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病気治療と情報戦②

病気治療と情報戦①からの続きです。
前回はがんのメカニズム、治療方法、診療ガイドラインについて書きました。

今回は

なぜ治療法がたくさんあるのか?

なぜわざわざ健康保険適用外の治療を受けるのか?

治療費はいくらかかるのか?

についてまとめてみたいと思います。



なぜ治療法がたくさんあるのか?


なぜたくさんの治療法があるのでしょう?
舌がんを例に見てみましょう。

舌といえば、味覚を感じる器官であり、飲み込んだり、言葉を話すために重要な器官です。その部分を切除することになるとなれば、出来る限り最小限に抑えたいですよね。ガイドラインでも出来る限り切除を避ける・切除する部分を最小限にする設定になっています。

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参考:国立がん研究センターがん情報サービス「舌がん解説」

ガイドラインによるとステージⅢ期で転移が見られない場合、
「放射線治療」を試し、それでもがん細胞が取り除けない場合は「部分または半側切除」という流れになっています。

(1)舌切除術の合併症
手術により舌を切除すると、ものを食べたり、飲み込んだり、発音したりする機能が低下することがあります。このような機能への影響は、手術後に舌がどのくらい残っているかによって異なります。
切除した範囲が小さい場合は、手術後も舌の基本的な機能が保たれますが、切除した範囲が大きい場合は、舌の機能低下が避けられません。特に、飲み込む機能が低下すると、飲食物が食道ではなく気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)を起こしやすくなります。舌の機能低下を最小限に抑えるためには、リハビリテーションのほか、手術で失った部分の舌の形を新たに作り直す「再建手術」も必要です。再建手術では、患者さん自身の太ももや、おなか、胸、腕などから採取した皮膚や脂肪、筋肉などの組織を移植し、残った舌ができるだけ機能するように再建します。

このように、治癒を目指す過程で複合的に治療法を検討していきます。

現時点では全身のどこのがん細胞が活性化するか予測できません。
例えば、
・脳にがんが転移した場合
・治療のために鼻や上あご等を切除し、顔の形状が変わってしまう場合
・乳房を切除しなければいけない場合
・転移を繰り返しており、外科手術や抗ガン治療に体が耐えられないと考えられる場合
こういった場合「体に負担が少ない方法」または「外見を損なわない方法」という選択肢があれば検討したいですよね。

舌がんの場合でも、早期の段階で放射能治療に効果が期待できれば、再建術や予後のリハビリに悩まず済むことになります。

ガイドラインに示されているということは健康保険適用治療ですね。
複合的な治療を健康保険適用で受けることができます。

では、なぜわざわざ健康保険適用外の治療を受ける人がいるのでしょう?



なぜわざわざ健康保険適用外の治療を受けるのか?


では、高いお金を払って自由診療の治療を受けるという選択をする方がいるのでしょうか?
放射線治療ですが、診療ガイドラインでは主にX(エックス)線を用いた治療が行われます。

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参考:メディポリス国際陽子線治療センター「陽子線治療について」

しかし、X線の場合、体の奥深くにあるがん病巣に照射する際、
・体の表面
・付近の臓器
・病巣の延長線上
にもダメージを負ってしまうことがあります。

放射線治療の副作用に
倦怠感・体力の低下、免疫機能の低下、数年後に皮膚がただれる等、
照射する部分や強さによって予後が大きく変わることになります。

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一方、陽子線治療の場合、ピークの幅や深さは精密に制御することが出来るので、今までX線治療が苦手としていた体の奥深くにあるがん病巣に対しても、強力なダメージを与えることが可能となります。

X線治療と比べて正常組織へのダメージはほとんどないので、予後への影響も抑えられると考えられます。

「どっちを選ぶ?」と聞かれたら陽子線治療を受けたくありませんか?
しかし、全ての人が案内されるわけではありません。
現在、陽子線治療が受けられる施設は全国約50ヶ所です。
陽子線治療専門の医師や技師も少なく、基本的に治療費は自由診療です。
患者の医療費負担を減らすためにも、まずは健康保険適用の診療ガイドラインに沿った治療法が提案されます。

自由診療に関しては基本的に「この治療を試したい!」と患者さん側が申告しないと治療が受けられないシステムになっています。主治医から案内されるケースはレアケースなようです。
自ら進んで情報を集め、まずはセカンド・オピニオンを受けることが大切
と言われています。
セカンド・オピニオンでその治療が効果的か、治療を受けられるかどうか、治療スケジュールなど、細かな相談ができるようになります。
現在は窓口だけでなく、オンライン会議システム等で対応していただけるようになってきたようです。

情報が大切なのは陽子線治療に限った話ではありません。
標準療法であっても、出来るだけ体の負担を減らす方針を取っている病院もあります。そのような病院とお付き合いすることで、予後の経過が大きく変わっていく可能性が広がるのです。

ようやく、最新の治療を受けられるようになっても気になるのはお金です。
それでは、自由診療はいくらかかるのでしょうか?



治療費はいくらかかるのか?


部位によって
・健康保険適用治療
・先進医療適用治療
・自由診療
と分かれています。
メディポリスさんの資料を参考にしてみましょう。

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参考:メディポリス国際陽子線治療センター「当センターで治療できるがん」

ピンク色の小児がん・前立腺がん・頭頸部がん・骨軟部腫瘍の一部の治療について、公的医療保険が適用です。

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参考:メディポリス国際陽子線治療センター「費用・制度のご案内」

上記資料によれば約48万円~72万円ほど。
高額療養費制度も利用可能なのである程度費用は抑えることが可能です。

それ以外の治療に関しては下記の通りになります。

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314万円と保険適用治療。合計で330万円が目安になるようです。
先進医療適用治療であれば、民間医療保険から先進医療費が補填されますので、右側の部分だけで済みます。

しかし、この先進医療というのが厄介でして、
現在では対象になっていても、数ヶ月先も対象かどうかわかりません。
例えば、白内障の多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は2020年の3月まで先進医療対象でしたが、4月からは先進医療から削除され、先進医療特約から支払いを受けられなくなりました。
「先進医療特約が付いていれば大丈夫」とは限らないと思います。

また、陽子線治療に関わらず、免疫療法などの先進治療を自由診療で受ける場合は、高額な治療費が必要になってきます。
1度目は標準療法を受け、転移が発覚した2度目に自由診療を受ける傾向があるようです。
一度目の治療が影響することもありますし、ご自身で調べてらっしゃる方も多いからだと思います。

がんは診断された時から、寛解と言われる5年の転移や再発が見られない状態になるまで、長い闘病生活が待っています。
その長い期間、1度だけではなく、2度3度とお金が必要になると考えられます。

話を聞きながら大切だなと感じたことをまとめてみます。
・最新の治療が可能な病院、医師を見つけること。
・その病院で診療を受けられるように紹介を受けること。
・治療を受けるためのお金を確保すること。

この3点が特に重要なことだと感じました。
これはがんの陽子線治療だけでなく、他の病気にも当てはまると思います。
健康保険制度は非常にありがたい制度ですが、適用されるまでには多くの臨床データが必要になります。
患者数が少ない病気や新しい感染症など、発症数の少ない難病への対応が遅れるという制度の限界があります。

必要なものは情報とお金と繋がり。
技術の発展、情報伝達が加速する世の中で、情報の選別もしなければいけません。
病気治療の情報戦はますます加速していくと感じました。

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