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「搾精病棟」の面白さ、売れる理由とは

皆さんは「搾精病棟」という、成人向けCG集をご存じだろうか?

少し前に「成人向け」だけど違う方面でも色々と話題になっていた。また最近では作者が原作をしている作品がWeb上ではあるが連載になって、新作がアップされる度になぜか、別の作品名でトレンド入りするなど、一般の方でも耳にしているかも知れない。

また、本来の「成人向け」の方面でも(エロ)アニメ、(アダルト)ゲーム化、(AV)実写化などと多方面にメディア展開をしている。
それほどまでに「成人向け」でありながら、ビックコンテンツへと成長しているのが「搾精病棟」である。

先も語ったが、これは成人向けCG集、つまり同人作品であり商業作品ではない。もっと言えば、CG集だけに本来はストーリーだって別段必要としない媒体である。それが話を求めるメディアで展開するのも、他では本来あり得ないこと。
(ストーリーに関しては後で語るが、この作品でのキモはCG集で有りながらストーリーにある)

そんな作品がここまで成長している理由は、あまり語られていないのが勿体ない。確かに「成人向け」であることが、それを阻害している側面もあるにせよ。

そして、近年の「成人向け」コンテンツは同人作品であっても、メディア展開が可能となっている。それは今後コンテンツを作り出す側にとっても参考になる部分と思っている。

今回は出来るだけ「成人向け」という要素を省きつつ、この作品の面白さ、売れる理由を語っていきたい。むしろ、この作品でのエロさは語りにくい点もあるのだが。

■前置き

まず、「搾精病棟」という原点である成人向けCG集ではあるのだが、現在はその配信が終了している。
これは3Dアプリで髪型をトレスして描かれていたことが規約違反に引っかかってのことらしい。今は髪型を修正して、再版に向けて動いているとのこと。

だが、再販を前にメディア展開の方が先行しているだけに、原作不明の状態とも言える。

それでもノベライズ版はその点を修正されて、イラスト、文章の全てが原作者の手によって作られている。

現時点では、「搾精病棟」を語る上でこれが原作となっていくだろう。それでも、この本の表紙からは原作のノベライズと示されているのだが。

また、この本は美少女文庫から出ているため、成人でなくても買える。

まあ、この事で本記事が「成人向け」ではない根拠とはしたいのだが、前回も美少女文庫の作品を扱って18才以上向けの記事とされているのだが…

■「搾精病棟」の面白さは証明されている

この作品を知っていても、成人向けCG集だけに触れてない人の方が多いだろう。そして、作品を細かく語るにしても、「成人向け」という点が障害になってしまう。

だから、この作品の面白さに関して、結論を先に語ってしまうと、王道的な少年漫画の作り点があげられる。

しかしながら、「搾精病棟」、正式名称は『搾精病棟~性格最悪のナースしかいない病院で射精管理生活~』というタイトルが示す通り、様々な性格最悪のナース達に搾精されるCG集である。性的ジャンルもM男マゾ向けである。
そんなエロとしても大多数派でないジャンルが、王道的な少年漫画だと言われても、触れてない人には信じられない話だろう。

しかし、事実である。

では、その証拠は見せろといわれても、「成人向け」のコンテンツをそのまま載せるわけにも行かない。だから、別の点から語ることにしよう。

この作者が原作を務める、「全年齢向け」漫画作品『淫獄団地』である。タイトルからしてヤバイが、建前上「全年齢向け」作品とされている。

この作品を読んで貰えれば、王道的な少年漫画の作りの片鱗が分かって頂けるだろう。それでも抵抗があって読めない人であっても、この事から簡単に説明をすることが出来る。

この作品が連載しているのは『ドラドラしゃーぷ#』というWeb上ではあるが、大手出版社から出されている作品である。この事からも、単に「成人向け」のコンテンツでの有名人をただ、起用していることは分かるだろう。

それだけ漫画原作としての腕を買われての新連載なのが、この点からも読み取れる。そして、建前上であっても「全年齢向け」な点も、「搾精病棟」の王道的な少年漫画の作りが実際の「全年齢向け」漫画でも通用することを物語っている証明でもある。

