有名人同士のマウント合戦

妻がオフコースが好きで、オフコースの曲は全曲歌うことができ、最後になるかもしれない小田和正のコンサートのチケットを取っていたが、台風で中止になったので行けなかった。
…という事実を去年知った。

驚いた。妻が自分の意思で音楽を聴いてるのを見たことがないし妻はCDなどを1枚も持ってない。音楽自体に興味が無いのかと思っていた。

結婚して25年、交際期間を合わせると30年くらいなのに知らなかった。

こういうことを書くと「奥さんに興味を持ってなさすぎる」と怒られるのだが、相手の知らない部分が何かしら有り続けることの方が感情は長持ちすると思います。


そういうのもあって、先日BSフジで「輝き続けるオフコース」という番組が再放送されたので録画していた。それを盆休みに妻と見ました。

この番組ですね

BSのNHK以外の番組を見たことがある人は知っていると思うけど、CMが健康食品と、短い通販番組みたいなのばっかりなんですよ。健康器具とか保険を売るみたいな、最終的に電話番号が出てくるCM。
要するに中高年〜老人向けなんですね。

この「輝き続ける〇〇」という番組は他に中島みゆき、BOΦWY、尾崎豊、忌野清志郎のやつがあったみたい。

オフコースというバンドはボンヤリ〜と「小田和正がいたバンド…」くらいしか知らなかった。

この番組が、思ってたより、おもしろかったんですよ。

出演者のトークが。

出演者はこの5人でした。

・司会が軽部真一
・ふかわりょう
・坂崎幸之助
・北川悦吏子(脚本家。作品は「半分、青い。」「あすなろ白書」「ロングバケーション」「ビューティフルライフ」等)
・永山耕三(ドラマディレクター。作品は「東京ラブストーリー」「ひとつ屋根の下」「ラブジェネレーション」「ロングバケーション」等)

あとはビデオ出演で財津和夫。

スタジオにはバンドメンバーも関係者もいない。
「オフコースがめっちゃ好き」という人達がひたすらオフコースについて語る、という番組。

この「好きなものについて語り合う」がイイ感じに転がっていた。

「自分の方がオフコースについて詳しいんだぞ!自分の方がオフコースを好きなんだぞ!」
という気持ちが透けて見える、いやハッキリ見えるトークショーと化していた。

他人の口喧嘩は見ていておもしろい。
ツイッターのような素人によるレスバトルではなく、言葉を生業としてるプロによるテレビなのでほどよくおもしろい。

特に脚本家の北川悦吏子とふかわりょうが「そのコメント、考えてきたでしょ?そんなにスラスラと上手くあの曲の感想を言うなんて」「いや、やめてくださいよそんな、自分の方が詳しいみたいな言い方」
…のような、うろ覚えだが、飲み会の二次会みたいになっていた。

他の仕事で売れた有名人でも好きなものについて語るとあんな感じになるのか。

中高年のウンチク・マウント合戦をテレビショーとしてイイ具合に昇華させていた。さすがテレビ局だ。

この、中高年のウンチク・マウント合戦が野放しに行われている場所が、身近なところで考えると町内会である。

仕事のみを自分のアイデンティティとしてきた人は、定年退職後、町内会でウンチクを垂れ流すか、インターネットの陰謀論にハマるのだ。


俺はオフコースについて「聴いたことある曲が何曲かある」くらいの認識だったが、
・最初は小田和正と鈴木康博のフォークデュオだった
・1982年に武道館10日間ライブをやって鈴木康博が脱退
・「さよなら」「言葉にできない」「眠れぬ夜」「愛を止めないで」など、一般的に有名な曲は鈴木康博が在籍してた時代の曲である
・バンド解散は1989年
…というのは知らなかった。

小田和正は「自己ベスト」「自己ベスト-2」というアルバムが凄く売れたが1982年までの鈴木康博がいた頃のオフコース時代のセルフカバー曲も多く含まれている。

誰なんだ?鈴木康博って? 
…くらいの、初めて聴いた名前だが、

鈴木康博が一緒に居た時代の小田和正はめっちゃイイ曲をたくさん書いている。いや、共作か?レノンマッカートニーみたいなもんか?
と思った。

…と、ここまで書いていたら実家に行っていた妻が帰宅して、

妻自身も忘れていたそうなのだが、

2枚のオフコースのレコードを持ち帰ってきた。


オフコースというバンドに「ロック」というイメージを持っている人は少ないと思うのだが(少なくとも俺はそう)、

おや?と思ったのは
恩田陸の「夜のピクニック」という小説を読んだ時。

「24時間、歩き続ける学校行事中に起きたあれこれ」を描いた、高校生を主人公とした青春小説なのだけど、

途中、舞台が夜中になった時に、
「普段は全く目立たないが夜中に歩いてるのでテンションが異常に上がった男子生徒」のセリフがあって、
そのセリフが「オレよぉ、昨日の夜オフコース聴いてたんだけどよぉ、オフコースのロック、たまらねぇぜ!」みたいな感じだったのですね。

え、オフコースがロックだったの?
と思った。
舞台はたぶん80年代だと思うが、当時のロックってRCとか…オフコースがロック?

俺の認識が間違ってんのかな?
とボンヤリ思ってたけど、テレビ番組内で武道館コンサートの映像を見て
「思ってたのと違った…これは確かにロックバンド…」
と思いました。

ビートルズもそうだけど「優れたコーラスグループ」でもあるので、「ロック」というイメージがあんまりないのね。


ほとんどのアーティストがそうだと思うけど、
「一般的に、広く知られているパブリックイメージとなる曲」と、
「そのアーティストの、本質的な曲」
は、かなり乖離がある。

俺はエレファントカシマシの曲を「くだらねえと〜つぶやいて〜」と「さあ頑張ろうぜ〜」の2曲しか知らないけど、
たぶん、エレファントカシマシの本質はその2曲以外の、ファンなら絶対に知っているが一般的には知られていない、シングルでもない、アルバムのどこかにひっそりとある曲なのだろうと思う。

そういうのはファンしか知らないし、ファンの中でもそれぞれ違うのだ。



知らんことに口を出すのは良くないな…



出してしまうが…………





夕飯を食べます。

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