風茂吹也(かぜもふくなり)

バー小説を趣味でこっそり営業中 「毎週月曜夜、小説内で飲みませう」🍷 バーテンダー の鯉夏さんが悩みを聞いて、癒してくれます。 因みにイラストも自分です✏️ HPはこちらhttps://lit.link/kazemofukunari#

風茂吹也(かぜもふくなり)

バー小説を趣味でこっそり営業中 「毎週月曜夜、小説内で飲みませう」🍷 バーテンダー の鯉夏さんが悩みを聞いて、癒してくれます。 因みにイラストも自分です✏️ HPはこちらhttps://lit.link/kazemofukunari#

最近の記事

営業日変更のお知らせ😭

毎週月曜日、営業だったバー鯉夏ですが これからは月に一度更新になります😭 申し訳ありません、、、! そのぶん、ストーリーと絵をしっかり書きますね。 そして何卒 これからもバー鯉夏を よろしくお願い申し上げます。

    • 甘ない、しょっぱいチョコレートや(後編)

      不思議なこともあんねんなあ。 大正レトロな内装に大きな古い時計。満面の星が見渡せる広い窓に、琥珀色に輝くランプ。バーテンダーの鯉夏さんがシェイカーをシャカシャカとふる音は、なんや耳たぶが心地よく振動する。 鯉夏「ソルティドッグ。飲んだことあるかい?」 鯉夏さんはグラスのふちに白い砂糖?塩?がついたカクテルを私の前に出した。 私な、なんやろて思って人差し指でそれを拭き取って口に入れて。 美恵子「しょっぱい。塩やんけ」 鯉夏「あーダメだよ、お酒と一緒に飲むんだよ」 恵美子「あ

      • 甘ない、しょっぱいチョコレートや(前編)

        ほんのちょっと、ほんのちょっとだけ喜んで欲しかっただけなんよ。 なのに、こんな長く、拗ねることないやん。 【本日のお客様 志村美恵子様 50歳 パート】 うちには思春期真っ只中の一人息子、おしゃべり堅志郎がいる。 これがな、中学生になった途端、なんや髪の毛にワックスを塗る様になってな、頭がテカテカしてんねん。あんたそれ、時間たった海苔弁当の海苔みたいやって言うたら「これが流行ってんのや」って。ほんまかいな。皆頭のり弁当なん? さらにな、堅志郎、バスケ苦手やって言ってたのに

        • 休肝日のお知らせ

          今週急遽休業致します! 来ていただいたお客様に申し訳ないです涙 来週はまたぜひ小説内で飲みましょう!

          今宵はブルームーン(後編)

          大きな窓の外には青く輝く月が浮かんでいた。 ぼうっと見惚れていると、神秘的な青色をしたカクテルが私の前に現れた。 鯉夏「ブルームーン。あの珍しい月と同じ名前さ」 香澄「ブルームーンかあ。青い月もカクテルも初めて見ました」 鯉夏「月は大気中の塵の影響でああやって見えるんだ。火山の噴火後や隕石が落下した時に発生するガスや塵によって曇って青く見える。だから滅多に見れないんだ」 香澄「へえ〜。って噴火あったんですか?この辺で」 鯉夏「あはは。安心してよ。ここでブルームーンのお酒を作

          今宵はブルームーン(後編)

          今宵はブルームーン(中編)

          いくら私の頭が展開や状況を理解できなくても、時間はそんな私を持ってくれることはなく、普遍的に流れていくものだ。 次の日から、私は「優子の恋人」と書かれたたすきをかけた。 仕事終わりにバーで会って、いつも通りに楽しく会話した。 「恋人」という肩書きだけで、優子と今までと変わらないで過ごせていることに私は安堵した。それと同時に優子の秘密を共有できて、特別な存在になれた気がして、その存在欲求が満たされる感覚は、深く傷ついた私の心を癒やしていった。 香澄「優子はさ、その、女性が恋愛

          今宵はブルームーン(中編)

          今宵はブルームーン(前編)

          「大事な話がある」と言われて、夜景の見えるレストランへ呼び出された。 胸を高鳴らせ、5年間付き合っている彼氏からのプロポーズをひたすら待った。 しかし、彼の口から出てきた言葉は「実は俺、結婚してるんだよね」だった。 【本日のお客様 河本香澄様 29歳 商社一般職勤務】 しばらく沈黙した後、わたくし、河本香澄は恐る恐る口火を切った。 香澄「えーと…二股してたってことだよね?」 私の20代を奪った男、土屋ヨシキ(29)はこう答えた。 土屋「二股…うーん、時々三股かなあ」 なん

          今宵はブルームーン(前編)

          サキュバスと老人(後編)

          俺はカウンター席に座り、年季の入った机を撫でる。ここのバーも1つ1つの置物や絵に温もりが宿ってなんとも優しい空間だ。 この鯉夏という名のバーテンダーは、また麗奈とは違ったタイプの美人で、なんだかこの世の者ではないような不思議な雰囲気を醸し出している。彼女はシェイカーを振り終わると俺の前にカクテルを置き、優しく微笑んだ。 鯉夏「ベルベットハンマー。堂島さんにぴったりのカクテルだよ」 見たことのないカクテルだ。早速一口頂くと、甘いクリームと強いアルコールが五臓六腑に染み渡る。

          サキュバスと老人(後編)

