うつ病治療で電気ショック療法を受けようと入院した話

※医学的なことを素人目線で書いているので、読む場合はちゃんと最後まで読んでください。


映画「カッコーの巣の上で」のラスト付近で主演のジャックニコルソンが頭部に何らかの手術を受けて廃人同様になりますね。

あれはたぶん「ロボトミー手術」というやつだと思います。


あの「ロボトミー手術」というやつをサッと調べると、日本国内でもあの手術が原因で殺人事件が起きていたり、
そもそも「人権的にどうなのか」みたいな、ややこしい話になるので、避けます。


俺は精神病を患っているけど医学者ではないので医学的なことは書けないけど、

「精神外科」というジャンル?があるようです。


このnoteは約20年前、うつ病になって3年くらいの俺が、その「精神外科」の領域の治療を受けようと、九大病院精神科に入院した時の話。

実際に電気ショック療法を受けた患者の方についても、その様子を(素人目線で)書きます。


たぶん俺が「うつ病」だと診断されたのは2002年頃だと思う。32歳の時。

当時はまだ「うつ病」という病名はあまり知られてなくて、よく「うつ病って何?ノイローゼみたいなやつ?」って言われた。

うつ病をはじめ精神病全般に対して「サボってるのでは?」「詐病でしょ?」「気合が足りないんじゃないか?」「考え方を変えたら治るのでは?」などと言われて酷く傷付いた、みたいな話を聞いたこと、ネットで見たことがあると思うけど、

俺はめっちゃ言われています。
22年も前の、精神病治療に関しては黎明期の、そしてまだ日本人が皆でフツーに飲酒運転をしてた、今とは価値観が全く違う「日本」という国の話なので。


当人である俺も「うつ病」という病気を信じていなかった。

その1年ほど前から有休を取って休むことが増えていたらしく(このことに自分自身も気付いていなかった)、ある日、職場の管理職(教員をしてたので校長)に呼ばれ、

「この1年、如何に有休が増えているか」というデータを見せられ、
「うちの職場の近くに心療内科という病院がある。そこに〇日の〇時から予約を取ってるから。有休を取って行け!」という強引な命令だった。
今だと「部下の病院の診察の予約を勝手に取っている」というのは何らかのハラスメントや何らかの問題になるとは思うが、

今考えると非常に有り難い。

今の価値観だと「有休が…増えていますね…私は貴方が精神の何らかの病気だと思うのですが…心療内科などに行かれてはどうでしょうか?」みたいな言い方になるのか、俺は今の社会を知らないので適当に書いてるが、

2002年、32歳の俺は、その言い方だと心療内科を受診してないと思う。

その初診の心療内科で、後の主治医とかなり口論をしたことを覚えている。
「この私が、うつ病なんかに、なるわけがないでしょうが!」
「はい、分かりました。アナタはうつ病ではないデース。でも、睡眠障害です」
「睡眠障害?」
「24時間眠り続けたり、24時間眠れなかったりしてるわけでしょ?じゃあ睡眠障害です」
「ウゥ…確かにそれはそう。じゃあ睡眠障害ということでいいでしょう」
「眠れる薬を出しときますね」
「はい。眠れるのであれば」
後で分かったが、この時既に、うつ病の薬は処方されていて、俺はそれも睡眠薬と思って飲んでいた。

心療内科の初診で「睡眠障害」と診断される例は多いらしい。だいたいそういう場合は、うつ病などの病状が「手遅れ」と言ってもいいくらい進んでいる。


自分が「うつ病である」ということにも納得し(教員は福利厚生はとても良いので)病気休職をしたりして真面目に治療に取り組んで3年ほど経ったある時、思った。

治療してるのに全く治らないの、おかしくない?
え、昭和のヤブ医者とかではなく、医師免許を持った医者ですよね?
なんで病気を治せないの?
普通、病院って、病気を治してくれるよね?内科でも外科でも、歯医者でも。
なんで?金を払って真面目に病院に通って薬飲んで、全く治らんどころか、悪くなってない?

