父と書いて道路が目的地の男と読む
父はとにかく車を走らせることだけが趣味の男だ。
目的地があるとか、旅をのんびり楽しむとか、そういうことではない。
とにかく車を走らせたいのだ。だが、家族がいる以上、名目がいる。
俺が行きたいとは言わない。家族の誰かが行きたいと言ったともやもやっとした理由を持ってくる。
姉がおーい竜馬にはまったと見るや高知へ。
祖母が金毘羅山に行ったことがないと呟けば香川へ。
似たような曖昧な理由で日光や岐阜へも連れていかれた。
一番遠かったのは大分だったらしいが、当時二歳の私は覚えていない