吾(わが)は吾の道があるんぜよ。
「アウトサイダーズ」
なんだろ、犯罪者一家の物語を定期的に見ているような気がする。
オーストラリアが舞台の「アニマル・キングダム」、アルゼンチンが舞台の「エル・クラン」、いずれも実在の犯罪者一家の映画だった。で、今回のコレだ。
犯罪を生業としているカトラー・ファミリーの後継ぎでドライバーとして犯罪に加わってきたチャドは、犯罪稼業から足を洗い、妻と幼い子どもとともに新天地での生活を考えるが、その望みは絶対的な力で家族を支配する父コルビーによって阻まれてしまう。ある夜、父に強制されて州総督の邸宅に強盗に入ったチャドは警察の追跡を猛スピードで振り切ることに成功する。しかし、その事件を境に父と息子の絆が取り返しのつかない方向へと狂い出していく。(映画.comより転記)
どの作品も絶対的な権力を持つ家長(アニマル・キングダムは祖母、エル・クランとアウトサイダーズは父だ)を元に、家族が犯罪に手を染めている。そこに罪悪感や閉塞感、違和感を感じ始めるのが、いずれも主人公なのだ。
チャドは現実から逃れたくてしばしばカーチェイスに興じる。泥棒稼業でもドライバーという役目だ。全体的に苦しいストーリーなのに、ラストは妙な清々しさまで感じられる。疾走感に閉塞感、そして倦怠感に清涼感まで味わえるかと。
そこにいわゆる温かな「家族愛」なんてものはなくて、都合のいい時だけ、「家族の絆」を持ち出すんだな。俺もそうだったとか昔はこうだったとか過去の武勇伝ほど、シラケるものはなくて。
でもなぜかラストがすごく切なくて。どうやっても逃れられない父から息子が羽ばたいた瞬間。抱えている問題は深刻なはずなのに、何であんなにまでラストが清々しかったんだろう…。
で、この記事タイトルなんですが、カトラーファミリーの話す英語がめっちゃくちゃ訛ってるんですね。これは、イギリス?アイルランド?が舞台?「州総督」とか出てくるんだけど、どこなのかなー。ロマっぽい人たちも出てくるからなー。うーん。
なんかはっきりとした地理の説明はないし、フィクションなんだけど、英語を母語とする人たちからすると、すぐわかる方言だと思うんです。私はそこらへんは明るくないので、お許しを。でも、ちょっと記事タイトル訛ってみました(笑)チャドの心の叫び声。
本当は毒親の呪縛から逃れたくて、なんとかしたいけど、その術すらわからなくて、もがいているチャドは、境遇は違えど、現代のいわゆる一般社会において同じように感じている人々の心中を表しているのかなと。極端なまでの境遇だけど。
親という立場では同じであるコルビーとチャドだけど、子を守るという観点では180度違う考えた方。マフィアほどまではいかないけどさ、ファミリービジネス(ビジネスちゃうか)って今の時代にそぐわないんだと思うね。
って映画見てすぐ思ったこととは何か違う方向に行きかけたレビューですが、悲惨だけど悲惨すぎることもなく、考えさせられるけど、考えさせられすぎることもなく、でもラストがわりと好きな作品でした。しかし、チャド役のマイケル・ファスベンダーよりコルビー役のブレンダン・グリーソンに軍配。父強し。
2018年20本目。シネマート心斎橋にて。
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