飲める洗剤を買ったときの話【マザータッチ】
ニートになってはいけない。孤独で視野が狭くなるから。
ニートになってはいけない。自尊心が低下するから。
ニートになってはいけない。飲める洗剤を買ったりするから。
自分は約2年間のニート生活を過ごした。
なんとなくの流れについては過去記事を読んでもらうとして、
今の時代のニートはとにかく娯楽には困らない。
PCやスマホがあれば、動画を見てるだけで1日が終わる。
お金が尽きない限りは一生引きこもっていられるだろう。
しかし、2年もニートをやっているとおかしくなる人間も出てくるのだ。
孤独は人を狂わせる。
孤独は行動の修正をする機会を失う。
今回は、そんな狂ったニートのお話だ。
【ニートのくせに健康志向に目覚める】
ニートは自尊心がどんどん低下していく。
そりゃそうだ。
世間では仕事をしてない人間というのはゴミ扱いである。
いや、実際に世間から「このゴミが!!」なんて直接言われたことはないが、ネット上では「ニートはゴミ」という意見が大多数に感じられる。
実は世間が、「ニートにも理由があるよね、わかるよ」「支援を広げていかないとね」「俺も昔はそうだった。大丈夫だよ」とか仮に思っていたとしても、その情報にニート本人が辿り着けなければ無意味なのだ。
人間は自分の触れている範囲の情報でしか判断できない。
「世間はニートをゴミ扱いしている」と自分が考えていたら、
それに引きずられて「俺はゴミなんだ……」という考えになる。
自尊心は地に落ち、本当のゴミへとまっしぐらである。
見事にノセボ効果によって最低レベルに落ちた自尊心。
そして自分が始めたのが……体質改善である。
せめて健康になることで自尊心を高めようとしたのだろう。
それが地道に筋肉を鍛えるとかだったならマシだったのだが、
自分は違った。
普通レベルのことをしても世間より健康にはなれない。
もっとすごいことをしないと。
……そう考えたのだ。
日々無駄にネットに触れる時間が長かった故に、
ネット上に溢れる怪しい健康商品にどんどん興味が湧いていく。
そこで出会ったのがマザータッチだった。
孤独なニートに、「それ変じゃね?」と、助言をくれる友人はいなかった。
【飲める洗剤を購入】
『この素晴らしい世界に祝福を!』という作品がある。
ノベル版はテンポが良くて読みやすく、アニメも素晴らしい出来で最高だ。
そんな作品の中で、とある教団の信者が「この洗剤…飲めるの!!」と、
飲める洗剤を勧めてくるシーンがある。
普通の人なら、「やべーこいつらw飲める洗剤てwww」
なんて笑い飛ばせるシーンだが、自分にとっては笑えなかった。
だって飲める洗剤を買ったし、飲んだことがあるから。
有り余る時間であらゆる変な情報に触れた自分は、
一般人以上の健康を目指すには洗剤を飲む必要があると思った。
そこで出会ったのが飲める洗剤、『マザータッチ』である。
気軽に試せる値段だったし、筋トレのようなきつさもない。
しかし世間の多くは試していない。(そりゃそうだ)
「世間の人が知らないすごいもの知っちゃった……!」状態だ。
ここで社長からのメッセージを見てみよう。
なんとこのマザータッチ、洗剤として使えもするが、もともとは飲料水として開発していたのである。
そしてうまいこと人間に利する善玉菌だけを活性化し、
悪玉菌は眠らせる(???)という。
最終的にはこの効果によって、廃水が河川まで浄化する。
もはや使うことで地球にも良い影響を与える素晴らしい製品である。
どんどん使うべき理由が積みあがっていくのを感じる。
成分も見てみよう。
有害そうな化学物質はなさそうだ。
確かにこれなら飲んでも問題ない気がする。
唯一、EM発酵物質というのが意味不明だが、これはEM菌というものによってミネラルやらなんやらを発酵させたすごい物質らしい。
さらにはマザータッチは重力波物質であり、重力波を放出しているらしい。
それ故にマイナスイオンの放出力が素晴らしく、優れた還元力を発揮するとのこと。
こんなものを飲んだら、体中がマイナスイオンで超健康だぜ!!
