R.R.ベネット:バンドのための「シンフォニックソング」
ロバート・ラッセル・ベネットはアメリカの作曲家で、陸軍歩兵隊軍楽隊のディレクターを経て、ブロードウェイのミュージカルの編曲者となる。「オクラホマ」「ショー・ボード」「南太平洋」「王様と私」「マイ・フェア・レディ」「サウンド・オブ・ミュージック」等、主だったミュージカルのすべては彼の編曲によるもので、1955年には映画「オクラホマ」の音楽でアカデミー賞も受けている。
この曲は1957年に作曲され、「古いアメリカ舞曲による組曲」と並ぶ、氏の吹奏楽曲の代表作である。
第1楽章「セレナーデ」は3/8拍子の楽曲だが、2拍子と3拍子が混在しているように聞こえる。このリズムのトリックがベネットの魅力の一つであると言えるだろう。冒頭から続くリズミカルな伴奏に続き、木管楽器の魅力的な旋律が現れる。中間部で、牧歌的な民謡風の旋律が現れた後、再び冒頭の再現部が提示されエンディングを迎える。この楽章は、伴奏に終始シンコペーションのリズムが鳴っており、木管楽器の奏でるレガートの旋律との対比で一層楽しませてくれる。
第2楽章「スピリチュアル」とは日本語で言うと「霊歌」。奴隷としてアフリカから連れてこられたアフリカ系アメリカ人にキリスト教が広まり、賛美歌とアフリカ独特の音楽的感性が融合したものであり、現在のゴスペルの基になった音楽である。緊張感を持ちながらもどこか神秘的な冒頭の和音に導かれて、ユーフォニアムソロが朗々と旋律を歌い上げる。それはオーボエ、トランペットへと受け継がれ、ホルンの温かな旋律が登場する。その後に、第1楽章の余韻を楽しむようにリズミカルな動きが現れ、この楽章のレガートの旋律と上手く絡んでいき、少し幅の広い音楽となる。それはやがて少しづつ収束していき、ピッコロの少し寂しげな旋律によって終わる。
第3楽章「セレブレーション」は、「お祝い・祝祭」である。木管楽器の鮮やかな連符の上にトランペットを中心とした華やかな旋律、トロンボーンのグリッサンドを交えた序奏は、地域を上げての祝祭に招かれてやってきた旅芸人の一行のパレードのようである。その後に出てくるトランペット、トロンボーンの旋律では意図的に半音ずらしてあり、賑やかさと滑稽さを感じさせる。中間部では落ち着いた3拍子を経てどこか怪しげな旋律が現れる。この旋律をユーフォニアムが締めくくると、ウッドブロックとティンパニの軽快なリズムが現れ、それに続く旋律が次第に全体の緊張感を強める。次第にスピード感が増し、その後急ブレーキがかかると、この楽章の前半でトランペット、トロンボーンが提示したテーマを再提示し、エンディングを迎える。緊張感を高めながらどこか陽気でカプリチオ風な進行が妙にシニカルな空気を醸していて、ベネットの洒落っ気たっぷりの魅力的な楽章に仕上がっている。
【出版:ハル・レオナルド社/グレード5/演奏時間13:50】