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4話
夜の散歩はいつからだろう。
小さい頃、眠れない私たちを母が外に連れ出す。
夜の公園は少し怖かったけれど、そこへ行くまでの景色は好きだった。
繋ぐ手が、強く握られた時に気がついた。
本当に眠れないのは、母の方だと。
今も夜の散歩は好きだ。
ひとりで歩くとトテトテと音がついてくる。
新しいアンクルプーツは軽い。
雲間の月は明る過ぎず、安心する。
夜の散歩は、いつもひとりの私が、寂しく無い。
夜が長く、昼間儚く見えた花も、月明かりで怪しさを増す。
澄んだ空気、寒い中すれ違う人たちは、肩を寄せ手を触れ合わせ、足早に通り過ぎる。
身に柔らかい風はおぼろにかすむ月と、花香る静かな夜道。
短夜を怠惰にやり過ごすべきか、惜しむべきか迷い佇む。
そうやって時が過ぎるから、いつもより感情の解放が私の体を動かす。
少し軽くなった私が帰る場所。
その先に、全てを知っているかの様に訪ねてくる見慣れた背中。
その人は、どんな時も私の話し相手で、助言者で、共感者で、抱き枕。
私たちの関係に名前は無い。
これからもそうなのだろうと安心と、本当にそうだろかと不安を混ぜた声でその人の名前を呼ぶ。