[無料記事]セパレータに関する特許出願動向調査 #電気自動車 #EV
前回の記事
前回は、車載バッテリの構成部品全体を対象に調査しましたが、今回はセパレータのみを対象に調査しました。
有料記事購入の際に参考になるよう今回は全て無料で公開します。概ね今回と同種のグラフを使用しますが、内容により異なります。
非水電解質電池を構成するセパレータとは、正極と負極を分離するための微多孔膜で、ポリオレフィン系樹脂で作られているものが現在の主流です。
検索式
件数 5279 件
発行年月日 1971/01/05 ~ 2024/09/26
対象公報 A,U,U9,T,TU,S,SU,W,B9,Y9,B,Y
検索日時 2024/09/28 14:40:04
検索式 \1 ($1+$2)*$3*$4*$5#$6
$1 (H01M50/40~H01M50/469+H01M50/489~H01M50/497)=LIC,LRIC,LFI,LRFI
$2 c08=LIC,LRIC,LFI,LRFI
$3 セパレータ=TX
$4 (バッテリ+電解液+電解質+二次電池)=TX
$5 19710105~=AD
$6 B09=IPC,IC,RIC,FI,RFI
$1で非水電解質二次電池のセパレータに特徴がある発明を絞り込むもので、$2は有機高分子化合物の製造や加工に関するものが含まれます。これらを、$3と$4のワードで絞り込むという方法をで検索しました。$5は期間を指定するものです。$6はプレ調査で発見したノイズを除去するために$6を除くようにしています。
取得したデータは筆者が名寄せしています。
出願件数推移
特許出願は、出願公開制度の関係で、出願が公開されるのは原則出願から一年半です。そのため、全数公開されているのは2022年までで、2023年と2024年は一部のみしか公開されていないので見かけ上減っています。
出願件数が増加傾向にあり、特に2015年以降急増しているので注目の分野だと言えそうです。
次に出願人の内訳を見ていきます。
出願件数30件以上の出願人を出願件数が多い順に並べてあります。
参入時期と撤退可能性を見るためのグラフです。
横軸が最初の出願年、縦軸が最後の出願年です。バブルサイズで出願件数を表しています。
右上のエリアが新規参入、左上が長期間出願し続けている出願人と見ることができます。
次に、出願の勢いを見るための図です。
全数公開されている2022年から10年を区切りとして2012年前後10年の増減率を算出しています。2001年~2011年の出願件数より増えていれば上側、減っていれば下側に位置するようになっています。右上のエリアにいる出願人が2012年以降の出願件数が多くて勢いがあるといえると思います。
こちらは左側を拡大した図です。
この図からも新規参入者が分かるようになっています。左上100%に近ければ2012年以降にした出願が大半ということになります。件数は少ないですが、注目しておきたい会社です。
プライムプラネットエナジー&ソリューションズ:トヨタ自動車とパナソニック ホールディングスの合弁
エナジーウィズ:昭和電工マテリアルズ㈱(現 (株)レゾナック)の蓄電デバイス関連事業を分割し、エナジーウィズ株式会社が継承
次の図は被引用回数を集計した図です。一般的に他の出願で引用される回数の多い出願は基幹特許や重要特許である可能性が高いとされています。
この2つの図からは出願件数が少なくても重要な特許を所持している可能性がある出願人を見つけることができます。権利の生死状況も見ないといけませんが、左上にある東芝やデュポン(ノースカロライナ大学と共同出願)、トヨタ、三井化学、日東電工などが候補です。また、最大引用回数は少なくても東レや旭化成のように合計引用回数や出願件数が多い出願人は他社の参入障壁となっていると考えられます。
個別の出願を対象にした被引用ポジショニングマップです。
こちらの表示は筆頭出願人のみです。また、特許権の存続期間は原則出願から20年なので2004年以降の出願を対象にしています。ここでは権利の生死情報が不明なので個別に確認する必要があります(表示できるよう調整予定)。
こちらのグラフに登場する出願のリストは最後にあります。
ここからは出願人ごとの発明の技術内容を見ていきます。IPC(国際特許分類)を使用し、筆頭IPCになっているものを集計しています。筆頭IPCは、その出願の内容に最も近いものが指定されます。
この表からは、セパレータに関するどのような技術に注力しているのかが分かります。
例えば、日本ゼオンは、C08F220(炭素-炭素二重結合のみが関与する反応によって得られる高分子化合物)とC08L33(不飽和脂肪族基を含む化合物やその誘導体の組成物)の発明を主に出願しているので、この特徴を持ったセパレータ関連に強みを持っていると考えられます。また、旭化成は、C08F10(1個の炭素-炭素二重結合を含有する不飽和脂肪族炭化水素の単独重合体または共重合体)の出願を多くしています。このことから旭化成はC08F10に関する技術が強みになっていると推測できます。他の出願人についても同様に注力していると思われる技術内容を特定できます。
2012年前後10年の増減率を表した図です。この図からは大まかな技術トレンドが把握できます。
改正によって削除された分類や新設された分類もあるため急増しているからトレンドのものとは言い切れません。実際に、H01M50が100%の理由は、H01M50が新設され再分類している途中のためです。
今回はこの図はあまり有用とは言えませんが、前回のバッテリ全体を対象にした調査では、前固体電池に関する出願が増えていることを確認できています。
H01M50:燃料電池以外の電気化学的電池の発電要素以外の部分の構造の細部またはその製造方法(つまり、この分類に非水電解質二次電池用のセパレータの製造方法が含まれることになります。)
本記事で得られた情報を利用した行為によって生じた損失について一切責任を負いません。
産業技術総合研究所 - 特願2010-533918
三井化学 - 特願2011-539408
東レ - 特願2004-321976
積水化学工業 - 特願2016-097438
カネカ - 特願2012-088484
三井化学 - 特願2006-514559
三井化学 - 特願2013-551707
三菱ケミカル - 特願2004-369130
三菱ケミカル - 特願2009-066071
三菱ケミカル - 特願2004-229549
東芝 - 特願2004-168961
産業技術総合研究所 - 特願2006-058809
東京都 - 特願2010-258211
東レ - 特願2006-512577
ENEOS - 特願2007-556937
AGC - 特願2006-514857
三菱ケミカル - 特願2006-276414
クレハ - 特願2005-503534
東京応化工業 - 特願2015-530925
三菱ケミカル - 特願2014-525652
旭化成 - 特願2010-050748
丸尾カルシウム - 特願2007-556800
AGC - 特願2005-505925
各IPCの解説のファイルです。
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