もうこの時点で、どうでもよくなっていた。

普通さぁ、ガンとかさぁ、手術するやん?
頭をカチ割って、頭の中を手術してくれんかな?
その手術で廃人になったり、別人格になったり、ずっと寝たきりになっても文句は言わないから!
とにかく!今のこの苦しみが続くなら!廃人になった方がマシ!意識が無くなった方がラクだと思うし!

…精神病というのは、人をここまで追い込むのだ。

そういう気持ちや考えを、全て主治医に診察で言った。

「九大病院で、電気療法というのをやってます」と主治医は言った。

…え?あんの?あの「カッコーの巣の上で」のやつ?今の日本でやっていいの?

「ああいう手術ではないですが、電気ショック療法と言いますか。そういうのがあります。大学病院でやってるところがあります。効果はハッキリとはしてませんし、アナタが電気ショック療法を受けたいからといって、受けられるとは限りませんが」

受ける受ける!受けます!
今の、治らない治療を続けるより、それに賭けます!
別人格になってもいいし、記憶喪失になってもいいです!
廃人になってもいいです!
失敗しても絶対に文句言わないから、紹介状を書いてください!

ということで、九大病院に紹介状を書いてもらって、電気ショック療法を受けるため、入院することになった。

2005年、35歳の時だったと思う。

大学病院の入院はすぐにできるものではない。3ヶ月後に入院することになった。

病気休職中の3ヶ月。ヒマである。
元気も今より全然あった。
そして、治らないうつ病の病状で切羽詰まっていた。
その頃は自分が数年後、退職して無職になることなど、想像もしてなかった。

入院までヒマだったので、電気ショック療法について調べていた。

「九大病院 精神科 電気療法」とググると、現在は以下のような要約が出てくる。

『精神科電気けいれん療法(ECT)は、頭部に電流を流して脳のけいれんを誘発し、脳の機能を回復させる治療法です。薬物療法での改善効果が見られないうつ病や統合失調症、躁うつ病、混合性感情状態、緊張病などに適応されます。自殺の危険性が高い場合や焦燥を伴う重症の精神病、高齢者や妊婦など薬物を十分に使用できないと考えられる場合にも適用されます。

また、うつ病の治療法として、脳に繰り返し磁気エネルギーを与える反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法も注目されています。アメリカでは抗うつ薬が効かない患者の3割~4割に改善効果が認められており、日本でも社会復帰を後押しする治療法として注目されています。』

以下は九大病院のホームページより。

あれから20年が経っているので当時調べた内容とは違うと思うが「ECT」というらしい。今は「rTMS治療」というのもあるようだ。

なんか難しいから「電気ショック療法」と以下、書きます。


結果から言うと、その九大病院の入院では、俺自身が希望した電気ショック療法は受けられなかった。

なんか「電気ショック療法で見込める効果より、リスクの方が高い」みたいな理由で。

九大病院での(一時的な)主治医1人の見解でそう決められたのではなく、何度も会議をして決めたらしい。

「カンファ」というやつである。

当時既に漫画「ブラックジャックによろしく」を読んでいたので言葉は知ってたが、

大学病院の医者、めっちゃ「カンファ」って言うな…と思った。

精神科に入院してる訳だから毎日主治医と話せるはずだが、大学病院の場合は主治医に会えないことが多かった。

「すいません、カンファで忙しくて…」
病状や、治療内容の話をしてても
「すいません、今からカンファがあるので時間がなくて…」

もはや「カンファ」って言いたいだけでは?と思うくらい、主治医の口から「カンファ」という言葉を聞いた。

そして入院目的の電気ショック療法についても
「カンファを重ねた結果、リスクの方が高いということで、今回は電気ショック療法は見送りということになりました」

入院中、九大病院のめっちゃデカい図書館で本を借りて1日1冊のペースで読んでいたのだが、
偶然、手にした本に、宮部みゆきの「レベル7」というミステリ小説があった。
記憶喪失を絡めたミステリだが、その小説に「精神病院での電気ショック療法」の描写もあり、
(1990年の小説なので2005年当時の精神医学とはかなり違うとは思うが)
「俺が受けようとしてた電気ショック療法、確かにリスクはあるよな…」
と納得させる理由の1つには、なった。

