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夕立

たまに。

無数の埋もれていく記憶の中に一粒。

脳の片隅に刻まれる景色。

たわいも無いのに何度も何度も思い出す。

ゲリラ豪雨なんて言葉がまだ無かった頃の夕立。

* * * * * * * * * * * * * *

東京で一人暮らしをして8年。

理由もなく引越しをしたくなった。

沿線を変えれば、どんなに距離が近くてもそこは見知らぬ土地で。

見知らぬ駅に降り立って見知らぬ街を歩いてみる。

ここに住むかもしれないなんて、本気半分、冗談半分。

不動産屋を冷やかした。

帰りの電車を待つ駅のホームから、ぼんやりと夕立を眺めていた。

生暖かい風に雨の飛沫と匂いが舞い上がる。

油絵みたい、そう思った。

意味も無いのにきっと記憶に残る。

この気分とこの景色を忘れない、そう予感した。

* * * * * * * * * * * * * *

心細さ(こころぼそさ)と心細し(うらぐわし)。

やっぱり何度も思い出すことになった。

あの日の夕立。



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