■「搾精病棟」が売れる理由とは…

その面白さは大手出版社も認めているが、その以上に商品価値があることも認めている。売れない物を世に出すことは、今の時代は特にないからだ。

また、「搾精病棟」自体でも成人向けアニメ制作会社が商業価値のある事に気づいており、CG集が配信停止した際にはその修正作業を申し出ていた。
それは単純に、権利を得ようとして動いたのだろう。
その修正作業の件がどうなったかは分からないが、結果としてはその会社がアニメを作ることになっている。

アニメの他にもゲーム、実写化などと媒体、恐らく会社も違うのにメディア展開しているのは、このコンテンツがそれだけ売れると分かっているからこその行動である。

いくら面白いといっても、それだけで商業的価値は決まるわけではない。SNSで話題沸騰した漫画などとて、商業で出したら大失敗というケースはよくある事である。

また、本来は「成人向け」という市場としても狭い所だ。そして、性的ジャンルもM男マゾ向けと多数派でもない。本来は売れないと見なされても、おかしくないのが、この作品である。

なぜ、ここまで売れると認められているのか?その理由とは何か?

これは私も確かな事は言えない。それでも他の点と比べて、それを考えていきたいとは思う。

1.(エロ)市場は意外に大きい
前に「成人向け」という市場としても狭い所とは語ったが、Hな作品は意外にも電子書籍だと売れている事実がある。

この点は同人作家のクリムゾンも自身、また他の配信内でも語っている。そして、クリムゾン作品は電子に関しては、女性の売れ行きが良いとも語っている。

また、先にニュース記事で出した『ガイシューイッショク!』もそうである様に漫画家、春輝もダウンロード販売が日本一を誇るとのこと。
この流れで分かる様に氏の作品もエロさを売りにしたモノである。

「成人向け」まで行かないまでも、Hな作品は我々が知らないだけで、隠れた需要が大きい様である。それも電子書籍などにおいては、特に。

これが「搾精病棟」が売れる理由の一つではないかと考えている。

確かに成年だけに金銭的余裕は、学生らと比べるまでもない点である。市場としての人の多さも大事ではあるが、確実に買ってくれる層も多い事もまた大事である。

そもそも、原作である成人向けCG集も確かな売り上げを見せている。その売り上げは販売数から数千万規模とも言われていた。数字としての実績も原作時点で証明されていた。

2.変わり種であっても王道展開
『鬼滅の刃』の面白さだけでなく、売れている理由も多くの人で語られている。それらに共通しているのは従来の王道展開であっても、今の流れが自然に組み込まれているという部分をよく目にする。

変わり種に見えても、本質的は王道展開だから読者としても安心して読むことが出来る。案外、人というのは変わったモノを求めながら、最終的には定番に行き着くモノ。

この点は作者が別作品で漫画原作としての腕を買われるほどに、「搾精病棟」はストーリーに優れている。いや、CG集であってもなのだ。

そもそも、原作時点で売れている要因は性的なジャンルが少数派でマゾ向けだからではないだろう。多くの人を引きつけるだけの要素を他に持っているからだ。

それこそが王道展開ではないだろうか。だからこそ、性的なジャンルよりもストーリーの話題性で盛り上がり、「成人向け」という点を気にせず原作CG集時点で多くの人が手に取って売り上げという実績となっていた。
そうでもなければ、異例な数字にはならない。

売れるという事は大多数が手に取ることである。その王道の安定感が企業からも商品価値としても評価されているのではないだろうか。

3.下手でも作者の書きたいモノが明白だった
『進撃の巨人』も初期は絵が下手とされていた。異論はあるかも知れないが、連載で成長した今でも美麗な絵まで成長した訳ではない。絵のうまさだけなら、いくらでも上がいる。
しかし、それが漫画の面白さ、売れることとは関係が無いことは我々も知るところである。絵が上手くとも、売れてないケースもありふれている。

この「搾精病棟」も絵が上手い部類ではない。むしろ、下手の部類だ。本来、イラストを売るCG集であってもだ。

それに配信停止になった理由でも、髪型のトレスをしていたように作者の作風は3Dモデルで構図を決めてトレスして描いているようだ。
トレスの是非はともかくとしても、その程度の絵のレベルでも売れることに対して阻害はなかったのだ。それが「成人向け」という用途であってもだ。

昨今では絵が綺麗なことは漫画においても、イラストにおいても当たり前とされるが、その一方で絵が下手が許されるケースとは一体何だろう?

