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【エイリアン人間】エイリアン:ロムルス 感想【ドントブリーズ】

『ドントブリーズ』(2016年)の監督がエイリアンシリーズのメガホンを撮ると聞いて、こりゃ見に行くしかないでしょ!と週末に見に行ってきました。
吹き替え版、日曜の夕方の回でお客さんは20人ほど、結構入ってる!
意外にも20代あたりの若者が多かったです。
はたして、“モンスター映画の金字塔”の『エイリアン』と、“舐めてた相手が殺人鬼でした映画”の傑作『ドントブリーズ』(以下「ドンブリ」)が掛け合わされた結果、どんな映画になるのか…

オススメ度:★★★★★(星:5)

超面白かったです!間違いなく傑作でした。
棄てられた宇宙船に泥棒に入った若者が1人ずつ殺されていくのはまさに「ドンブリ」的展開、これが見たかった!!最高です!
廃宇宙船のなかで化け物に追われながら探索するのは、ちゃんと恐ろしかったです。(『エイリアン』というより名作ホラーゲーム『Dead Space』(2008年)っぽい)
何よりも冒頭の植民惑星ジャクソンでの劣悪な労働環境、日照時間ゼロの最悪の生活、エイリアン世界のディストピア描写が個人的には最高でした。


ランニングフェイスハガー、ぐったりチェストバスター

私はエイリアンシリーズは『エイリアン』(1979年)、『エイリアン2』(1986年)、『プロメテウス』(2012年)しか見ていないのですが、フェイスハガーってこんなにアグレッシブでしたっけ?
予告でもありましたが、壁をジャンプしたり、床を恐ろしい速さで走ったり泳いだり、超大活躍でした。
とくに燃料の保管されていた部屋から出ようと、ドアの隙間に集まってビチビチしていたのは最高に気持ち悪い(褒め言葉)シーンでした。

あとチェストバスターが思ったよりぐったりしていたのは、監督のアイディアだそうです。
(チェストバスターを見るたびに『スペースボール』を思い出すのは私だけじゃないハズ…)

美術スタッフのインタビューを読むと、フェイスハガーはちゃんと実物を作っていて、実際にフェイスハガーの指を動かしながらラジコン操作で走行するそうです。(パンフレットは今回は大当たりでした、小道具や衣装や特撮の美術スタッフのインタビューがしっかり読めました。おすすめです!)

今回VFXをなるべく使わないようにしていたということで、チェストバスターにもフェイスハガーにも、なんとも言えない愛らしさみたいなものがあってよかったです。

アンドロイドのアンディ

今作の主題となる「アンドロイド×人間」ものは、小説『鋼鉄都市』(1954年)から近年はゲーム『デトロイト ビカム ヒューマン』(2018年)まであり、決して珍しいジャンルではありませんが、それをエイリアンシリーズでやるというのが斬新なように感じました。
私が観てきたエイリアンシリーズでは、アンドロイドはよくて友達、最悪の場合、敵だったので、守るべき家族というのはとても新鮮でした

それからOSのアップデートにより覚醒したアンディのシーンは最高にテンションぶち上げです。「ずっとこうして君の役に立ちたかった」的なセリフを言った時にはもう感涙でした。
とはいえ、当然代償はあり、優秀ゆえに冷酷に人間の命を切り捨てます。
「なんだこの挙動は、プログラムにないぞ」とかいいながドア開けたりはしませんでした。
パニックホラーらしからぬロジカルシンキング、私はすごい好きです。

強い(賢い)主人公

とはいえ、主人公もただただ状況に振り回されるだけではなく、困難に遭うたびに知恵と工夫で切り抜けていく様はよかったです。

部屋の気温を人体と同じにするとか、エイリアンの強酸性の血液が船体に穴を開けないよう無重力にするところとか。
勇気と知恵とユーモアこそが我々人類の武器なのだと感じさせてくれました。

植民惑星ジャクソン

企業に支配されたディストピア世界は、大量生産、大量消費社会にフォーカスが行きがちですが、劣悪な労働環境の植民惑星の労働者の若者たちというテーマはあったようで無かったルックに見えました。
レトロヒューチャー的な近未来デザインも良かったです。
企業の受付の窓口や、鉱山労働者が持つカナリアの入れ物まで、すべて「エイリアンっぽい未来感」で統一されていたのには驚きました。

これだけの予算で、レトロヒューチャーの世界をCGをほとんど使わずセットで映画化できるのはもうエイリアンかブレードランナーくらいなのでは。

過去作ファンへの目配せ

エイリアンは全作見ているわけではないのですが、それでもいくつか元ネタがわかるような目配せ的なオマージュシーンがありました。
主人公が銃の撃ち方を教わるシーンや、ゼノモーフの大群が襲ってくるシーンなど。
なにより『エイリアン』(1979年)に出てきたアンドロイドと同じ型のものが出てくるのは予想外でした。
(確か俳優さんは亡くなられていると聞きましたが、そっくりのパペットを作ってCGで補正して作っていたとは…)
本作の、CGをなるべく使わない特殊効果へのこだわりには恐るべきものがあります。

気になるところ

シンプルに私自身が苦手なジャンルというだけですが、出産などのプロセスにエイリアンが関わってくるのはマジでキモイですね。
「私妊娠しているの」のシーンでぜったいプロメテウスするじゃんと思っていたら、案の定プロメテウス汁(エイリアンから抽出した黒い汁)を注射してて、ダメでした。あのあとキモキモエイリアン人間になるのはマジで無理です。
(とはいえ監督の前作「ドンブリ」でも同じようなことをやっていたので、ブレてないなぁと)

普段あまり映画を見ないパートナーと観に行ったのですが「最後の化け物はどこからきたの?」とのこと。
確かに、プロメテウス汁から生まれた、卵が急速に成長してキモキモエイリアン人間になったというのはちょっと分かりづらかったかもしれません。
赤ちゃんサイズの足跡が徐々に大きくなっていく描写はあれど、暗くて見づらかった上に、足跡を追って行った先には何もおらず、上に戻ったらキモキモエイリアン人間がいたので、繋がりはなかったように見えたかもしれません。

まとめ

何はともあれ、最高に面白かったし、「コレコレぇ、こういうのが観たかったんだよ!」という快感はありました。
もちろん『エイリアン』(1979年)は原点にして頂点。言いたいことがある人がたくさんいるのも分かります。
しかし、これが誰かにとっての初めての『エイリアン』との遭遇になるともうと、それはそれですごく羨ましい。

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