【短編小説】大好きなキミへ
「ゴメンね。もうお別れなんだ」
「え?」
それは、突然のことだった。キミからの、あまり
に急すぎる別れは。僕の頭は、内も外も真っ白に
なった。それでも、僕は分かっていたのかもしれ
ない。
「そっか」
僕の口は、今生の別れとは思えないほど、冷たく
酷な返しだった。もしかしたら、別れだと思いた
くなかったのかもしれない。それでも、キミとの
別れは刻一刻と迫っていた。
「でも、どうして……急に……」
僕が訊いても、キミは黙ったまま、申し訳なさそ
うに震えていた。僕は、これ以上追求はしなかっ
た。何だか、この別れが、キミ自身が、自らの殻
を思いっきり破れるような出来事になると思った
から。
「じゃあ……元気でね」
「……うん」
そういって、キミは、温かいご飯の上へ旅立って
いった。
これにて、僕“白身”と“黄身”との、少し切ない別れ
は終わった。