夜行堂奇譚？　ホワイトデーの過ごし方

同居人の大野木龍臣は女性にモテる。
　確かに大野木さんは背が高く、身体は適度に鍛えていて筋肉質だ。顔立ちも妙に整っていて、小癪だが美形と言っても良い。髪も毎月一度は美容院に行って毎回似たような髪型に仕上げてくる。シャンプーやリンスも美容院から買っているというから凄い。普段は眼鏡をかけているけれど、現場ではコンタクトに伊達眼鏡というイマイチ頭の良くないことをしている。性格は神経質で融通が効かない。理屈人間で感情にあまり左右されないかと思いきや、現場で混乱してとんでもないことをやらかしたりもするので、基本的には割と情に厚いのかもしれない。
　大野木さんは職場でもモテるらしく、先のバレンタインデーの際には嫌味なほどの量のチョコをもらって帰ってきた。本人曰く「社交辞令ですから。他の職員の方も似たようなものではないかと」なんて口にしていたが、どう見ても本気のチョコが多数混じっていたので、実際には大野木さんを狙っている女性も相当いるらしい。
　羨ましい。俺もあれくらいチョコが欲しい。義理でもいい。いや、それは勿論本命がいいけれども、この際もうなんでもいい。
　大野木さんよりも俺の方が若いし、顔も良い筈だ。右腕がないのもチャームポイントと言えないこともない。左腕が残っているのだから結婚指輪も嵌められる。
　しかし、現実には大野木さんの方が女性にモテる。少なくとも私生活を知らない女性たちからすれば、それは当然のことかもしれない。私生活の様子を見れば、割と引く人も多い筈だ。