見出し画像

【つながる旅行記#54】石鎚山 のんびりさんぽ編

前回のあらすじ:
旅行が始まって始めての日本百名山、「石鎚山」は険しかった。
命を大事にということで下山。しかしこのまま帰っていいのか?
そう考えた結果、しばらく石鎚山の麓を歩いてみることにするのだった。

人間は落ち込んだとき、新たな目標ができると頑張れるのかもしれない。

気落ちしていた自分はどこへやら。
今の自分はかなりのやる気に満ち溢れている。

残念ながら登山では敗北した。これは事実だ。
しかし今の自分には別の目標ができた。

のんびりさんぽである。


絶対やってない温泉

思えば、もし順当に石鎚山に登っていたとしたら、この道をこうしてゆっくり歩くこともなかったのだ。

きっとバスに乗って伊予西条駅にただ向かうだけだっただろう。

もちろん、歩いて伊予西条まで帰るとかいうわけではない。
出来ないとは言わないが、普通に途中でバスを捕まえる予定だ。
足が死ぬ未来しか見えないし。

流石に22kmは歩きたくない
なんで穴あいてるんだろう

行きのバスでは味わえなかった石鎚山の風景を堪能する。

石鎚山の川の色はエメラルドグリーンに見えるが、これは川に転がる石の色から来ていそうだ。
どんな名前の石なのだろうか。

ん?

なんか高そうな椅子が放置されていた。

一体どういう経緯でここに……?

山から染み出した水がダバダバだ
緑色のきれいな石だ

さっきから道端のあちらこちらで水が湧き出している。
小さな滝も多い。

水が豊かな山なんだな。

ガッツリ登山をするのもいいかもしれないが、こうやってのんびりと山間を歩いているのも楽しいと思い始めた。

本来は石鎚山に登るために買った食料を食べつつ歩く。

なんだか小学校の遠足を思い出す。
いやこんな山の中を遠足なんてしたことはないのだが、なんとなく。

……こういうのもありだな。

謎の階段
めちゃくちゃ古そうな橋
ソウルシリーズにありそう
よめない
もうやってない?旅館
きれいな流れ
なんだこれ
ダイナミックな道
くり抜いたトンネルを抜ける

いやめっちゃ楽しいな。


この短距離で目まぐるしく変わる風景。
人間の手が入っているからこそのあれこれも加わって、見どころ満載だ。

というか行きのバスで来たときにこんな道を通っていたのか……。
朝早かったので、眠くて景色をろくに楽しんでなかったことがよくわかる。

そういえば山に登るという行為は、「命の危機」を感じることにより、
生きる力を蘇らせる効果があると聞いたことがある。

現代では普通に暮らす分には安心安全が行き渡っており、犯罪に巻き込まれることもまずない。命の危機というものに接する機会があまりないのだ。

だから現代人は生きる意味に悩み、ふさぎこんだりする。

山登りをする人達はそういった危機を登山によって感じることにより、
生きる力を呼び覚ましているのだという。


これは自分もちょっと感じてはいる。

今まで低山とはいえ色々な山を登ったが、どこであろうと山独特の緊張感があった。

登山の用意も、足の運び方も、全てが自己責任だからというのもある。

思えばそれらによって、知らず知らずのうちに山に自己肯定感を上げてもらっていたのかもしれない。


自分はニートだった頃、ヤマノススメの影響で高尾山に登った。
それは確かな達成感があったし、生きている楽しさも実感した。

そして日常では会話なんてスーパーでのやり取りだけな自分が、
山では「こんにちは~」と挨拶が出来るのである!
見ず知らずの他人に!!


うん、引きこもりは山登りをするべきだな。


ヨットじゃない。
やるべきは山登りだわ。

そんな事を考えながら歩く。
ちなみに今は別に命の危険は感じていないが、シンプルに楽しい。

やはり人間は定期的に山に行くべきなのかもしれない。

楽しいから。

綺麗だ…
先には何があるのか
おや…?

