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ロミオとジュリエット


この映画は見るたびに号泣しますが、その音楽を聴くだけでも泣きそうになります。


『ロミオとジュリエット』は、言わずと知れたシェイクスピアの戯曲ですが、その舞台は14世紀の北イタリア、ヴェローナという都市です。


物語の中ではその街で、ロミオのモンタギュー家とジュリエットのキャピュレット家が、代々対立していましたが、それぞれモデルになった家があったようです。モンタギュー家のモデルはヴェローナの貴族モンテッキ家、キャピュレット家のモデルはカペレッティ家で、こちらは貴族ではなかったようです。

両家の対立は「皇帝派」と「教皇派」の党派闘争だと言われることが多いそうなのですが、どちらの家が皇帝派で、どちらが教皇派なのか?ということで、よく意見が分かれるそうです。

そのあたりについては勉強不足で、私にはよくわからないのですが、いろいろ見てみたところによると、貴族のモンテッキ家が皇帝派(ギベリン)で、カペレッティ家がクレモナの教皇派(ゲルフ)という意見をよく見かけました。


こんな話も見かけました。


シェイクスピア以前に、ダンテの『神曲』の中にも「モンテッキ家とカッペレッティー家」という二家が出てきます。そしてそれ以前にも、元となったお話はあったようです。

古くはマスッキオ・サレアニターノ(マスチオ・サレルニターノ)(1410~1475)の「マリオットとガノッツァ」で、主人公の名前はマリオット・ミニャネッリとガノッツァ・サラチェーニ。モンタギューとキャピュレットの名前はありません。サレアニターノの死後に出版された短編集に収録され、この作品の舞台はヴェローナではなくシエナです。

この短編から創作されたのが「ジュリエッタ」で、著者はルイージ・ダ・ポルト(1485~1529)。この作品で物語の舞台はシエナからヴェローナになりました。主人公はモンテッキ家のロメオとカペレッティ家のジュリエッタ。この名前はダンテ(1265~1321)の「神曲 煉獄編 第6歌106行」に登場します。

”思慮なき人よ、来てモンテッキ、カッペルレッティ”(「神曲 煉獄編」 ダンテ著 河出文庫P.87)

<中略>

さらに、この物語はマッテオ・バンデッロ(1480〜1562)によって「ロミウスとジュリエットの悲しい物語」として1554年に出版されました。この作品がピエール・ボアイストゥアウ(1517〜1566)によりフランス語に訳され、続いて英語訳されたものがアーサー・ブルック(?〜1563)の「ロミウスとジュリエットの悲しい物語」、ウイリアム・ペインター(1540頃〜1595)の「ロミオとジュリエット」として出版されます。それを戯曲にして上演したのがウイリアム・シェイクスピアでした。

出典:薔薇の小径 〜歴史の扉へと続く道〜

また、オペラにも『カプレーティとモンテッキ』という演目があるようです。




このヴェローナの歴史を見てみると、中世からルネサンスにかけての頃は、その街では、スカラジェリ家(デッラ・スカラ家)、ヴィスコンティ家、パドヴァのカッラーラ家と、支配者が次々と変わっていっているようで、そこにもいろいろと、熾烈な闘争があったのだとか。

『ロミオとジュリエット』の中に出てくる「プリンス・オヴ・ヴェローナ」であるエスカラス大公のモデルは、デッラ・スカラ家の「バルトロメオ・デッラ・スカラ」だと言われているそうです。


デッラ・スカラ家がヴェローナを治めていたのは1277~1387年で、この家は、皇帝派(ギベリン)だったそうです。

上の三家で言うと、私は今までヴィスコンティ家くらいしか知りませんでした。ヴィスコンティと言えば、ミラノを支配していた家だと思っていましたが、ヴェローナにも手を出したりしていたのですね。

15世紀にヴィスコンティ家が途絶えると、ミラノの支配権はその後、スフォルツァ家に移っていきました。



現存する最古のタロットと言われている、『ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット』を持っているのですが、そこに描かれている絵柄は、ミラノのフランチェスコ・スフォルツァ公たちが、15世紀の後半ごろに画家たちに描かせたものだそうです。


私が持っているのは『ピアポント・モルガン・ベルガモ版』ですが、他にもいくつかヴァージョンがあるそうで、時の権力者たちが、幾人かの画家にそれぞれ描かせたのだろうと思います。


ピアポント・モルガン・ベルガモ版「恋人」


ピアポント・モルガン・ベルガモ版「節制」


ピアポント・モルガン・ベルガモ版「節制」


キャリー・イェール版「信仰」


キャリー・イェール版「希望」


キャリー・イェール版「慈善」


タロットカードは、中世末期にイタリアで生まれた貴族の遊び道具だったようです。ジュリエットもまた、こういったカードで遊んだりしていたのでしょうか?


中世やルネサンスの頃のイタリア。こういった時代のタロットカードの絵や写本の挿絵などを眺めていると、とてもワクワクしてきます。

そんな時代を舞台にした幼いふたりの純愛、悲恋の物語。

とても、胸に来るお話です。

『ロミオとジュリエット』 フランク・ディックシー


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