嗣人

小説家。産業編集センターより『夜行堂奇譚シリーズ①〜⑤』『天神さまの花いちもんめ』竹書房様より『四ツ山鬼談』好評発売中です。メンバーシップは裏話的なのや色々読めます。 前半は無料作品ばかりなんで、そちらからどうぞ。※朗読をしたい方は必ず事前に許可を取ってください。

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梅雨の紫陽花から名前を取りました。 夜行堂を含めた作品群を更新していきたいと思います。 毎月更新:夜行堂亜譚or実話怪談or小噺 不定期更新:夜行堂奇譚シリーズ・万年猫シリーズ・化物曼荼羅・夜行堂小噺 毎月抽選で限定グッズプレゼント(栞など)あり。希望者のみ・指定の郵便局留で送付します。

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  • 夜行堂奇譚 無料

    無料の作品をまとめてみました。 I've summarized a piece of free.

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    神様シリーズをまとめてます。 勿論、無料です。

  • 和紗と鯤

    カノさんhttps://twitter.com/qanopus?s=21のイラストから着想を得て、名前を吹き込んで貰い、シリーズ化しました。 カノさんフォローお願いします🤲

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万年猫 第三話

 かつて天帝は聖なる十二の獣を選ぶと宣言なさり、ありとあらゆる獣たちがその座に着かんと競ったが、私は卑劣な鼠の奸計にかかり、十二の座を得ることが出来なかった。 そればかりか、無用な争いを仕掛けたとして天帝の勅によって地上へと追放されてしまった。それから数千年の時が経過したが、待てど暮らせどなんの音沙汰もない。 帰れぬものを嘆いていてもしょうがない。 犯した罪を赦されるまで、この地上で生きていかねばならぬ。  この頃、私の名前は『クム』と言った。無論、人間がつけた名前で

    • 9月のメンバーシップ限定小噺『漁火』

       私は魚釣りというものをあまり好まない。  以前、別の部署にいた際に上司に連れられて何度か魚釣りに同行したことがあったのだが、船酔いするし、潮風はベタついて気持ち悪いし、肝心の魚も釣れずに大変な思いをした。餌の虫を触ることが出来なかったのも苦手となった要因は大きい。  おまけに魚釣りの道具というものは本格的にしようと思えば、高価で気軽に始めるにはハードルが高い。  そうした理由から上司との関係性をスムーズにする為の趣味はゴルフに決めた。実際、ゴルフは「紳士のスポーツ」と呼ばれ

      • エッセイのようなもの②

        思いを言葉にすることの難しさ  人は自分が思っていることをどれくらい言葉に出来るのか。  私は、いつも言葉は心に今一歩足りないと思いながら文章を書いている。  書くという行為は何処までも孤独で、自分の内側を晒す行為だ。自意識過剰だと言われてしまえばそれまでだが、創作者とは皆そうではないだろうか。  自意識が過剰でなければ、自分の内側を他人に曝け出すようなことはできない。  小説に限らず、例えば絵画はどうだろうか。私は絵心など皆無だが、作品を創作するときに誰かに自分を曝け出さ

        • エッセイのようなもの。

           文章を書く仕事を本格的に始めて、間もなく半月ほど経つ。  執筆時間は以前とは比べ物にならないほど増え、一日のほとんどの時間を小説について考えられるようになった。しかし、色々とすべき雑務が多くて何かと忙しく、まだまだ今の生活スタイルには慣れない。  そんな中、エッセイを書いてみようと自然と思えるようになったのは、自分でも意外なことだ。私は小説ばかりを書いてきたので、エッセイを書くのは苦手だったし、なかなか本格的に書いてみようと思いきることが出来なかった。  エッセイとは自分の

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        メンバー特典記事

          万年猫 第三話

           かつて天帝は聖なる十二の獣を選ぶと宣言なさり、ありとあらゆる獣たちがその座に着かんと競ったが、私は卑劣な鼠の奸計にかかり、十二の座を得ることが出来なかった。 そればかりか、無用な争いを仕掛けたとして天帝の勅によって地上へと追放されてしまった。それから数千年の時が経過したが、待てど暮らせどなんの音沙汰もない。 帰れぬものを嘆いていてもしょうがない。 犯した罪を赦されるまで、この地上で生きていかねばならぬ。  この頃、私の名前は『クム』と言った。無論、人間がつけた名前で

          万年猫 第三話

          9月のメンバーシップ限定小噺『漁火』

           私は魚釣りというものをあまり好まない。  以前、別の部署にいた際に上司に連れられて何度か魚釣りに同行したことがあったのだが、船酔いするし、潮風はベタついて気持ち悪いし、肝心の魚も釣れずに大変な思いをした。餌の虫を触ることが出来なかったのも苦手となった要因は大きい。  おまけに魚釣りの道具というものは本格的にしようと思えば、高価で気軽に始めるにはハードルが高い。  そうした理由から上司との関係性をスムーズにする為の趣味はゴルフに決めた。実際、ゴルフは「紳士のスポーツ」と呼ばれ

