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【cinema】ヴィクトリア

6月に見た映画なので、もう見た本人の記憶がおぼろげなんですが、ブルガリア映画です。

ヘソのない少女ヴィクトリアが主人公というすごくファンタジックにできているのに、痛烈に過去の共産政治を批判していて(バカにしていて)、ちょっとグロテスクなシーンも出てくるし、辛さ(からさ)の残る作品でした。また、これは激動の時代に生きた市井の人々の実話を基にしつつ、母と娘の三世代(祖母、母、孫娘)による壮大なメロドラマにもなっています。

1979年。西側社会に憧れるボリャナ(イルメナ・チチコヴァ)は共産主義体制下のブルガリアでは子どもを産みたくないと思っている。にもかかわらず、へそのない不思議な娘ヴィクトリアが生まれ、「この10年を象徴する赤ん坊」に選ばれる。国家からさまざまな特別扱いを受けて贅沢に育つヴィクトリアだが、1989年に体制が崩壊すると彼女の人生の基盤そのものが大きく揺らぐ。危機に直面した娘と母、二人の関係が問い直されることになる。(EUフィルムデーズサイトより転記)

当時の首相ジフコフ(本当に実在した人です)が、ヘソのないヴィクトリアをそりゃもうおだて褒めそやす役で出てくるんだけど、こんなに一国の統治者がバカにされて描かれている映画もありません。ある種、共産主義時代の栄誉は何の意味も為さないということを揶揄しているのかなと思います。

この映画の主人公は、ヴィクトリアであって、そうでないように思います。明らかに彼女の母ボリャナだろうと。彼女の冷めに冷めた目が、哀しくて、それでいて背筋が凍るような感じ。たとえが悪いかもしれないけど、浦沢直樹が「MONSTER」で描いた女性たちの目つきに似ています。ボリャナは共産主義に傾倒しまくる母が大キライだし、その共産主義にチヤホヤされて育った娘とも全くうまくっていない。こんな親娘の関係は、他の映画でも幾度も見たことがあるけれど、言い表せないグロテスクさと暗さを纏っていて、ブルガリアならではの映画に仕上がっていると思います。

一般ウケはしないけれど、私はそれでもこの映画を見てよかったなって思います。知ることのなかった当時のブルガリアを垣間見ることができて。

EUフィルムデーズにて。

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