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[新型] 練習はしないのにジャムセッションには出かける楽しみかた

ジャズの世界にはジャムセッションというのがありまして、楽器を練習している人がお店に集まりその場限りの合奏を楽しむという催しがあります。

このジャムセッションというのはとっても大切なもので、これがないとなかなか良いミュージシャンは産まれてきません。
見知らぬ人とほんのわずかな決め事だけを設定して、演奏に臨みます。
言葉ではなくて、演奏でやり取りをして進行します。
それができることがとてもすごいことだと思われがちですが、もちろん最初からそんなことができるわけではありません。
最初は右も左も作法がわからず、人に迷惑をかけ、見て聴いて盗みながら、あるいは経験の豊かなひとに教わりつつ、学んでいくのです。

ある程度楽器が扱えるようになったら、積極的に参加するべき催しです。

さいわい、いまは空前のジャムセッションブームと呼べるかもしれません。
初心者にも参加しやすいと標榜するジャムセッションがあちらこちらで繰り広げられていますね。
どんどん行くべしです。

ジャムセッションというのは、音楽仲間を増やす場所でもあります。
いっしょにバンドを組んで切磋琢磨する貴重な仲間。
大学生などであれば同級生たちと腕を磨きあうということが容易かも知れませんが、そうでない場合はたいへん貴重な場所となりますね。

そしてプロを目指す若手にとっては自分を売り込むチャンスでもあります。
わたし自身も、どんな先輩ミュージシャンが来ているかわからない。もしかして新たなメンバーを探しに来ているかもしれない。
そんななかで自分が眼鏡に止まったら、との思いでジャムセッションに通ったものです。
まぁ、そんなに都合の良いことはめったに起こらないものでしたが。(たまにはありました。)

しかしこのジャムセッション、たのしいはたのしいでいいのですが、「初心者のままでいたいひと」が増えたためか昔とはずいぶん様相が異なってきました。
ジャムセッションとはいろいろなものを見て聴き学び盗む場所でありましたので、インプットを得た後はアウトプットの前に必ず咀嚼の時間が必要です。
つまり情報を得て家に帰ったら練習して自分のものにしてから次のセッションに向かうのですね。
昔から、毎回毎回セッションに参加する人というのは居たのですが、その分かならず練習をしてきていました。

ちかごろ、上に少し書いた「いつまでも初心者のままでいたいひと」というジャンルが新設されたようで、このカテゴリに収まる人は練習はしません。
イヤな練習はしないのですがたのしく楽器を吹きたい。
もちろんそういう楽しみ方もよいとは思いますが、優れたもの、努力している人々の成果を「見て聴き学び盗みたいひと」からすると情報濃度の希釈にしかなりません。
練習をしない人の演奏を見せられても何の参考にもならないのです。
ジャムセッションは自分が演奏するときも、演奏していないときも学びの場所なのです。
しいて言えば、「ああ、練習してないとこういう風になるんだな・・」ということは学べるかもしれません。
せっかくお金を出してジャムセッションに来ても収穫が減るのであれば自然と足は遠のきます。
そうして、ジャムセッションという場所は相互研鑽の場所から馴れ合いの場所へと変わっていきます。ただのおとなの遊び場と化していきますので向上心のある人は寄り付かなくなるのです。

もちろんすべてのケースがこれにあてはまるというわけではありませんし、いつまでも初心者のままでいたい人を批判しているのではありません。
初心者のままでいたい人もいないと楽器業界はつぶれてしまいます。
楽器はその人にとって人生を豊かにするものであって義務ではないのです。
じょうずにならなくても一向に問題ありません。
練習をしたくない人はしなくていいのです。
しかしそれを「プロフェッショナル」に対しての「趣味」とは言いません。向上心もないので「wanna be(あんな風になりたいなぁ・・と思ってるだけの人のこと)」でもありません。
たぶんまだ該当する日本語はありませんので「初心者のままでいたい人」と呼んで区別しています。
わたしは「初心者のままでいたい人」はジャムセッションに来るな!と言いたいのではありません。もうわたしが行かなければそれでいいのです。

わたしは、ほかのSNSでのグループで、サックスに関するグループに複数加入しています。
当初はサックスを「研究」している人々の有益な情報交換の場であったのですが、グループ会員が増えてくるにつれその有益な情報が薄まっていき、正直にいいますと今では見る価値がずいぶん減ってしまったと感じています。
最初集められたコアな人々の有益な情報の集まりから、「あのグループいいね」「こんなグループあるの知ってる?」と伝播が始まり、ろくすっぽ練習はしないが知っているだけで有益な情報があるのではないかとどんどん人が集まってきたのでしょう。知っていても練習しないと身にはつかないものですが、それが理解できているならこのようなことにはならないと思います。

最初は興味をもって覗いていたグループもすっかり有益な情報はなりを潜め、いまでは生徒さんを獲得したいわたしのような三流インストラクターが宣伝を垂れ流す場所と変り果てました。
これが創設者さんの本当に望んだ姿であったでしょうか。

そのあとわたしはジャズフルートをまじめに練習していくにあたり、ジャズフルートのためのグループを作成しましたが、名前を「ジャズフルート愛好会」ではなく「ジャズフルート研鑽会」といたしました。
ここには、まじめにジャズフルートを相互研鑽しようという気概の無い方は来ていただきたくないですし、そういった方は「愛好会」を別に作って盛り上がっていただければよろしいと思っています。


わたしが愛し、わたしを育ててくれたジャムセッションが、ただの愛好会となり果てたのと同じことにならないように。

京都在住のサックス/フルートプレイヤーです。 思ったことを自分勝手に書いていきます。 基本、内容はえらそうです。