『それぞれの戦い』合評会|イベントレポート
取り上げられた書籍と当日の模様
2023年11月、「トランスギャルド叢書」創刊時に刊行した2冊のうちの1冊、『それぞれの戦い――エミー・バル=ヘニングス、クレア・ゴル、エルゼ・リューテル』の書評会が、2024年6月28日に行われました。
本書は、1970年代の女性運動の影響を受けたドイツの作家アンナ・ラインスベルクが、1920年代の3人の女性アヴァンギャルド芸術家の「戦いの軌跡」を、自身を重ねながら描写した小説です。
書評会では最初に、本書の訳者である西岡あかね先生が登壇しました。ラインスベルクが1920年代の女性作家を発掘・紹介する活動では先駆的であることや、西岡先生が本書に着目した理由、ドイツ文学における女性作家の在り方など、本書を読むための背景を解説しました。
コメンテーターの田丸理砂先生は、本書はラインスベルクが30代前半であった1980年代に書かれたものであり、3人の女性芸術家を見いだした著者が、3人の存在を知らしめたいという思いにあふれた作品であること、フェミニズムの観点からの1980年代から2000年代のドイツ文学の状況などの視点を挙げました。
2人めのコメンテーターの小田原琳先生は、ジェンダー規範は変化の激しいものであり、本書で描かれる3人の芸術家が生きた19世紀末から20世紀前半について、戦争によって男性性が強化され、ほかにも植民地主義や社会運動への弾圧など、さまざまな暴力に民衆が慣らされていたと指摘しました。
前田和泉先生を司会に、主に登壇者の間で質疑応答がありました。
開催情報
アンナ・ラインスベルク『それぞれの戦い エミー・バル=ヘニングス、クレア・ゴル、エルゼ・リューテル』を読む
日時:2024年6月28日(金)
場所:東京外国語大学総合文化研究所
《登壇者》
田丸理砂(学習院大学/近現代ドイツ文学、フェミニズム文学批評)
小田原琳(東京外国語大学/イタリア近代史、ジェンダー史)
西岡あかね(東京外国語大学/ドイツ文学)
《司会》
前田和泉(東京外国語大学/ロシア詩、現代ロシア文学)
主催:東京外国語大学総合文化研究所
共催:東京外国語大学出版会