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冷ややかなまなざし

 近代科学の発展によって、物を詳細に分析することが可能になった。

例えば、道に落ちている石を分析しようとすれば、目で視たときはただの石であるが、別の手段を用いて視るとどうなるだろうか。

顕微鏡で拡大して視れば、一つの石が小さな何種類もの結晶の集合体であることが分かるだろう。

そして、化学薬品をその石に一滴垂らしてみればガスが出るなどの反応が起こり、石に含まれている物質が何であるか確認することができる。

このように視ることで無限に対象を分析することができるようになった。視ることが特化されることで視る対象は他者になり物体化する。

物体化することで分析可能なものであり支配せずにはおかない対象になる。これを中村雄二郎氏は「冷ややかな眼差し」と呼んだ。

人間関係においても同じことがいえる。

初めて会う人に対峙したときに人間に限らず動物は、この人はどのような性格で、私と相性が良いのかなどと相手の内面を探ろうとする。

これも対象を物体化し分析、支配する行為であり、相互にこの視線を送り合っている。

相手の視線や動作から完全ではないとはいえ相手の内面を探ることができるが、あまり大袈裟に探ろうと視線を送ると相手からしたら恐怖を感じるだろう。

見ること、知ることが他の人間を支配する権力であり、見るものと見られるものとの冷ややかな分裂をもたらした

 

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