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【cinema】彼方から

ベネズエラ映画。(だと後から気づいた)
※記録のために書くので、ネタバレありまくりです。

カラカスで暮らす歯科技工士の中年男アルマンドは道端で好みの青年を見つけると、金を渡して自分の部屋に誘う日常を送っている。目的は買春ではなく、青年を鑑賞することに喜びを感じていた。ある日アルマンドは不良グループのリーダー、エルデルを部屋に誘う。この出会いをきっかけに二人の運命は大きく変わっていく…。(ラテンビート映画祭公式サイトより転記)

昔似たような映画を見たよなぁと思ったけど、違っていました。それは、フランス映画で、中年男がホームレス少年(ロマ?)を買い漁る中、1人の少年に惚れて、転落していくという「イースタンボーイズ」というタイトルで、てっきりこの映画はそのリメイク版かと思い込んで見たら、ちょっと違った。

このアルマンドとエルデルの関係って、本当に不思議で、アルマンドの歪んだ性愛(だって、ただ若い男を裸にして、それを見て興奮するんだよ)に、最初は抗うエルデルが、ある日を境にアルマンドを「友」と認識して、慕っていくんです。多分それは当初は純粋なものではなく、車を買うお金を払ってくれたから、自分が敵対する輩に暴行されて行方不明になっても、捜して助けてくれたからっていう単純なキッカケなんだけど、どこからかエルデルは、アルマンドを崇拝するかのような、尊敬するかのような、終いには互いに求めようとするまでになるんです。

アルマンドが、こんなふうに人と違うようになってしまったのには、彼の父親の影が見え隠れします。けれど、父が何をしたのか、多くは語られない。殺したいほど憎んでいて、その父親は彼とは絶縁状態だけど、絶対的な力を持っている大物であることは見ていてわかるようになっています。

エルデルは、アルマンドに忠誠を誓うような意味合いで、父親を殺して「あげる」んです。得意げに、やってやった感満々で、報告するんですけど、ラストは衝撃で、アルマンドはエルデルを売るんです。どういうことなんだろう…。彼にとって、エルデルが慕ってくれるのは嬉しかったはず。でも同時に、今まで経験したことのない喜びや悲しみも経験することになるであろうことはたしかで、彼は多分それが恐怖だったんだと思う。彼の表情からは何かを読みとることは難しかったけど、私はそう思うな。

ということで、最後までネタバレになりましたが、何かに満たされない者同士が、一緒になるということは、苦しくて苦しくて、どんなに求め合ってもそれは補い合うことはできず、いびつな形のままなんだなぁと。

今年に入って、様々な同性愛を描いた映画を見てきましたが、やっぱりすごく苦しくなりました。でも見てよかったです。愛のかたちは、無数にあるのだと思い知らされました。

これは2017年のアカデミー賞外国語映画賞のベネズエラ代表に選ばれているそうです。一般公開は難しそうだけど、いい映画でした。海辺でアルマンドとエルデルが二人きりになって語るシーンがあるのですが、そこだけがこの映画で輝いている一瞬でした。

ラテンビート映画祭にて。

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