          9月のメンバーシップ限定小噺『漁火』

          8月のメンバーシップ小噺「盆焼」 

           お盆時期は繁忙期だ。仕事の依頼が絶えることなくやってくる。地獄の蓋が開いて死者が帰ってくるというが、こんなに忙しくなるのなら、もう少し小まめに帰ってきて貰いたい。  とある依頼を終わらせて、マンションに帰り着いたのが午後三時を回った頃だった。昨日の昼から一睡もしないまま徹夜で怪異から逃げ回り、夜行堂へ呪物を預けてようやく帰宅した瞬間、大野木さんの携帯電話が無慈悲な着信音を立てた。  聞き慣れた職場からの着信音に、模範的な公務員の大野木さんの顔が強張る。  エントランスをまだ

          8月のメンバーシップ小噺「盆焼」 

          小噺「氷菓」

           灼熱の陽射しに辟易しながら、私と千早君は日陰を求めて歩いていた。  とある品を夜行堂に届け終えた帰り道、屋敷町から県道を東へ暫く進んでいくと、鬱蒼と生い茂った雑木林が見えてくる。千早君に言われるがまま着いて行っているが、頑なに行き先を言おうしないので彼が何処へ向かっているのか皆目見当がつかない。まさか、あの雑木林の中で涼んでいくなんてことはないだろうが、この暑さだ。千早君の判断能力が落ちていても不思議ではない。  命を燃やし尽くさんと絶叫をあげる、けたたましい蝉の鳴き声が容

          小噺「氷菓」

          小噺「散策」

           窓の外から聞こえてくる、けたまましい音で目を覚ました。  強引に金属を切断する甲高い音が、タワーマンションの上層階まで響いている。文句の一つでも言ってやろうかと顔をあげると、枕元の携帯電話は午前十時を表示していた。世間的にはとっくに一日が始まっている。 「土日まで工事をしているなんて、よっぽど切羽詰まってんなぁ」  隣に新しく銀行が出来るとかで、半年ほど前から工事をしているが一向に完成する様子がない。俺はそういうことにあまり詳しくはないが、少し時間がかかり過ぎているよ

          小噺「散策」

          小噺《鶯桜》

           屋敷の中でも一番大きな座敷で帯刀老の講義に耳を傾けていた。座学は帯刀老から、実学は柊さんから習うというのが常で、午前と午後で修行の内容が違う。 「一言に神といっても、この国における神は海外における定義とは全く別のものであることを忘れてはいけない。唯一絶対の創造神はおらず、天土に在る万物に神が宿る、というのがこの国における神性というものだ」  机を挟んだ向こう側に正座して、丁寧にゆっくりと話をする帯刀老は鳶色の着物を着ていた。この屋敷では基本的にみんな着物を着ている。葛葉さん

          小噺《鶯桜》

        記事

          天神飯 さいふうどん《福岡県太宰府市》

           八月。茹だるような暑さに辟易としながら、太宰府天満宮の参道の影を渡るように進んでいく。大勢の参拝客で行き交う参道をこうして眺めているだけでも崇敬が集まってくるのを感じられるが、今は兎にも角にも暑い。 「ええい、暑い。こうも暑いと生死に関わるぞ」  隣を歩くウカノミタマ様は溶けかけのアイスクリームのようになりながら、不平を漏らしていた。扇子で顔を煽いでいらっしゃるが、熱風しかやってこないだろう。  お昼をご馳走して下さるとの事で、急いで駆けつけたが、正直暑さでそれどころではな

          天神飯 さいふうどん《福岡県太宰府市》

          8月のメンバーシップ小噺「盆焼」 

           お盆時期は繁忙期だ。仕事の依頼が絶えることなくやってくる。地獄の蓋が開いて死者が帰ってくるというが、こんなに忙しくなるのなら、もう少し小まめに帰ってきて貰いたい。  とある依頼を終わらせて、マンションに帰り着いたのが午後三時を回った頃だった。昨日の昼から一睡もしないまま徹夜で怪異から逃げ回り、夜行堂へ呪物を預けてようやく帰宅した瞬間、大野木さんの携帯電話が無慈悲な着信音を立てた。  聞き慣れた職場からの着信音に、模範的な公務員の大野木さんの顔が強張る。  エントランスをまだ

          8月のメンバーシップ小噺「盆焼」 

          なかなか情報が解禁にされないので、詳しくは話せませんが、こちらの帯の内側に書き下ろし小説「夕立」が入っております。 夜行堂奇譚限定漆黒バージョンは極少数となりますので、もし目にかけることがあればすぐに手に取って頂けましたら幸いです。 乞うご期待!

          なかなか情報が解禁にされないので、詳しくは話せませんが、こちらの帯の内側に書き下ろし小説「夕立」が入っております。 夜行堂奇譚限定漆黒バージョンは極少数となりますので、もし目にかけることがあればすぐに手に取って頂けましたら幸いです。 乞うご期待!

