R.W.スミス:プロミッシング・スカイズ

ロバート・W・スミスは1958年、アメリカのアラバマ州で生まれた作曲家で、主に吹奏楽や映画音楽を手掛けている。
アラバマのトロイ州立大学ではポール・ヨーダーに作曲を師事、同大学マーチング・バンドでも首席トランペット奏者を務めた。音楽学士号を受けて卒業した後、フロリダへ移り。マイアミ大学にて音楽修士号を取得した。この時期に、アルフレッド・リードに師事している。
現在はトロイ州立大学のバンドディレクター、同大学にて音楽産業プログラムの教授を務めながら、楽譜出版社「バーンハウス社」及びそのCDレーベル「ウォーキング・フロッグ・レコード」の商品開発担当副社長に就いている。
この作品は、2005年8月下旬にアメリカ南東部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」に於いて、特に被害の大きかったルイジアナ州ニューオーリンズ市を題材に作曲された音詩である。ニューオーリンズのアメリカ海兵隊バンドからの委嘱で、ハリケーン・カトリーナ襲来の4年目にあたる2009年8月30日、ニューオーリンズのセントルイス大聖堂にて、3等准尉マイケル・J・スミスの指揮により初演された。
冒頭のトランペットソロは、ニューオーリンズ出身の名ジャズトランペット奏者、ルイ・アームストロングをイメージして書かれており。この旋律は楽曲の様々な場面で使用される。続いて、トロンボーン、テューバ、ドラムセットが加わり、ニューオーリンズ・ジャズ(ディキシーランド・ジャズとも言う)のジャズ・コンボを形成する。その後、全奏となり導入部を終える。次の場面は「Blue Sky(青空)」と題されており、ジャズ発祥の地ニューオーリンズの歴史的な街並みを想像させる主題と、ドゥー・ワップと呼ばれるスキャットを模した伴奏が、ジャズの生まれた街の日常を描写する。その後、これから襲いかかる災害を暗示するかのように不安な旋律が現れ、場面は「Threatening Sky(雨模様の空、泣き出しそうな空模様)」へ移る。ここではフィンガー・スナップやボディ・クラップなどで雨音を模し、その後、サンダー・シートと呼ばれる打楽器を用いて、落雷を表現する。そしてティンパニのソロから始まる「Raging Sky(荒れ狂う空)」に場面が換わる。ホルンから始まる旋律は低音楽器などに引き継がれていく毎に激しさを増し、ハリケーン・カトリーナの勢力の強さを表現する。やがて、ハリケーン・カトリーナは通り過ぎ、次第に雨も上がる。甚大な被害を目の当たりにし、悲しみに暮れる中、冒頭のトランペットソロの一節が現れ、「Dawn of New Sky(新しい空の兆し)」の旋律がホルンにより演奏される。フルート、オーボエのソロが続いた後、先程の旋律が「A City Reborn(都市の再生)」の場面で、復興への決意と希望の象徴として現れる。その後「Blue Sky」の再現を経て、冒頭のジャズ・コンボが全奏により演奏される。これは、ニューオーリンズの街に再びジャズが鳴り響き、復興が進む様にとの願いを込めたものではなかろうか。

【出版:バーンハウス社/グレード5/演奏時間15:00】

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