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【cinema】スポットライト 世紀のスクープ

この事件がアメリカ本国で明るみになった時、私は何をしていたんだろうかと思い起こしてみると、大学2年生でした。当時、このスクープが我が国日本でどう報道されたか。覚えていません。そもそも日本で報道されたのか。でも何となく、記憶にあるのは、その神父の尋常でない数の多さとやはり、という思いでした。意外性は感じず、ただその数に驚いたような気がします。

この映画は、今まで隠蔽されてきた神父たちによる児童への性的虐待について、ボストングローブ社がスクープとして上げる内容なんですが、そこに行き着くまでの道程がメインとなっています。

記者たちの執念。カトリック教会の強大な力。信じてあげたくても黙殺されてきた子どもたちの声。様々な要素が絡み合って、事実を積み上げていくのですが、いつの時代にもどんな所でも巨大権力のあざとさと弱者のどこまでも辱められる境遇は変わらないものだと。そして、宗教をとりまく精神世界の深さはその国、または地域でしか理解できない部分があると。そうでも思わないと今まで誰もが見て見ぬふりをしてきたということの説明がつかない。

去年のラテンビート映画祭で、チリの映画「EL CLUB」というのを見ました。それはまさしく小児性愛者や男色、ギャンブル狂など問題を起こした神父たちが集められた一つの家で起こるある事件を発端にした物語で、「スポットライト」を見ながらこの映画を思い出しました。こういう神父のための更生施設というのが全世界にあるんだなぁと改めて思ったのと、かのチリ映画では、こういう施設を閉鎖していこうと教会本部から派遣された先進的な思想の持ち主の若い神父がその家に調査しに来るんですが、施設の老いた神父たちは世話係のシスター含めて一致団結して自分たちの居場所を死守するためにその本部からの派遣神父を追い出しにかかるという物語なんです。この映画、かなりシリアスだし、なかなか説明するのは難解な部分もあるんですが、笑ってしまう要素もあったり、この「スポットライト」が公開された今だからこそ日本でも一般公開されたら面白いのにと思いました。カトリックの闇の部分を理解するのには一つのきっかけになるんじゃないかなと。

あれ、スポットライトについての感想は。これがアカデミー賞作品賞を受賞したっていうのは何となくですけど、扱ってるテーマに因るものだと思います。そんなに見てスゲー!とか思わなかった、全編とおして。虐待の問題は昔から存在していたわけで、弁護士が問題の神父たちのリストを新聞社に送っていてもその時はスルーされていたんです。新しい局長の目のつけどころ、だけでは済まされないと思います。なぜ今(2001年)だったのか。それを問う作品にしてほしかったです。

それにしてもマーク・ラファロは作品で全然キャラが違うなぁ。「はじまりのうた」の時のイメージが強すぎて。あとガラべディアン役のスタンリー・トゥッチが個人的には好きです。マイケル・キートンは、「バードマン」がハマり役だったけど、この「スポットライト」部隊のボス役もなかなかでした。

私はこの映画は2016年マイベスト10に入れることはないだろうけれど、これまで見てきた映画と照らし合わせて色々考えるキッカケになったことはよかったなと思いました。

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