その、偶然読んだ小説で「電気ショック療法、受けなくていい」となった訳ではなく、
長い入院生活に疲れていたし、
入院すると、その静かな環境から病状も(一時的に)良くなるので、
「電気ショック療法で自分が全く別人格になるのは…妻もビックリするだろうし、社会復帰できんのかな…」
などと、入院中に考えていた、というのもある。

どちらにせよ、病院側が「あなたは電気ショック療法を受けることはできません」と決めた時点で「無理やり電気ショック療法を自分で受ける」こともできないのだが…

電気ショック療法が受けられないことについては納得した。

代わりに何だっけ…何の薬だっけ…
かなり古い、アナフラニールだっけ、
古いけどめっちゃテンションを上げてうつ病がかなり良くなるよ!ハイテンション!
みたいな薬を出されて、その3ヶ月の入院は終わった。

後に、その九大病院で処方された「古いけどめっちゃテンションを上げる抗うつ薬」が俺のうつ病を躁うつ病へとレベルアップさせ、2008年、38歳の俺を無職にしてしまう。
(ちなみに、俺が「うつ病ではなく躁うつ病である」ことを見抜かれ、治療方針が180度変わったのは2011年、41歳の時に強制入院した太宰府病院だった)


長くなったが、九大病院の入院で電気ショック療法を受けた患者がいた。

かなりの老婦人だった。70代くらいだったか?

精神科の入院というのは思っているより患者同士の交流があり、喋ってたりするのだが、

その老婦人とはほとんど喋ったことがなかった。

何も喋らない。ずーっと車椅子に座って動かない。食事も1人では困難な様子だった。

あの老婦人の病気は何だったのだろうか?
認知症?のように見えたが、認知症で精神科に入ることがあるのか?

ある日、もう俺は電気ショック療法を受けられないと主治医に告げられ、あとは薬物療法を続けて退院も見えてきた頃、

その老婦人が元気に歩いているのを見た。看護師が補助しながらであったが。

老婦人は言っていた。

「なんだか分からないけど、頭がスッキリして、身体もスイスイ動くのよ〜!でも、なんだか分からないの!」

その老婦人がハキハキ喋ってるのを初めて見た。別人のように元気になっていた。

老婦人は電気ショック療法を受けたと他の患者から聞いた。これは看護師からも聞いたので確かだろう。

俺も受けたかったな、という思いもありつつ、
でも、老婦人は残りの人生も短いだろうし、家族の意思も尊重した上で、リスクもあるかもしれないけど、電気ショック療法を受けさせることを決め、主治医も了承したのだろう。


※このnoteは電気ショック療法を推進するものではなく、医学者でもない患者の1人として、入院病棟で見たことを記しているだけです。


ツイッターに書くと知らない人から何か言われる可能性があるので、フォロワーが少なくても誰でも炎上する可能性があるので、noteに書いてることって多いのだけど、

読んでもらえることは有り難いのだけど、

先日、「オマエ、本当に読んだか?」と思うような、それも俺の出生に関する内容に対して、ツイッターの薄っぺらい男女論みたいなクソみたいな視点でクソのようなコメントを書き込まれたのでブロックしたが(noteもブロックできる。でもブロックしても閲覧はできる)
noteもクソリプを送ってくる奴、いるんだな…


今日は入眠には成功したが3時間くらいで起きてしまい、再び寝ることは不可能と感じたので、

思い出したことを書きました。


4千文字を超えてしまった。

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