「錆びた」少年たちよ、永遠なれ。
「ラスティ・ボーイズ ビバ!老後」ルクセンブルク🇱🇺
昨年初めて、ルクセンブルクの映画(こちらは戦争映画)を見たんですが、今年もそれに続き、今度はコメディ。
子供扱いされるのにうんざりしたヒッピー世代4人のおじいちゃんたちが主人公のコメディ映画。老人ホームを出てシェアハウスで暮らす計画には資金が必要だが、次々トラブルが降りかかり、計画はわき道にそれ続ける。いったい彼らの運命は?昨年のルクセンブルク大ヒット作。(イベント公式サイトより転記)
それにしても、すごい副題…。ビバ!老後とか…。もうなんも言えねー。
Rustyってどんな意味だろうなって調べたら、「さびた、古めかしい」とあったので、わざと日本語直訳して、タイトルにしてみた。
高齢者が「奮闘する」系の映画って、日本含めて、どの国でも結構な頻度であると思うんだけど、その中でも主役のハイネンの言葉がなぜか印象的で。
若者にあれこれ指図を受けたくない、と。
それがホンネだし、いわゆる高齢化社会における問題の本質でもあるんじゃないかなと。奮闘する、というより、彼らは闘っているのだ、文字どおり。頑張らないと、そのホンネすらわかってもらえない。
ところで、年金で老後が賄えるくらいルクセンブルクの高齢者政策は手厚いと見た。この映画に出てくる老人達の息子、娘らは、見事に、親の金にすがりついている。
けれど、老人ホームの入所者は厳しく管理されている。ほんのちょっとした楽しみやジョーク、イタズラが通じず、この作品の中でも度が過ぎて、一部のメンバーが退所を命じられたから、そりゃもう年寄り陣は叛旗を翻すしかない。
見た目は「ジイバア」そのものだけど、気持ちだけは負けてない。子供扱いされて、厳しく取り締まられて、本当の楽しみも奪われる…。こんな所に居てやるもんか。自分らだけで暮らせるシェアハウスを作るぞ!と、仲の良い者、ソリの合わない者も集まって、あれやこれやと企てる。
本好きで偏屈、愛煙家のハマー。女好きのマーカス。西部劇をこよなく愛する老人ホームの管理人ハイネン。ハマーと実は「お付き合いしてる」ネリー。バラック小屋にお気楽一人暮らしのジャンギ。
老人たちの自立型ホーム(シェアハウス的な)の申請は思った以上に煩雑で、審査も厳しく、そうこうしてたら当てにしてた土地まで大型スーパーの進出で追いやられることに…。
こういうコメディはある程度展開が予想できると言うか、言い方は悪いけども誰かが亡くなって、ホロリとするシーンがあって、でも前に進んで行く。
この映画も予想に違わず、その通りに進む。
でもなんだかんだで、こんなに元気なお年寄り達を、何もできない、若い人が支えなきゃ、無理させるな、というのは本当に"こっちサイド"の身勝手さでもあって、彼らのやる気や生きる希望を削ごうとするのは、社会の通念的なものなんだと思い知らされた。
とはいえ、このホーム騒動以外にも、ハイネンには妻との間にはいない子供が、たった一度の情事でできた娘がいたことが判明し、孫までいるとわかったり、ハイネンのおばさんというのが超大金持ちで、その遺産をアテにして(ここでも"若手"が年配者に依存している)、ホームを建設しようと企てるけど、まさかまさかの展開だったりと、見どころは多々あって。
ハイネンの足元のカット(ウエスタンブーツ)がよく映る、靴が印象的な映画でした。彼は最期まで、闘うカウボーイであったなと。
ルクセンブルク映画も、ベルギー映画のようにたくさん配給されるといいなと思いました。そうやって、世界は広がっていく。
2018年62本目。EUフィルムデーズ🇪🇺 京都文化博物館にて。
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