感想メモ

非美学一旦通読した。大急ぎで読んだから、ざっくりの流れを見たに過ぎないんだけど、一旦閉じる。飲み込めてないところを追ってもいいのだが、やめて、一旦メモ的にこれを書き、他の事をして、また思い出したら読む。
読んでて楽しかったというか、発見が多くありつつ割と飲み込めているのは、二章と五章だっただろうか。六章では長めに東ー千葉ー平倉の流れを総括していた気がするけど、『存在論的、郵便的』のポジティビティを問うてるところなど個人的には良かった。

『存在論的〜』は、意味もなく結構読み返している本で、引用部を見れば何章のあそこらへんだなってアタリがつく程度に周回している。意味もなく、というのは、自分はただの会社員なので、あの本を有効活用(?)する場面は基本的には皆無で、強いて言うなら、趣味の漫画を描いたり、文学評論めいた事をする時に助かっているかも?
ただ本を見ること自体に、ストレス発散を求めている感じがある(『動きす』もその意味でよく見直す)。細部の表現を汲み上げて、理屈を組み立てる作業は、単に見ていて気持ちがいいと思うし、自分の中に、思考の枠組みが増えることは幸福に感じる。
俺は学生時代、人文系だったが、哲学の専門ではないので、ラカンやデリダやドゥルーズやハイデガーやニーチェやデカルトやカントやスピノザやフッサールやらを大して知らないし、これからも真剣に勉強することはないが、それら様々な知を前提にした本を読んでいるのが、我ながら、昔から不思議ではあった。気が向いた時に勉強して、東とか千葉の場合はなんて言ってたっけと戻る、という事をよく繰り返していた。

あえて比喩的に表現するなら、パズル遊びかもしれない。最初のうちは、組み立てることも出来ず、バラバラ。悔しい。パズルのピースの絵柄がわかってないから、組み立てられない。
しかし勉強をすると段々絵柄の意図がわかってくるし、大枠の組み立てができるようになる。ざっくりとした絵が見える。
時間をあけてバラバラになったパズルを組み直して、組み立てた時間の速さにうっとりしたり、細部の美しさに気付いたり、絵全体の見え方が変わって楽しい。そういう娯楽なのかもしれない。暇だからやる事の一つ。ただきっとそれだけじゃない。

話戻って、『存在論的〜』。昔から読んでいて最終章だけが何かスッキリしない部分があった。そもそも議論が他の章に比べて特に飲み込めず、結論を見ても、何故か唐突に中断しているので、逆算して読むことも出来ない。過程が楽しいのでそれはそれでいいのだが、自分の中での完結(ポジティビティの発見)を失敗している本だった。
というかそもそも、ポジティビティの発見を望むこと自体、読み手として正しい所作なのかっていうのがはっきりしてなかった。だから今回この本を読んで、一つ本の受け止め方を肯定できた気がする。
俺は本を読んでいて、ポジティブになりたい(肯定されたい、肯定したい)気持ちがある。

受け止め方。そうだ。この本で、面白かった点の一つが、受け止め方、表現方法だった。
哲学系の本は、基本的に言葉が指す事柄を捉えるのが難しい(ゆえに言葉を尽くしてる)。だが、非美学は、この手の本にしては、難しい言葉を難しいままにせず、平易な言葉で言い直す事が多かった気がする。言葉の触り心地をソフトにすることで理解を助け、パワフルワードに置き換えることでユーザビリティを上げてる印象を受けた。
とはいえ構成に関しては、当然にハードだが、後期デリダ(あるいはフランス系の全般)のようにパフォーマンスで惑わす雰囲気はなく、ソフトだった。この本自体ソフトカバーなのは、そういうパフォーマンスだったりするか?それはわからない。
引用についても、人を人として受け止めている感覚があった。好意?肯定?まあそんな素朴な言葉では言えないが、何か人間性が滲み出るものを感じた。
私が、東と千葉の、いわゆる「博論本」をよく見直していた理由の一つに人間性という要素がある。良い読み方ではないんだろうが、人について想像するのは楽しい。それが楽しいから他の著作を読んだりもする。何に怒り、何に悲しみ、何を肯定するのか想像する。その意味で小説を読むこととも似ている。その手の楽しみを、この本ではあえて強めに残している部分がある気がする。博論本ならではの人生が滲み出ることの楽しみ。

肝心の内容について何も書いてなかった。非美学。タイトルにもなっている、この言葉が実のところまだ像をなしていない。非美学という言葉を構成する物質については、ざっくり知っているし、おそらくこういう形をしているはずだとアタリは付けているのだが、わからない。ただ「触発」はされている。最近ベルクソンにもハマっているが非美学の観点から読み直してみたいし、何か自分の制作物の中で、非美学を織り込んで、組み立ててみようという気持ちでいる。ずっと自分の読書はそうだし、それが正面から肯定されている気がする。

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