野菜と花をもっと良くする。~失敗から生まれるアイデア~
今回は農学部生物生産学科の鈴木栄先生にインタビューしました。先生の研究への思いや、園芸学のあれこれについてお聞きしました。ぜひご覧ください!
園芸学との出会い
─では、鈴木先生の研究内容を教えてください。
園芸学を研究しています。園芸学の中で、私が専門にしているのは組織培養や遺伝子組み換えを使って行う品種改良で、植物の材料として一番多いのは花です。
─なぜこの分野で研究をしようと決めたのですか?
昔から、研究とか実験をする職業には就こうと思っていたんです。実家が新潟の兼業農家で、米を作っていたので周りに畑や水田がたくさんあって、小さい時から生き物が好きでした。小学生の時に稲刈りや田植えなどの手伝いをしていたんですけど、小学生ながらにこれは大変だなと思って。中学生の時、遺伝子組み換えで作る青いバラ、カーネーションの研究が紹介されている本を読んだことがきっかけで、遺伝子組み換えなどに興味を持ちました。
実家は米農家でしたが稲を研究する方向には進まず、野菜とか花とかの研究をする方向に進みましたね。工場も実家の周りにあったので工学系も結構好きで。いろいろなことに興味があったんですが、自分の興味が向く方向に進んでいたら園芸学をやっていた、という感じです(笑)
失敗から新たな発見が生まれる
─鈴木先生から見た、園芸学の面白さは何ですか?
今、品種改良をテーマにしていますが、研究をするうえで自分が予想したような結果が出るかどうかはわからない。花や葉の色、見た目などを変化させるということが、予想通りに行くかどうか。行かなかったとしても、うまく行かなかった理由を考えて違う方法がないかなと探るところに面白さがあります。
違う結果が出た時も、それをまたうまく使えるかどうか、そこでいろんなアイデアが出てくるかが難しいところでもあり、面白さでもあります。
─今まで予想通りにいかない研究にはどんなものがありましたか?
遺伝子組み換え植物を管理区域の外部に拡散させないために、植物が枯れるよう緑色の葉を白色にする(葉の中の葉緑素をなくして光合成を行えないようにする)実験をしていた時、緑色と白色がまだらになったものができたんです。
斑入りの葉(緑色と白色がまだらになった葉)って観葉植物によくあるじゃないですか。実験としては失敗したけど、あえて斑入りのものを作るという方向に使えるんじゃないかと思って。失敗から生まれた新たなものってことですね。それも面白さの一つなんです。
園芸学がなくなると我々は困る
─授業を通して学生に感じてほしいことは何ですか?
授業では園芸作物にはいろいろな種類があって、それぞれの作物ごとに形やどこを食べているのかが全く違っているということを学生に知ってもらいたいです。
作物も昔と違って長い時間をかけて品種改良されているっていうところが大きいので。多分、園芸学の授業は一つのきっかけでしかなくて、みんなにそのことを考えてほしいっていうのがあります。品種改良も昔なら美味しさ、大きさとかそこだけを重視していたと思うんですけど、今は環境に対してのこと、病気にならないとか、高温に強いとかに関して改良しないといけない。
─今後園芸学がどのように発展していくとお考えですか?
なかなか難しいですけど、野菜や花は稲とかとは違って主食になるものではない、メインの作物ではあるけれどサブ的な立ち位置にあるもの。花に関しては観賞用、嗜好品なので、なくてもいいんじゃないかみたいな。でも全くなくなるとみんな困ってしまうというところがあって、花も全くなくなるとプレゼントしたり入学式とか卒業式で使ったりできなくなってしまう。
園芸学で扱う作物はそういった意味ではなくならないので、もっといいものを改良して作っていけば、これからこの分野ももっと発展していくんじゃないかと思っています。花は服みたいに時代で流行が変わっていくから、時代に合わせて品種改良の目標も変わっていくかもしれない。
─花の品種改良について教えてください。
花は、誰かがこれは価値がありますよ、って決めたことによって高値で取引されているけど、みんなが興味を持たなかったら、売れない。さっき言った流行みたいな感じで、我々の花の好みの価値観は作られているのかもしれない。花がきれいだっていうのも、もしかしたら刷り込みかもしれない(笑)
本能的なところもあるのかもしれないけど、そこは難しいよね。嗜好性が強いから。食べ物はさ、食べておいしい、っていうのがあるけど、花は観賞用だから、個人の好みがより強く出る。そういう観点では、花の品種がたくさんあるのはそのせいです。マニアの人は結構いますから。
高校生へのメッセージ
─最後に、高校生へのメッセージをお願いします。
私も大学時代、入学したときには園芸っていう分野に絞ってはいなかったです。漠然と農業系、生物系っていうのはあったんですけど。大学で授業を受けていく間に、こういう分野がいいかなって。
私は実家の環境が大きく影響していると思うけど、身の回りに興味の向くものがあれば、なんでもそれを深堀りするとか、調べてみるとか。農学に限らず、いろんな分野に興味を持ってみてください。
─本日はありがとうございました!
文章・インタビュアー:農学部生物生産学科1年 くに
インタビュー日時: 2024年8月27日
※インタビューは感染症に配慮して行っております。