          サキュバスと老人(前編)

          「生きていれば美しい景色を見ることができます」と君は言ったね。 俺は残された刻の中で、やり残したことはないかと探るように生きています。 だから今宵も、綺麗な女たちに下ネタを浴びせて生きています。 【本日のお客様 堂島ヒデヨシ様 88歳 食品メーカー会長】 ここは、銀座の片隅にある老舗クラブだ。 店内は、バーカウンターとソファ席のあるフロアに分かれていてね。 大正ロマンを彷彿させるこの空間は、落ち着いていて、上品で、美しい。飾られている絵、ランプ、花の1つ1つに「人の想い

          サキュバスと老人(前編)

          冷徹な血のメアリ(最終編)

          数ヶ月前、取引先に新商品の口紅のプレゼンをしにいった時だ。 何度か安藤を連れて行き、私のプレゼンを繰り返し見せ、いよいよ安藤1人でプレゼンをする日が来たのだった。 安藤はLGBTがより楽しくメイクをできるように、という企画をかねてから用意しており私もこれからのジェンダレスの時代に向けた良いプレゼンになると期待していた。 安藤が緊張する手をおさえ、勇気を絞り出して声を張ると、 取引先から 「メイク離れした20代女性向けのコンセプトだって口を酸っぱくして伝えていたはずですが?

          冷徹な血のメアリ(最終編)

          冷徹な血のメアリ(中編)

          今、目の前でとんでもない美人が長い指でお酒を作り、奥で大きな白猫が小さなバイオリンでマイケルジャクソンの「BEN」を奏でている。 ロマンティックなムードの中、私はカウンター席に腰掛け、ひたすら冷や汗を流していた。 美しいバーテンダーは「鯉夏」さんというらしい。さっき、ここは悩める人だけが瞬間移動して来れるバーだと説明してくれた。初めは冗談かと思って聞いていたが、彼女の目には嘘がなく、響く言葉には矛盾がない。 鯉夏「はい。みなみさんにはこれ」 目の前に真っ赤な色をしたトマ

          冷徹な血のメアリ(中編)

          【今週の休肝日のお知らせ】

          バー鯉夏、今日営業予定だったのですが 申し訳ないことに今週は急遽お休みします涙 血のメアリの分量が凄まじいことになってしまったので削っていき来週また営業しますね>< いらしてくださった方、本当に申し訳ありません涙 今日は肝臓をお休みしませう(汗) かぜもより

          【今週の休肝日のお知らせ】

          冷徹な血のメアリ(前編)

          戦って、戦って、行き着く果てにはきっと、私が生きている意味や存在価値に値する ”何か” が得られるのだと思っていた。渦巻く戦火の中、今この手に残っているものは、「犠牲」、「傷」それだけだった。 【本日のお客様 竹川みなみ様 33歳 化粧品メーカー企画マネージャー】 同期の菅原由依に誘われて、新宿にあるアイリッシュパブへ来てしまった。 クリスマス仕様のメルヘンチックな内装は人々の気持ちを高揚させ、酒を進めさせる。私たちは背の高いカウンターチェアーによじ登るとぶらんと足を垂ら

          冷徹な血のメアリ(前編)

          愛しのマルガリータ(後編)

          美しい音色に誘われ、僕はバーの奥へと入った。 落ち着いたモダンな内装、温かく光るガラスのランプ、二胡を奏でる大きな… いや、デカ…え?トトロ? 巨大なその白い猫は奥の古時計の隣の椅子に腰掛け、毛に埋もれてしまいそうな小さな二胡を抱え、肉球で弦を挟んでこなれた手つきで弾いている。白銀の毛並みは息を呑むほど美しく、拝みたくなるような神秘的な存在感を放っていた。 そんな未知の生物との遭遇。僕は動揺してしばらくそのまま動けなかった。 猫は可憐に曲を弾き終えると、美しいコバルトブルー

          愛しのマルガリータ(後編)

          愛しのマルガリータ(前編)

          琥珀に色づく銀杏の葉。ひらひらと像の周りを舞い降りて、秋のじゅうたんの一部となる。 例年美しいと思っていた全てが、今の僕の目には寂寥の景色に映る。 時の流れに身を任せ散り行き地面に散り積もるその様が、寂しく、虚しく、そしてじんわりと、悲しい…。 【本日のお客様 七星さま。 44歳。 大学教授】 扇子の要のような壇の上。そこで僕は生徒たちに囲まれながら授業をする。 煩悩まみれのお坊さんが、口先だけでお経を唱えるように、慣れて身に染み付いた言葉を、ただ口から出して羅列する。

          愛しのマルガリータ(前編)

          悩めるサヤエンドウ(後編)

          アンティークなデザインをした木製の窓から涼しい風が入って来て、彼女の細い髪をなびかせる。 僕が欲しかったお酒はマティーニだと、その美しいバーテンダーが言った。 その人は穢れを知らなそうな澄んだ瞳をしていて、化粧気のない淡いピンクの唇はなぜか昔懐かしい、傷つきやすかった時代を思い出させてくれる。 この人には「尊い」と言う言葉が似合うかもしれない。 こういう人にはえげつない恋愛相談や、ちょっとした下ネタなども、話せないし話しちゃいけないのだ・・。 鯉夏「遠藤さんが欲

          悩めるサヤエンドウ(後編)