書いてて心臓が痛くなってきたが、当時の自分は素晴らしいものを見つけた熱に浮かされ、見事に購入した。
世間では知られていないこの素晴らしい製品に気づいた選ばれし仲間たちのレビューも、高評価ばかりだ。サクラチェッカーも太鼓判を押している。
【洗剤を飲む】
その後、無事に到着したマザータッチ。
しかしいきなり飲むのはちょっと勇気がいる。
ウェブサイトでは実際に飲んでいる画像があったりするが、やはり洗濯用として売られているものを飲むだなんて……。
まずは普通に洗濯から試してみよう。
……洗濯が終わった。
当時の自分はニートとはいえ毎日シャワーを浴び、ほぼ汗をかく生活をしてないので、洗濯物のにおいはそもそも強くはない。
マザータッチで洗った服やタオルはヒバの香りがした。
ヒバエキスが入ってるから当然なのだが。
レビューによると、「洗濯槽にこびりついた汚れすらマザータッチで綺麗になる!」とのことだが、そこまで汚れた洗濯機でもないので効果のほどはわからない。
当然だが、廃水が河川を綺麗にしてくれているかどうかもわからない。
そしてそんな日々が何日も過ぎたころ、
いよいよ満を持して、マザータッチを飲んでみることにした。
元々そのために買ったのだから。
これを飲み、他人より健康になるのが当初の目的だったのだ。
しかし本当に洗剤を飲むのか……?
いや、元は飲料水として作ってるんだから、きっと大丈夫だから。
これで普通の人以上に健康になれるんだから。
洗剤を、飲んだ。
口の中にヒバの香りが広がる。
吐き出すような不味さなどは特になかった。うまくもないが。
……何してんだろ自分。
我に返る自分が居た。
【目覚める】
ニートをやっていると狂うものだ。
とくに自分の場合は一人暮らしニートであり、貯金を浪費して生活していたのでなおの事そうなったのだろう。
実家で暮らしていて、自由な金もないニートだったら、
そもそもこんな商品を買うこともなかったのかもしれない。
洗剤を飲んだ自分は、ようやく自分を客観視できるようになった。
”なんで洗剤飲んでるんだ自分は……?”
この当たり前すぎる感想がどういう意図で出てきたものかはわからない。
生来のめんどくさがりな性格が発動して、効果が出てるかどうかもわからない物質をこのまま飲み続ける生活がアホらしいと思ったのもあるだろう。(別においしくもないし)
そんなことは買う前に気づけよという話だが、当時の自分にそんな理性はなかったのだ。ニートのせいで。
そう、全部ニートが悪いことにしておく。
とにかく、もうマザータッチは止めよう。そう思った。
そもそも飲料水として作ったなら、
何日も常温で放置してたらヤバいんじゃないのか?
それとも全然腐らない魔法の水なのか?
中世の船員たちはマザータッチを樽に詰め込んで出航するべきだったのか?
色々な疑問が今更浮かんでくる。
残ったマザータッチは、全て浴槽に投入。
日ごろシャワーしか使わないので、久々の風呂は気持ちよかった。
ヒバの香りがする良い風呂になった。
(のちにヒバの木風呂に遭遇し、マザータッチを思い出すことになるのだが、それは別の話である)
【で、どうなの?】
マザータッチの健康効果はわからない。
実感する前にやめたからである。
洗浄効果に関しては、貝殻が入っているようなのでアルカリ系の洗浄力はおそらくあるのだろう。ヒバの香りもするし、そこらの洗剤のにおいが苦手な人はリピートしてもおかしくはない。
Amazonや楽天の評価が高いのも、業者の工作によるとは限らない。
樹液シートだって効果は一切ないし、汗をかいてもデトックス出来ないという研究結果が出て何年経ったのやらだが、レビューは高評価なのだ。
プラシーボ効果による純粋な感想の可能性はある。(工作の可能性もある)
ところでEM菌に関しては、以下のような自費での調査結果がある。
そしてEM菌に対して批判的な情報を出したメディアがEM菌飲料の販売業者に訴えられた裁判では、メディア側が勝訴している。
世の中にはよくわからないものがたくさん売っている。
樹液シート、空間除菌、マイナスイオンに水素水。
しかし過去にだって、効きもしない万能薬はいくらでも売られていた。
ファクトで見てみると、世界はどんどん良くなっているらしい。
確かに現代はヤバい商品があったとしても、それに対する反論を調べようと思えば調べられる状態にはなっているのだ。まだマシではある。
今の時代は情報の検索能力と、理系リテラシーが重要なのだろう。
とはいえ情報工作はニセ科学側も行えるのだ。
判断するのは、自分自身だ。
というわけで、洗剤を飲んじゃったニートの話は終了。
孤独と自尊心の低下は人を狂わせる。
ニートになるのなら、高い能力は持っておこう。
「いや高い能力あったらニートにならんのでは?」
という気がしないでもないけど、人には色々事情があるのだ。
世の中に溢れる怪しい製品を見て、使うかどうかを判断するのは自分自身。
しかし、心のどこかに疑いの気持ちを持っておくこと、
その疑いを抱くための知識を備えておくこと、
その知識が偏ったものではないことが大事だ。
……いや、自分で言っていてこれは難易度高いなと思う。
ちなみにニート時代の自分は、次は断食と糖質制限に傾倒することになる。
人間、学ぶのには時間がかかるのだ。