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【cinema】熱風

myfrenchfilmfestivalより。

若者ジョゼフが父親のもとへ戻ってきたことから、村人たちの日常が脅かされはじめる。気性が激しく、トラブルメーカーのジョゼフ。村人たちは、災いはすべて彼の仕業だとして、ジョゼフを非難する。そんなある日、そのジョゼフの死体が、自宅の中庭で発見される…。 (映画祭公式サイトより)

この映画を見て、既視感を覚えたのだけど、どこでだろう。少し違うけれど、津山三十人殺し(=八つ墓村)と似ているような気がします。「八つ墓村」では村八分にされた者が復讐の鬼になって、次々と集落の人々を殺めるけれど、この映画はその反対で、村の誰かが厄介者のジョゼフを殺してしまうのですが、そこに漂う空気感が似ているような。

とにかく、このジョゼフ役の俳優さんがものすごく気色悪くて、村の嫌われ者を見事に体現しているのです。まさに迫真の演技。

映画では説明が一切ないけれど、多分ジョゼフの一家はロマ(定住しているけど、生業が鉄くず収集で、両親や義姉の服装などから何となく)で、ジョゼフはちょっと知的障がいを持っている。村人たちは皆、腫れ物に触るような状態なのです。そして、ジョゼフがやっていないことも全て彼のせいにされて、皆が皆、疑心暗鬼の塊になって、悲惨な結末を迎えてしまう。その見せ方が巧妙で、本当に彼がやったかのように観ている側も思い込んでしまうのだけど、全てが終わった後に、そうではなかったことが明るみになる。でも誰もそれを責めたてる者はおらず、村には平穏な日々が戻るのです。一部の者の黒い思惑が罷りとおったとは知る人ぞ知る状態で。

かなり良くできたストーリーだったと思います。ジョゼフが好んで聴いた騒々しい今風の音楽も、日照り続きの農地に照りつける太陽とそこに吹いているであろう渇いた風も、ジョゼフが刺された時に降った雨の音も、全てが焦燥感を煽り、ドキドキしながら見ました。

大ヒットとはならないけれど、こういう映画を見ると、映画好きでよかったなと思います。爆音や派手なアクションが無くても、ドキドキするし、超常現象や呪い、怨念なんかがなくても恐いものは恐い。ジョゼフが清廉潔白とは言い難いけれど、報われない人だったと思うばかり。

こ、こわい。

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