【cinema】砂の城
ここのところ、フランス映画ばかり見ていて、だいぶ頭が混乱してきました。ストーリー自体は違えど、こんなにフランスだけにどっぷり浸かることもあまりないので。
父親をなくしたばかりの30代女性、エレオノール。亡き父が遺してくれた別荘のあるブルターニュ地方コート=ダルモールへと、元恋人のサミュエルと共に向かっていた。それは彼女にとって少し危険な火遊び。サミュエルとは別れたものの、二人の関係がまだ完全には終わっていないことは、エレオノールもわかっていた。二人が現地の別荘で2日間過ごせるようコーディネイトしてくれたのは、不動産エージェントのクレール・アンドリウーという女性だった。3人の男女は不思議な休日を過ごすことになる。驚きと発見。押し寄せる感情の波。週末が終わる頃には、エレオノールとサミュエルの気持ちにも確かな変化の兆しが…。(公式サイトより)
なーんか不思議な映画。エレオノールとサミュエル、2人の男女の危うい関係を描いているかと思えば、そこに全くの赤の他人である不動産屋のクレールという女性が登場し、彼女の存在が2人の関係を微妙に揺さぶる。本人は気付かずとも全然嫌味なく。(ちょっと空気読めないけど)
また、エレオノールには亡き父の幻影が見え、彼は穏やかに、ひたすら穏やかに娘に語りかける。エレオノールは写真家で、映画の途中、彼女がカメラを片手に撮影するシーンがあったり、時折そのスチール写真が映し出される。それがまた心地よい。
それとこの映画を見ていて心地よくなる大きな要因として、Patrick Watsonというモントリオールの歌手(グループ?)の曲でほとんどが彩られている点です。声のトーンが本当に映画にマッチしていて、こんなに音楽と映画自体がしっくりくると感じるのも久しぶりでした。見終えた後も何度もYouTubeで聴きなおしました。The Great Escapeって曲がかなり良いです。
結局のところ、サミュエルとエレオノールがどうなったのかはわからないんです。よりを戻したのか、そうでないのか。それでも2人の関係は最初より良くなったことはたしか。あ、でもアフターピルを買おうって言ってたからよりを戻したわけではないか。それでも笑みを浮かべて終わるのだから、うん、よかったんだ、それで。
白黒はっきりしたい人には物足りないのかもしれないけれど、この儚げで、両手一杯に掬ったちょっと湿った砂が少しずつこぼれ落ちていくような感覚を覚えるこの映画は、ちょっぴり寂しくて、泣きたくなるけれど、また前に進もうって思える、不思議なストーリーでした。
個人的には父の晩年の恋人であったマエルという女性の存在が、私にはとても切なくて、彼女にとても感情移入してしまいました。彼に愛されてはいたけれど、8年間、娘に紹介されることもなく影の存在であった彼女。その彼女の品の良い佇まい一つでこの映画そのものが表されていると感じました。脇役だけれど、とても大きな存在であったと。
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