          小噺「氷菓」

           灼熱の陽射しに辟易しながら、私と千早君は日陰を求めて歩いていた。  とある品を夜行堂に届け終えた帰り道、屋敷町から県道を東へ暫く進んでいくと、鬱蒼と生い茂った雑木林が見えてくる。千早君に言われるがまま着いて行っているが、頑なに行き先を言おうしないので彼が何処へ向かっているのか皆目見当がつかない。まさか、あの雑木林の中で涼んでいくなんてことはないだろうが、この暑さだ。千早君の判断能力が落ちていても不思議ではない。  命を燃やし尽くさんと絶叫をあげる、けたたましい蝉の鳴き声が容

          小噺「氷菓」

          小噺「散策」

           窓の外から聞こえてくる、けたまましい音で目を覚ました。  強引に金属を切断する甲高い音が、タワーマンションの上層階まで響いている。文句の一つでも言ってやろうかと顔をあげると、枕元の携帯電話は午前十時を表示していた。世間的にはとっくに一日が始まっている。 「土日まで工事をしているなんて、よっぽど切羽詰まってんなぁ」  隣に新しく銀行が出来るとかで、半年ほど前から工事をしているが一向に完成する様子がない。俺はそういうことにあまり詳しくはないが、少し時間がかかり過ぎているよ

          小噺「散策」

          初めての公式サイン会について

          こんにちは。嗣人です。 六月も下旬に差し掛かり、全国的に梅雨が始まりましたね。 私は昔から雨が好きでして、特に執筆にはもってこいです。雨音のBGMは心が落ち着きますし、執筆も捗ります。 皆さんは雨、好きですか? さて、本日から情報解禁となりましたので、タイトルについて触れていきたいと思います。 サイン会です。 しかも東京。 出版社主催で、おまけに紀伊國屋書店新宿本店様にて行えるという、この僥倖。夢のひとつが叶ったと言っても過言ではありません。 まぁ、実際問題としてど

          初めての公式サイン会について

          道真様が福岡県下のグルメをあちこち食べにいく、天神飯シリーズ書いてみようかな。 写真も交えたりして、noteで公開していくっていうのは面白いかも? どうでせう?

          道真様が福岡県下のグルメをあちこち食べにいく、天神飯シリーズ書いてみようかな。 写真も交えたりして、noteで公開していくっていうのは面白いかも? どうでせう?

          小噺《鶯桜》

           屋敷の中でも一番大きな座敷で帯刀老の講義に耳を傾けていた。座学は帯刀老から、実学は柊さんから習うというのが常で、午前と午後で修行の内容が違う。 「一言に神といっても、この国における神は海外における定義とは全く別のものであることを忘れてはいけない。唯一絶対の創造神はおらず、天土に在る万物に神が宿る、というのがこの国における神性というものだ」  机を挟んだ向こう側に正座して、丁寧にゆっくりと話をする帯刀老は鳶色の着物を着ていた。この屋敷では基本的にみんな着物を着ている。葛葉さん

          小噺《鶯桜》

          応報縛荷(おうほうばっか)

           きっかけは些細な口論だった。  とある映画作品の挿入曲についての賛否を話していたのだが、私は結末を是とし、友人である彼はそれを頑として認めなかった。  互いに酒が入っていたのも良くなかった。  小さかった些細なすれ違いが加熱していき、あっという間に燃え上がってしまった。互いに引くことが出来ず、譲れないまま口論となり、最終的には掴み合いとなった。店で飲んでいれば止めてくれる第三者がいてくれたかも知れないが、不幸なことに私の家で二人きりで呑んでいた。  私たちは罵り合い

          応報縛荷(おうほうばっか)

          菅公巡夜《言霊堂福岡朗読会 書き下ろし作品》

           太宰府近隣の神々が楽しみにしていた花見も無事に終わり、今年も幹事としての役割を全うしたことに安堵の溜息をついたのも束の間、ウカノミタマ様より呼び出しがかかった。 家で休息を取りたいと思っていたのだが、あの方からの呼び出しとなれば無碍には出来ぬ。いや、誰の呼び出しでも無碍にしたことなどはないが。放っておくと後が怖い。  指定されたのは西鉄太宰府駅から参道へ入って、すぐ右側に見える茶房『維新の庵』である。こちらの庭をウカノミタマ様は大変気に入っており、月に一度は必ず梅ヶ枝餅

          菅公巡夜《言霊堂福岡朗読会 書き下ろし作品》

          雨転砂松

           梅雨の時期になると、自宅から程近い公園にそれは見事な紫陽花が咲き誇る。淡空色、青紫色、淡紅色のパレットのように歩道を行く人の目を愉しませた。  小学校の裏手を迂回するように伸びた隘路は車が通行することは出来ない分、近隣の住民の散歩によく用いられていた。隣接する細長い公園の向こうには防風林として植えられた黒松の林があり、その向こうにある海からの砂を受け止めている。小さな海水浴場は夏になると地元の子どもや親子連れで賑わうのだが、この時期はまだひっそりとしていて人の気配がしない

          雨転砂松

          今月は夜行堂奇譚の無料新作を上げます! 必ず!きっと!おそらく!たぶん!

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