シスレーの小径

シスレーの小径を、見つけた。

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淡い光が砂のようにサラサラ降りそそぐ昼下り、まさに彼の風景画を思わせた。

アルフレッド・シスレーは印象派の画家であり、生涯「印象派」であり続けたと評される。確かにモネやルノワールのように作風を大きく変えることもなく、光と色にあふれるフランスの風景をただただ追い求めた人だ。

特にシスレーの光は、あっけらかんとしていて、モネのような執拗さも、ルノワールのような重さもない。そんな、ややもすれば淡泊な光で描かれる景色はしかし、ありえないほどの輝度をほこる。弾けるような水色の川は、鏡かとつっこみたくなるほど岸辺の木立や雲を映し、ぶ厚い雪を描いても、曇天にその純白さが際立ち、むしろ爽やかさすらある。

そんな明るい明るい画面からは幸せがにじみ出ていて、なんだか泣けてくるし、笑えてくるし、ああそうだった、世界はこんなにも美しかった、なんで忘れていたんだろうって、ほだされてしまう。悩みや自分がちいちゃく見えてきて、思考が一気に開放される。星空を見上げて宇宙の壮大さにふと気づく、あの感覚と似ている。

もちろんこの小径にそこまではないかもしれないけれど、でも、柔らかな光と締めつけられるような多幸感がある。

ここは、シスレーの小径だ。

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