久々に『甘茶』を飲んでみた 【失われた時を求めて】
毎日コーヒーばっかり飲む日が続いている。
もちろんコーヒーに健康効果があるということは知っているが、それにしたってちょっと飲みすぎているような気がしないでもない。
行き過ぎたコーヒーの飲みすぎは害になるとも聞く。
これはしばらくコーヒーは1日1杯くらいに控え、他のものを摂取するべきか……?
そんなとき、ふいに頭に浮かんだのが『甘茶』である。
なぜこんなものが今思い浮かんだのかはわからない。
なにせ自分が甘茶を飲んだのは今までの人生でたった数回。
しかも幼少の頃だけなのだ。
自分の通っていた幼稚園は仏教系だったので、お釈迦様に甘茶をかける行事が存在し、そのときに甘茶が飲めたのである。
うちの幼稚園にはおやつの概念は存在しなかったので、甘いものなんて灌仏会に飲める甘茶だけ。なので最高に美味しく感じたのを覚えている。
だがそれ以降の人生ではそもそも甘茶を店で見たこともないし、飲む機会も訪れなかった。
果たして甘茶農家は生活していけるのだろうか?
いや、お寺はいっぱいあるし案外いけるのかも……?
甘茶農家の心配はともかく、周囲のスーパーには全然売ってないので例によってAmazonで注文した。
なんだかパッケージがゴージャス!!
八女・星野村という、なんだかすごく星が見えそうな名前の場所で作られた『聖なるお茶』らしい。
そもそも甘茶とは何なのかというと、「アジサイの変種の若葉」やら「アマチャヅルの葉または全草」らしい。
そして濃い甘茶を飲みすぎると嘔吐するとのこと。(怖ッ)
まあそんなことを聞いてしまうと恐ろしくなってしまうが、なんだって過剰摂取は問題になるものである。
それにもちろん、良い面もあるのだ。
超甘いのにカロリーゼロだし。
甘茶に含まれる甘味成分は、なんと砂糖の1000倍だという。
アスパルテームですら200倍なので、天然素材のヤバさを感じる事例だ。
……幼稚園の記憶を思い出す。
あの良い感じの甘さ。
あれは砂糖ではなく、甘茶由来のものだったのだ。
思い出に浸るのはほどほどにして、さっそく飲んでいこう。
裏面に書いてある甘茶の淹れ方によると、急須に1gの甘茶を入れ、1分間浸出するらしい。
こ、こんな量で本当に大丈夫なんですかね……?
まあ最初は説明どおりに淹れてみよう。
熱湯(100℃)をがっつり注ぎ、1分待つ。
〜完成〜
ではさっそくいただこう……!
あの思い出の味を、ふたたび……!!
(ズズッ…)
あっつ!!
そう、めっちゃ熱いのである。
思えば自分が飲んでいた普段のコーヒーは90℃でドリップし、砂糖を混ぜたりして完成した頃には85℃くらいにはなっていることだろう。
しかし甘茶は熱湯を入れて1分である。
冷める余地が皆無なのだ。
それでも必死に思い出を追い求めて啜る。
甘さは……ほのかに感じるような……?
ほのかとはいえ、1gの茶葉でこの甘さが出るのは確かにすごい。
でも熱くて全然飲めない。
うーむ……。
仕切り直しをしよう。
甘茶を3gにする。
嘔吐事例が少し頭をよぎるが、過去の中毒事例が起きたのは園児と小学生。もう大人な自分なら問題ないだろう。
やっぱりもっとしっかりと甘さを感じたいのだ。
これは引き返すわけにはいかない……!
〜完成〜
なんだかあからさまにさっきより色が濃い黄金水が完成した。
ではさっそく飲んでいこう……
(ズズッ…)
・・・
相変わらずめちゃくちゃ熱いが、甘い。
ただ……そこまで騒ぐほどでもない。
そして最初に飲んだときから思っていたが、舌になにか違和感がある。
なんかこう、舌が空気に触れるとスーッとするのだ。
これが甘さ成分のもたらす別の影響ということなのだろうか。
・・・
そして今更だが、幼稚園で飲んだ甘茶は常温だった気がする。
試しにちょっと放置して、冷ましてから飲んでみよう。
〜10分経過〜
さてさて……どんな感じになったかなと。
(ズズッ…)
しぶい!!
変な渋味が出ていた。
甘さを楽しむとかそういうレベルじゃない。
淹れたものを放置しちゃいけないのか……
しかしそうなると、あの幼稚園の頃に味わった甘茶は一体……?
……あの幼稚園の先生は、甘茶を淹れるプロだったのかもしれない。
そんなわけで、なんともいえない結果となった。
淹れ方にはもう一つ、「甘茶を煮出す」という手法があるので、そちらでやったら別の世界が見えるのかも知れない。
幼稚園の先生はどうやってあの甘茶を作っていたのかが気になるところだ。
この記事作成に至るまでに、プルーストの「失われた時を求めて」を読んだ。もちろん漫画版である。(日本語訳960万字越えのギネス記録を持つ小説版は自分には無理)
その作中に、「マドレーヌとお茶をきっかけに過去のあれこれを思い出す」という超有名シーンがある。
もちろん今回の記事は「甘茶で幼稚園の思い出が溢れ出しました…!」という展開に期待していたのは言うまでもない。
……しかし結果はこれである。
自分がYoutuberだったら余裕で捏造して感動秘話にしていたところだが、noteでは正直に行こう。
それに、溢れ出るほどの感動はなかったにせよ、なんだかんだで幼稚園のことを思い出すきっかけにはなった。
あの当時の先生たちも、自分と同じく数十年の人生を歩んだのだと思うと、なんだか不思議な感じがする。
思えば自分が記憶をまともに定着させたのは幼稚園からだったな……。
……なんだろう、最近ノスタルジックな記憶が思い浮かんでばかりだ。
(そろそろ寿命なのか……?)