前略、私の人生より
生きる苦しみ、楽しさ、悲しみ。
そんな「人生」を音楽に変えるバンドを知っているだろうか。
私はそんなバンドに、大学の学園祭で出会った。
教室の端に作られたステージ。
カーテンで薄暗く切り取られた空間。
簡易的でありながら眩しく光るライト。
ステージと観客は0距離。
そんなステージで演奏を始めたバンドは、
「Half time Oldです」と名乗った。
「一曲目新曲やります。シューティングスター」
ああ夜の暗闇と絶望に
自分が何者かもわからない日々を生きてきた
「彗星は溶けている様ね」そうだ
冒頭の数秒を聴いただけで、この音楽を好きになるなと直感で分かった。
この日歌われた曲を全ては覚えていないが、
一人で生きていく寂しさを歌った【おひとりさま】、静かな生活を歌う【a.o】の二曲に泣きそうになってしまったあの感覚は、未だに思い出すことができる。
一番心に刺さって離れなかったのは、
【嵐の中で貴方に向けた歌】だ。
夢の無い話はよそう 明日に光を見よう
また深く悩むようなら この場所に来て歌おう
その歌詞を聞いただけで、初めて見たこのバンドの、心の内にまで触れることができたような感覚があった。
家に帰ってからも動画を見続け、お守りのように何度もこの曲を握りしめた。
翌年、大学4年を迎える前の春休み。鶴舞公園で行われるフリーイベントにHalf time Oldが出ることを知った。
就職活動中のスケジュールにねじり込み、スーツ姿で向かった。
半年ぶりの再会。
私が信じたい音楽はこれだと、心の底から確信した。
この日からずっと、私の側にはHalf time Oldの音楽がある。
大きなタイアップが決まった時は、自分ごとのように周りに話したし、
お正月の朝2時に、テレビで音を奏でる4人の姿を見て泣いたことは、絶対ずっと忘れない。
しかし、順調のように見えた活動に,コロナという最大の壁が立ちはだかった。
献身的に行われた配信ライブ。
当たり前なことは何一つなかったことを思い知らされた。
ただそんな中でも、音も歩みも止まることはなかった。
2021年の後半。
ここからHalf time Oldの反撃が始まったと、私は思っている。
2018年にボーカルの大晴さんは、ライブ中のMCで、夢を語ったことがある。
「来年はクアトロツアー、次はZepp。鼻で笑われるかもしれないけど、そんな暇があるなら、曲を作って届け続けます」
この日は、アルバムのリリースツアー。
ホームの名古屋でありながら、ソールドアウトはしなかった。
悔しくも、強く噛み締めながら話したこの夢を、2021年に4人は叶えた。
どんな環境でも、歩みを止めなかったことの答えがここにあった。
そして、2018年に話したMCの中で、更にこう続けた。
「絶望の中に希望を見つけられない奴は馬鹿だよ」
その後歌われたシューティングスター。
どんな環境であっても、絶対歩みを止めないことを誓う歌。
2021年から最近まで、大晴さんはこんなMCを、色んなライブで繰り返すようになった。
「CMのタイアップが決まって、そのあとファンは増えましたか?って何度も聞かれた。
直ぐにコロナでライブが出来なくなったけど、あの時が一番ライブをしたかった。
でも今まで作ってきた曲を振り返ると、絶望の中に希望を見ろと言っていた」
Half time Old自身を救ったのも、またHalf time Oldの音楽だったのだと知ったとき、音楽が持つ力の大きさを思い知らされた。
コロナ禍になって、音楽は不要不急だと言われるようになって、バンドマンやライブハウスが、悪者扱いされてしまうような時期だってあった。
そこにおける今日までの苦労なんて、到底知ることはできない。
ただ、戦い続けてくれたから今があるのは確かで、優しい音楽がここにあることは揺らぐことはない。
Half time Oldはどんな時も全力でステージに立ってきてくれたことを知っている。
4人で全力で演奏し、声の出せない私たちの分まで、4人で大声で歌う。
これからも、色んな景色を見ながら、変わらず「人生」を音楽に変えていくのだろう。
そして時には、沢山の人の人生の一部となっていきながら。
名古屋のロックバンド、Half time Old。
夜明けはきっとすぐそこにあると、願わずにはいられない。
私の人生もこの音楽とともに、巡っていくのだろう。
前略、8月2日より。愛を込めて。