ふと道端の苔を見る。
これはまさか臥龍山荘で見た苔に見えない苔、『ぼたん苔』か…?

うん、よくわからん。

何の跡だろう

なんだかさっき苔を見てからというもの、道路際の苔も気になってきた。

よく見るとなにやら難しい構造をしていることを初めて知る。

オレンジは汚れじゃなくて苔だったのか

なんだか苔に目覚めそう
結構面白い世界かもしれない。

いろんな物を見てみないと、自分が何を好きかなんてやはりわからないな。

苔か……。

加茂川

ここで初めて、今まで見ていた川が加茂川という名前だったことを知る。

ふれあいの里バス停

ちょうどよく人家の多いエリアに来たことだし、ここからバスに乗ることにしよう。

まだバスが来るまで時間はあるので、このあたりを散策することにする。


いい景色だ
石鎚ふれあいの里

石鎚ふれあいの里に到着。

バンガローが立ち並んでいる。

……いや、公式サイトを見ると違った。
これはバンガローではなくケビンである。

バンガローにはトイレ等の設備はないが、この建物たちにはトイレ、エアコン、風呂に冷蔵庫などなどが揃っており、普通に快適なようだ。

なんとなくバンガローとか言って恥をかいてしまった。
(子供の頃に宿泊経験があったのはバンガローだったから……)

でもケビンというものは初めて聞いた。
この際だし調べよう。

アウトドア系の宿泊施設にはケビンの他に、
コテージ、ロッジ、バンガローなんかもありますが、
一般的に施設の充実度・グレード(値段)の高い順に
①コテージ > ②ロッジ > ③キャビン(ケビン) > ④バンガロー
となることが多いようです。

箱の森プレイパークのホームページ

つまりケビンはバンガローより一つ上のランクらしい。

設備の充実具合を見ると、そこらのホテルレベルだと思う。
一気にレベル上がりすぎである。

しかしそうなると、一体ロッジコテージはどうなっちゃうんだ……? 


ピザ窯

そしてレトロな感じの建物もある。

実はこれ、小学校の建物を利用しているのだ。

思えば、自分の通った小学校には卒業してから行かずじまいだ。
気づいたときには無くなってたら悲しい。

こうやって別の形でも残ったのなら、嬉しいと思うかもしれない。

「そういえば……?」と、スマホのKindleアプリを立ち上げて、
グレートトラバース 日本百名山ひと筆書き」の電子書籍版を見る。

これは、すべての行程を徒歩とカヤックで踏破しつつ百名山を登るという、
人間辞めてるレベルの挑戦をした田中陽希氏の本だ。

石鎚山の出てくるあたりを見る。

……やはりそうだ。
田中陽希氏はここ、石鎚ふれあいの里に泊まっている。

リノベーションされた教室に泊まったらしい。

思えば教室で寝泊まりなんて、普通の人生では1回も出来ないかもしれない体験だ。

なんだか泊まりたくなってきた。

しかも田中陽希氏は1170円で泊まったとか。
安すぎである。

グレートトラバースには毎回ワクワクを貰っていたのを覚えている。

こうして山を登り始めたきっかけの一つに、グレートトラバースの影響は間違いなくあるだろう。

同じことをやろうとは思わないけど。

(あれは常人には厳しい)

流れも穏やかなので、川に近づいてみる。

めっちゃ水綺麗だな……!

そしてこの石はなんて名前なんだろう……
生きていたSP360

なんだかんだでウォーキングも5時間を越えていたらしい。

……うん、終わってみれば良い登山だった。

頂上まで行けなかったときは、嫌な思い出として残ってしまうんじゃないかと思っていたが、こうやってゆったりと散歩をしたことでむしろ良い思い出になった気がする。

思いもよらずグレートトラバースの聖地巡礼も出来たし。

人間万事塞翁が馬だ。

良いことも悪い事も、結局予測なんて出来ないらしい。


石鎚山、来てよかった。



~ 石鎚山編 完 ~


~次回~


サポートには感謝のコメントをお返しします!