと、直進してるとき、右のライトのところが見えなかったんです」
なるほど、と合点がいく。
少しの違和感だったため気にしていなかったが、まさかそんな原因があったとは。
「でも、修理出したはずなのに…要は、修理もれってことですよね?」
「そうですね。保険で修理されたんですよね?であれば、その工場に一度連絡をおすすめします」
という具合だ。
これは、このまま黙って済ませられることではない。
今回たまたまこのタイミングで車検があったからよかったものの、もしもなかったらと思うとぞっとする。
わたしはすぐに修理を担当したディーラーの店舗に電話してみた。
すると、
「前回の事故では足回りに影響はなかったと判断し、我々は一切手出しをしていないため関係ない」
という回答がきた。
んん?
あれだけの事故で、そもそも足回りを見ていないというのはどういうことだ?
店舗の人間と話していてもらちが明かないので、わたしはディーラーの本社に電話をかけてみた。
こちとらクレーム対応のプロですから。
かける側になっても強い。
すると、本社のお偉いさんが出て、一度詳細調べて折り返しますといわれ、その後の回答はこうだった。
「今回は足回りに影響なしとして修理自体はしていませんが、ちゃんとすべてのテストをして安全性を確保したうえで出庫しています」
若干、工場と言い分が違う。
とりあえず、一度実際に見てから話をしようということになり、本社に車を納車した。
すると、その担当のお偉いさんは、車を隅々まで見たうえで、嬉しそうに写真を私に見せてきた。
「見てください。これ、バンパーにひびが入っています。ここは前回の修理で新品に交換したので、事故後になにかまた衝撃が加わったことの証拠になります。このときの衝撃のせいで、今回の足回りのずれが生じたと言って間違いないでしょう」
なんだと?
確かに、なにかバンパーにひびわれはある。
だが、たったこれだけの傷で、そんなにタイヤがずれたりするものだろうか?
わたしは素人のため、なんとも反撃できず、一旦わかりましたと持ち帰り、すぐさま車検をしてもらった工場に電話をかけた。
そして状況を話すと、足回り20ミリもずれるほどの衝撃であれば、バンパー自体が大きく破損しないはずがないという。
その話を聞き、わたしも色々調べたうえで、再度反撃の電話をした。
バンパーのこの程度の傷で、足回りがずれるわけがないこと。
そもそも工場と本社の言っていることに乖離があること。
当時の修理の資料としてもらった書類の日付が最近の日付のものであり、いくらでも操作可能であり修理の証明にはならないこと。
その書類で全交換したはずの一部(スモールライト)が、全交換と記載があるのに実際は古いものが付いたままになっていたこと。
一か月近く揉めたのだか、最終はディーラー側が非を認め、タイヤ交換にかかる費用などを無料で対応してもらうこととなった。
ほんと、なんでわたしはこんなにトラブルばっかりなんだろう。
まあ、人生経験豊かになるからどんとこいなんだけどもさ。
平穏無事に暮らせる日は来ないのでしょうか…。
守護霊さん、ちゃんと仕事してくださいね?
などと思ってしまう月猫でした。