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2話
ひとりになったついでに、断捨離した。
開けてない箱のひとつに、結婚式の引き出物のペアワイングラスが出てきた。
それは、友人新婦のおばあさんの強い希望の豪華な結婚式での物だった。
ガーデンパーティーや、レストラン貸切の簡易的な結婚式にしか参加した事がなかったので、帰りの荷物の多さにびっくりした思い出がある。
ワイングラスは、シンプルだけど繊細なカットが綺麗で、大きさも邪魔にならない程度だったので、箱から出して棚の仲間入りをした。
今日はこれで赤ワインを飲もうと決めたので、それに合うメニューを考えて過ごす。
掃除機をかけながら、ミートボールがいいかな?と思う。
ゴミ捨てに行きながら、オムレツがいいかな?、と思う。
洗濯物を畳みながら、ラタトゥイユがいいかな?と思う。
たのしい気分を少し戻せた。
それなのに、インターホンの呼び出し音に、邪魔された。
無視できない程の音の連打に、相手を察して仕方がなくドアを開ける。
案の定、我儘な従姉妹は連絡も無しにやって来て、不機嫌な顔で立っていた。
「百華、来る時は連絡いれてよ」
ムダとわかっていても、一応苦言を呈する。
それでも反省などするはずもなく、私に持っていた袋を押し付けて話し出す。
「明日からオランダに行く」
『はぁ』と小さくため息を吐く。
これは定期的におとずれる、百華の強行旅欲発動に伴って、叔母との喧嘩からの逃避。
の犠牲にこれから私は付き合わされる。
「里芋カレー作って」
百華が押し付けてきた袋の中身を見て、又ため息を吐いた。
里芋カレーは、里芋と玉ねぎと豚ひき肉だけで作る私の母の得意料理で、私と百華の好物だ。
ふたり共家を出てから、私が作る担当となって、時々百華と一緒に食べる。
性格が正反対な私たちは、仲良しでは無いが仲が悪いわけでもなく、食の好みだけは合う、気の置けない関係ではあるのだ。
私は気持ちを切り替えて、里芋カレーの準備をする。
「赤ワインにも合うしね」