その理由は簡単である。作り手の熱意を感じる場合だ。

どんなに下手でも、一生懸命さ、熱意があって、読みにくくなければ大きな減点にはならない。よく「搾精病棟」と似たタイトルで出てくるのが『ボボボーボ・ボーボボ』がある。これとて絵の下手さであるが、逆に作品の持ち味となっている。
そして、「ボボボーボ」はアニメ化、今日までも語り継がれるほどに商業的に成功かはハッキリと分からないが、失敗ではないことは言える。

これらの例からも企業側も絵のうまさより、熱意といった点が強ければ売れると判断していると見て取れる。

下手なテンプレで作られたモノは、コンテンツの消耗品でしかない。
これらが溢れた今ではある意味では、不自然に入れられた売れる要素、イケメン、萌えなどの添加物は含まれず、好きなモノという天然素材で作られた作品とも言えるのかも知れない。ただ、天然素材だけに下手さといった、苦みなどはあるかもしれない。

簡単に言えば「養殖と天然」の差だろうか。

ともかく、「搾精病棟」は絵の下手さと売れることとは無縁である事は証明されている。それでも売れると判断されているのは、作りたいモノを作っていると受け手が感じ取っているからと考えても、間違ってないとは思う。

余談
過去の記事でも触れた点なのだが、とある原作のコミカライズに対して、漫画家とは別にネーム構成者いる作品があることにびっくりした。
原作という話があるのに、更に漫画を構成する構図、ネームまで他人。つまりはこの漫画家の作業は指示された絵を描いているだけとなる。

ただ、実際はどうかは分からないし、この作品に限らずこういったケースは珍しくもない。そもそも、漫画家とてアシスタントの分業でもある、否定的に語る点ではない。

それでも、これでは漫画家は絵を描いているだけと、いわれても仕方がない。

しかし、先に例を出した『進撃の巨人』、『ボボボーボ・ボーボボ』はその逆である。漫画という絵物語を書きたいと、絵のうまさを後回しにしてデビューしてきた人達だ。

絵は描けてもネーム原作が必要な『漫画を描けない漫画家』が跋扈する中で、絵が下手であろうと自分が描きたい物を形に出来る『漫画が描ける漫画家』はある意味では今の時代、必要とされているのかも知れない。

それらの点については、こちらで書いています。

■「搾精病棟」の先にあるモノとは

「搾精病棟」は売れる作品としても評価されている。これは多くのメディア展開がされていることで証明されている事実。

今回、私が語った事が合っているかは別にしても、結論だけは間違ってない。「搾精病棟」は面白い、売れている。
そもそも、『鬼滅の刃』の面白さ、売れている理由は語り尽くされているといってもいいぐらいなのに、その図式を使ったポスト『鬼滅の刃』はまだ出てきていない。
仮に『呪術廻戦』を第2の存在としても、これは同じ出版社から出ているだけにまだ売れる図式を分かっているとも言える。

それほどまでに売れる作品とは、意図できない部分が多すぎるモノである。

そんな中で「搾精病棟」は企業がビジネスとして作り出した作品ではない。個人で作りだしたモノである。それが「成人向け」という枠ではあるが、一大ムーブメントになっている。
好きなモノを作っていたら、売れると評価されていたわけでもある。それでも成人向けCG集という商品として出しているので、完全に趣味という話でもない。

さて、そんな作品を見て、他のクリエイターはどう考えるべきなのか。
「搾精病棟」の先にあるモノとは、作り手にとっては売れた作品に対して指をくわえて見ているだけではいかない。受け手であれば、それで十分かも知れない。
だが、受け手とて面白い作品を求めている。絵が下手であっても気にしないほどに。

この先にあるモノとは、面白さ、売れることの分析も大事ではあるが、まず、それを超えようとする意思がなければ始まらない。
今の時代、誰もが一国の元首の様に全世界へ発信する事が出来る。そういった時代に置いて、今まで通りの常識は通用しないモノになっている。

そんな時代の先駆者、「搾精病棟」。そんな風にこの作品を見るのも、ある意味では大事だとは思う。ただ、「成年向け」だし、方向性が近く、シェアの多さでも素直に『鬼滅の刃』からそういった点を学んだ方がいいのだろうが…

まあ、好きな作品を語りたかったということで。

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