【小説】ダンジョン脱出〜迷宮の罠師〜0日目 Part3 ギルドの策略
0日目 Part3 ギルドの策略
目が覚めると辺りは薄暗く、ジメジメして肌寒い。
トッコトッコと奇妙なリズムで揺れる馬車の荷台に転がされ、仰向けのまま朝も夕も分からない曇り空を見ていた。
視界を動かそうと、首に力を入れるが思うように動けない。
「ぅぅ…ぉん…ぉぉ」
助けてくれ、といったつもりだったけど、猫の寝言のような奇妙な語を発するだけだった。
「目が覚めたかの」
頭上からギルドマスターの声がする。
僕は仰向けで横たわっているので、僕のつむじの先にギルドマスターが座っているのだろう。
「今はミミの魔法によって体が動かせんだろうが、ダンジョンにつく頃にはいつもどおりに戻っているだろうて」
あれは夢じゃなかった。
やっぱりギルドマスターは僕を魔族に売って、ダンジョンのトラップの解錠をやらせるつもりなのか。
「落ち着いてよく聞いてくおくれ。これから重要な話をする」
落ち着くも何も、身体が動かせないので、叫ぶこともできない。
「サキュバスのミミ、それからスケルトンのシャレは、我々冒険者の味方だ」
サキュバス、そうかあの少女はサキュバスだったのか。道理で身体の言うことが聞かないわけだ。
って、
「…ぇ…」
麻痺した身体でもかろうじて声は出た。
あのサキュバスと、スケルトンが味方?
「我々ギルドはあのハイソを出し抜くために、秘密裏にミミと手を組んだのだ。表向きはワシがギルドを裏切るように見せかけて、実のところはミミをギルド側に引き込んだのじゃ」
なんということだ。あの気色悪いイモムシを食わせてきたサキュバスが味方だったってことか。
「魔族は我々が考えるほど、一枚岩ではないのじゃ。暗殺、策略、紛争が絶えぬ。ときに、敵の敵は味方になるのじゃよ」
なるほど…。僕は、淡々と話し続けるギルドマスターの声に耳を傾ける。
「これからロクくんに行ってもらう『戻らずの迷宮』には、伝説の宝剣【シャイニングソード】が封印されておる」
シャイニングソード。
ふうむ。ありがちな宝剣だ。5ダンジョンに1つはある。しかし、腐っても宝剣、威力は間違いない。
その宝剣を巡って、魔族、ときに冒険者同士でも争いが絶えないほど得難いものでもある。
「ハイソにとって自身を封殺できる唯一の宝剣【シャイニングソード】は目障りなものじゃ。冒険者に奪われる前に手に入れて破壊しようと企んでおる」
あのブヨブヨの肉塊のハイソは、危険な芽はあらかじめ摘んでおくってことか。見た目によらず用心深い。
「そこで我々とミミは、ハイソに協力するふりをして【シャイニングソード】を強奪する。それをもって、ハイソを封殺するのが目的じゃ」
ふむ、そこまではよくわかった。冒険者劣勢の今のギルドの考えそうなことだ。
しかし、僕がスケルトンといっしょにダンジョンにぶち込まれる理由がわからない。
「ロクくんには、ダンジョン攻略組が安全に【シャイニングソード】を手に入れるために、ダンジョンのトラップの術式の解読と、解錠方法の調査、攻略の情報を調査してほしいのじゃよ」
ははあ。そういうことか。
通常のダンジョンは、冒険者がダンジョンに入宮すると、ダンジョンに駐在する魔族と、対冒険者用のトラップに知らせが届くように、術式が施されている。
安全にゆっくり攻略するとはいかない。
そこで、魔族に協力させることで、僕をダンジョンの魔族(モンスター)たちに察知されず、じっくりトラップを解読、調査させることができるわけだ。
「ギルドはその極秘任務にキミを選んだのじゃ。働き次第では、攻略組の隊長を任せたいと思っている。…報酬は据え置きじゃがの」
え、今なんて?
「さあ、もう迷宮に着く。後のことはミミがうまくやってくれる。無事を祈っとる」
そう言うと馬車が止まり、僕は体躯の良い魔族(ゴブリン族かな)に担がれてダンジョンの奥に運び込まれた。
※ヘッダー画像はChatGPTで生成しています。
思った絵にならないな〜。