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【cinema】ローサは密告された
2017年66本目。フィリピン映画🇵🇭。
人生初めてのフィリピン映画。昔々スペインの支配下にあったからかラテンアメリカの空気感がものすごくする。
埃っぽくて、泥だらけで、汗まみれで、ベタベタしている。人工的な光に包まれて、黄金色なんだけれども、そこに安心感は一切ない。それが、マニラのスラム街の姿。
4人の子どもを持つローサは、マニラのスラム街で小さなコンビニエンスストアを経営し、地元の人々からも好かれている。彼女と夫のネストールは家計の足しにするため少量の麻薬を扱っていたが、そのことが警察に見つかり逮捕されてしまう。ローサの子どもたちは腐敗した警察から両親を取り戻すべく奔走するが……。(映画.comより転記)
これね、ローサやネストールなんて全然ワルじゃないんだよ。真の悪は、取り締まる側の警察やないの。それに尽きる。よくあるよね。黒幕は警察だった、みたいなの。フィリピン本国でどんな反応だったかわからないけど、こういうのが恒常的になってるんじゃないかな。だからもう何をやっても無駄で、人々は疲れ果てている。抵抗することも、おかしいと声高に叫ぶこともいつのまにか忘れてしまっている。そりゃね、元は麻薬の売人が悪いよ。わかる。でもいつのまにか、いつだって搾取するのは、大きな公権力を持つ者になってしまってるんだよね。これは、フィリピンだけではないけれども。
見ていて何度も息が詰まりそうになって、ローサの味方を、彼女の子供たちの味方をしたくなって、何が何やらわからないまま絶えず深呼吸をし、大きく息を吐きながら、見終えた。
ラストのローサの顔が大写しになるシーンがとても印象的だ。汗と涙に塗れた彼女の顔は、安堵感で一杯なんだけれども、彼女らに待ち受ける未来は、決して明るくない。ドゥテルテ政権における麻薬取り締まりは、フィリピンという国に何をもたらすのだろう。