消えたいじめの記憶
ありがたいことに自分はいじめられることもなく、
無事に学校生活を終えた……わけではなかったらしい。
「らしい」というのは、自分にその記憶が無いからである。
親によると、小学校低学年のとき、あるやんちゃな子が自分に対してあれやこれや暴力や物損を伴う何かをしていたようなのだ。
発覚したのは、自分が「学校行きたくない!!」と突然言い出したから。
その後どうやってそれが解決されたのかを含めて、自分はその辺りの記憶がすっぽり抜けている。本気で思い出せない。
むしろそのやんちゃな子は良い友達だとすら思っていた節がある。
解決後、普通に一緒に帰ったり、家にも遊びに行っていたくらいだし。
思えば、相手や親にとっては軽くホラーだったのかもしれない。
「なんでこいつあんなことされて何事もない顔してんだ……?」と。
こういう現象ってなんなんだろうと思って検索すると、『解離性健忘』というものが出てきた。強いストレスを受けたとき、その出来事を忘れるという防衛本能らしい。
まだ経験不足な子供時代だったこともあって、友達からいじめを受けるのはかなり衝撃的なことだったのだろう。
解離性健忘のおかげで、自分は「学校行きたくない!!」という状態から脱することができて、不登校にならずにすんだ可能性がある。
もちろん、親が対応してくれたおかげで問題解決したことも大きい。
問題が解決していたからこそ、「このストレスにしかならん記憶はもう消しとくか…」と体が判断したのだろうし。
その後、やんちゃな子は高校まで一緒になり、彼の陽キャぶりに引きずられることによって高校スタートダッシュの友達作りは成功することになる。
しばらくして自分の陰キャぶりが露呈し、陽キャグループからは離脱していくわけだが、それはそれで他のグループにすぐ馴染めた。
陽キャの友達がいるのは強いのだ。
なんだか大手企業出身の人間は転職で有利っていうのと似てるなと思った。
でも、忘れたとはいえ、あの頃のいじめの経験で自分の陰キャ部分が形作られた可能性もあるのかもと思うと、やはりいじめられるのは良いことなんてないなとも思うのだ。
友達に裏切られる怖さをあのときに知ってしまったせいで、自分は率先して友だちを作りにいかない人間になってしまったのではないか……?
なんか腹たってきたな……!
でも彼が高校では救ってくれたのは事実だし……!
……なんとも人生とは、ままならないものである。
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