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【cinema】母の残像

12/9鑑賞。

ガブリエル・バーンの顔が好きだ。めっちゃ整った顔かというとそうでもないかもしれないが、彼の思慮深い柔和な表情がとてつもなく好きだ。なぜだか無性に切なくなる。

にしても年取ったなぁ。久しぶりに見たよ。彼はイザベル・ユペールの夫役として出ています。この映画では、3人+1人の男性が彼女の面影を追い求めているのだけど、私は中でもこのガブリエル・バーン演ずる夫の気持ちに一番共感できたのかなと思います。

なんかね、イザベル・ユペールのための映画かと思ったら、そうでもなかった。むしろ遺された男性たちの気持ちに寄り添う物語。亡き母、亡き妻、亡き恋人に対して抱いていた想いを、これでもかというくらい繊細に丁寧に描いた作品なのかなと思います。

そして今書かないと、手から砂がこぼれ落ちるように消えゆくような儚いストーリーな気がして、感想を書いています。

戦争カメラマンだった妻(母)を不慮の交通事故で亡くした夫、息子たちのその数年後のひと時を描いている本作品。誰もが悲しくて仕方がないはずなのに、その気持ちをそれぞれが、それぞれのかたちで押し殺して生きてきて、みんな現実を見失いかけている。この映画は、一人の女性を取り巻く男たちの深い愛を根幹として、何気ない日常の儚さを描いているんだなと強く思いました。互いに気遣ってるハズなのに、ベクトルは全て母に、妻に向けられていて、噛み合わなくなっている。 それでもラストは、この家族はきっと大丈夫、と思える終わり方。

何が起こるってわけでもなくて、どちらかというとまどろっこしいというか、母がいなくなったせいで少しグレてしまった次男コンラッドとそれを持て余す父親と、離れて暮らすエリート長男ジョナをそれぞれの立場から描いている。それと、亡くなったイザベルの独白も交えながら。

母はただの事故で死んだのではなくて、自ら死を選んだ。そう宣ったのは、彼女の愛人で同僚カメラマンのリチャード。

キャー、デヴィッド・ストラザーン♡ カ、カッコいい。リチャード役です、彼は。

それは置いておいて、イザベルの家族である3人の男性たちは、母に愛人がいたという事実も許容している。いつのまにか。当然かのように。それでも彼女を皆愛していたのだとわかります。

とらえどころのない話だと言われたらそうだし、それこそ万人受けするなんて到底思えないけど、私は好きでした。

最後に原題について。難しいことはわからないけれど、私の勝手な解釈としては、多くの紛争地域や戦闘シーンを渡り歩いてきた母が、その爆弾よりも大きな衝撃を受けたのは、家にたどり着いた時の自分の居場所について。彼女がひたすら追い求めてきた世界を揺さぶるような写真のカットすら通用しない、夫の、息子たちの心の声が、彼女には耐えられなかったんだろうなと思いました。違ってたら、ゴメンなさい。

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