絶望の中で 4話
ボクは自分の中の音に起こされた。
周りがあまりにも静かなせいだ。
家にはまだ誰も居ない。
雨はしとしとと降っていて、もう雷は鳴らない。
ボクが学校で目覚めてから、親と連絡が取れず、迷惑そうな顔を隠せない担任に送って来てもらった。
身体を丸めて倒れていたボクを、司書先生が見つけてちょっとだけ大騒ぎになった。
実は、倒れて意識を失ったとかでは無く、いつの間にか寝てしまっていただけだ。
だけれど、保健の先生が気絶していたのかもと心配して『めまい』『吐き気』『脈拍』などを確認して大袈裟な事になった。
生徒は6時の完全下校の後だったから、恥ずかしい思いはしなくて済んだ。
とにかく、保健の先生からも担任からも、それから教頭先生からも解放されてボクの部屋にたどり着くと、ホッとしてベッドで寝てしまった。
暫くするとボクの中の音も治って、小雨の音がボクを落ち着かせる。
先生たちは、ボクの心配と自分の心配で平静さを失い、ボクを迷わす。
司書先生の慌ても、保健の先生の冷静さも、後から来た教頭先生の不機嫌さも、全ての面倒ごとを押し付けられたかの様な顔をした担任も、本当はボクの事なんて考えてない。
『はぁぁ〜〜』と長めのため息をわざと大きめに出す。
また少しボクの中の音が始まって、目を閉じる。
この間、耳鼻科のちょっと若い先生に、痛みは無いけれど耳鳴りがするかもと言われた。
でも、普通に耳が悪く無い人でも疲れていたりすればあると言った。
寝る前の静かな時はよく聞こえるとも。
原因は色々あるから、自分でその時の体調や状態で、どうしたらいいか考えてごらんと言った。
そして、それを先生に報告することをボクに任せてくれた。
子どものボクにわかり易くではあったけれど、侮る事なく言葉にしてくれた。
その時から、ボクはボクの中の音が愉快に思う。
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