角が立つ!
20年ほど前の、義実家での話である。
結婚して6〜7年経った頃だろうか、妻の出張中、俺は4歳くらいの息子を連れて義実家にいた。(年末年始のやつではない)
何故その状況で義実家にいたのか、それは割愛する。
妻には妹さんが2人いる。
2人とも年齢は俺より上だが、義妹ということになる。
俺は義実家で、その義妹2人から責められていた。その場に妻はいない。
推測であるが、妻が俺への不満を義妹2人に言っていたっぽい。
細かいことは割愛するが、結婚6〜7年目くらい、いやもっとか、現在は安定している夫婦間にもいろいろあった時期がある。
ザックリ言うと「アナタはお姉ちゃんを大事にしてない!」的なことを言われていた。
その場に、義父がいた。
黙って、その光景を見ていた。
そして、何かの拍子に、いや、俺の余計な一言に対して義妹が「そういうところよ!」と怒った。
めっちゃ怒られている。
とにかく、俺は(この場から去った方がよい)と判断し、
「じゃあ、帰ります!」
と息子を連れて帰ろうとした。
その時。
ずーっと黙っていた義父が初めて声を上げた。
「やめろ!角が立つ!」
俺も、義妹2人もその言葉を聞いて黙った。
「やめろ!角が立つ!」
一点の曇りもない、事なかれ主義である。
義妹2人からの俺への(正論な)言葉、大人気なく帰ろうとしている俺。
既に、角は立っている。
「やめろ!角が立つ!」
こんなに清々しい、その場をとりあえず収めるためだけの、根本的な解決を考えてない言葉があるだろうか。
「やめろ!角が立つ!」
こんな言葉はドラマや映画でも聞いたことがない。
しかし、「既に角が立っている状況」で、改めて
「やめろ!角が立つ!」
を聞いた俺も、義妹2人も冷静になったのだ。
(たしかに…角が立つかも…)
と思ったのか、その後は冷静に話し、よく覚えてないが、丸く収まって、俺は義実家から帰宅した。
この話は、20年ほど(なんかイヤな記憶)として自分の中で封印して忘れていたのだが、
つい先日、ある方にこのエピソードを話した時、
義父が放った
「やめろ!角が立つ!」
に20年越しにウケてしまった。
めっちゃおもしろいな、義父。
(おもしろいので何度も書いているが、義父が放った「やめろ!角が立つ!」は1回のみである)
「なんかイヤな思い出」も時が経てば(いや、めっちゃおもしろくない?)に昇華されることがある。
♪いつか〜笑って話せる〜日が来るさ〜
みたいな歌、ありますよね。
年末年始に義実家ミッションを控え、気が重くなっている方もいるだろう。
親戚同士の諍いも起こるかもしれない。
何の参考にもならないとは思うが、
俺は義父の
「やめろ!角が立つ!」事件
から少しずつ義実家から距離を置くことに成功し、
この15年ほど、義実家には行ってない。
この年末年始も、行く予定も誘いもない。