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漫画打ち切りボーダーの部数をばらした記事を読んで思ったこと
■今回、『KILLING ME / KILLING YOU』の「セルフPV制作」を話題にして語ろうと思っていたのですが、それよりも衝撃的というか、打ち切りに関する詳細な記事が出てきたので、こちらをメインに語りたいと思います。
さて、語る内容はおおよそ同じため、まず『KILLING ME / KILLING YOU』の「セルフPV制作」に関して先に語っておくと、打ち切り回避のために作者自身でPVを作った話である。
ある種、美談のような記事だが、これは出版社が出している出版物なのに作者自身が宣伝しないといけないある種、ブラック企業ぶりを披露した記事と見ることもできる。
そんな皮肉混じりな例えでなくとも、売れてない作品に宣伝費は出せないという、今の出版社の台所事情は明らかにはしている記事である。
これは何もこの作品に限った話でもないのだが。
そんな記事内には打ち切り回避のボーダーに関して描かれている。
ただし「今から2巻が1000冊売れてくれれば既定路線の5巻で終われる可能性がある」とも説明しており(※紙版・電子版どちらでもOK)、ただただ「物語を最後まで描ききりたい」という一心から、今回の「セルフPV制作」に踏み切ったそうです。
『鬼滅の刃』の部数を基準で考えれば、たった1000冊程度だけの話と感じてしまう。ただ、これに関しては次の記事を元に語っていきたいと思います。
---追記(2021/4/4)---
『KILLING ME / KILLING YOU』に関しては作者からその結果に関してTweetされていたので、掲載をしておきます。
キリングミーキリングユーは自作PV作ってねとらぼに取り上げてもらってから電子書籍の売上が2倍になったし想定した巻数で完結できそうだよ みんな読んでくれてありがとうね https://t.co/8AFGHLxTPU
— 成田芋虫/Killing3巻発売中だよ (@Immortal1664) April 3, 2021
電子書籍の売上が2倍になったし想定した巻数で完結できそうだよ
ただ、売上が2倍とはいえ、完結は確定ではないような書き方だけにボーダーであった1000冊程度の売り上げ話だったのかも知れない。それでも打ち切り回避の行動としては実を結んだのは間違いない。
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■自分が『KILLING ME / KILLING YOU』よりも衝撃を受けたのは記事が『北条うららの恋愛小説お書きなさい!』の原作者が描かれた、こちらの記事である。
こちらも漫画単行本が売れてないことを語っているが、より具体的な数字が書かれている。
20日に担当さんからこんなメールが来ました。"コミックスが発売してから2週間以上が経ちまして、色々数字が見えてきたのでご報告なのですが、正直申し上げてかなり厳しい状況となっております。具体的な数字で申しますと、約1300部の売上となっております。"
こちらも1000冊程度という数が出てくる。
CDに関しても初週で数千枚売れればいいとされる時代。それは無名なアーティストに限った話でなく、音楽チャートのランキングに載るCDでもこの程度である。
人気連載漫画以外であれば本であっても、この部数は大差はないだろう。
『北条うららの恋愛小説お書きなさい!』が約1300部の売り上げであっても不思議な話ではない。
しかし、漫画は万部単位で売れていることが話題になるだけに、売れない方の部数、売り上げは読者にはあまり見えない話だけにびっくりする話である。
先ほども『鬼滅の刃』という話を出したが、こちらの部数は右肩上がりで現時点での19巻発売時点で累計4000万部突破だが、これもすぐに100万単位で更新されるほどの現在も人気である。恐らく、あと何巻続くかにもよるが(現状の人気でも容易に終わらすこともないだろうし)、最終的には1億は容易に突破するであろう。
一般的な漫画の部数の常識として万単位で刻むからこそ、1000部などもはや個人出版の規模である。また、1巻で100万部以上の作品と1000部の作品と比較しても、千倍の差もあっては1000部しか売れてないことは現実味がない。
だからこそ、この記事には衝撃的すぎた。
■よく、1万部売れたら印税が参考に出されることがある。定価や印税の違いもあるが、約100万円という一般的らしい。その十分の一である1000部では10万円になる。
むしろ、作者でもやりきれない収益である。
ただ、出版社にしても定価1000円であれば1000部では売り上げは100万円。しかし、紙の本を作るコストは当然出てくるので原材料、印刷代、校正を始めとするデザイン料、原稿料などの制作費、そこに関わる人件費を考えれば1000部100万円程度は出版社にとっても赤字なはずである。
その上、宣伝費などこの売り上げの中では出てくることもない。
このような出版物では出版社は慈善事業でないので、打ち切りにしない方がおかしい。
そこも踏まえればはっきり言えば、今漫画家以上に出版社も立ちまりが出来ていない状況だろう。まあ、今まで通りの売り方をしていればですが。
そこを見ても、出版社は別のコンテンツ事業に新規で移っている印象もある。
■1000部などもはや個人出版の規模といったが、数千部程度では電子書籍や同人誌でも売り切るのに難しいレベルでもない。しかも、電子書籍や同人誌で販売した方が印税という面では明らかに収益性は上である。
原稿料にしてもマンガではページ数万円からいうが、同人誌なら数百ページで作成した上で展開する必要もないから、原稿料も頼りにする必要も無い。
こちらに関しては先日の記事内でも触れた話ですが、今の時代は出版社に頼るメリットは薄いとエロ漫画雑誌が語っている。
そんな前置きで恐縮ですがLO編集部は漫画家さんを常に募集してます。こないだからメールとかDMでも応募できるように(今更ですが)なりました。漫画を描いて少し幸せになれる「かもしれない」のでお気軽に漫画持ち込んでください🙇♀️ pic.twitter.com/Sl0F9MJPlV
— LO編集長 (@COMICLOchiefedW) March 5, 2020
それに加えて1000部しか売れてない事実は、この内容を裏付ける根拠ともなる。その上、宣伝も自身でしなければならないのであれば出版社のメリットは本当に無くなる。
それに今の時代、電子書籍や紙であってもデータであっても同人販売経路は確立しているため、個人で出すデメリットは少ない。
もはや、出版社経由で作品を出すこと自体がデメリットでしかなくなっている。
■自分は読んでないのだが、概要だけで話せば『クリエイターとして食べていくためには、1000人の本当のファンがいればいい』というKevin Kelly氏の『1,000 True Fans』がある。
商業でも1000部も売れるだけの技量があれば、クリエイターとして独立した方がいいのかも知れない。
それに先にも語った様に個人でも収益的にも、流通的にもそれが可能となっている。その上で「1000人の本当のファン」がいれば完全に支えることが出来る。
実際、YouTuberも含めてもそうだが、特にバーチャルYouTuberは本当のファンで支えられている成功例だろう。
そして、出版社に話を戻せば「1000人の本当のファン」がいる作品は今ネット上に溢れている。小説であれば小説投稿サイトのランキングに載る作品であり、漫画であればTwitter上でバズった漫画であろう。
そこに出版社が目を付けないはずがない。
つまり、普通の商業作品で当たりが分からず、手間をかけて作っても1000部止まりの作品よりも「1000人の本当のファン」がいるネットで完成された作品の方がコストからも考えても得なのだろう。
■ともあれ、打ち切りボーダーの部数を見て思ったことをだらだらと書いてきたが、今後のクリエイターのあり方は完全に今まで通りでは無理であるのは明らかである。
■追記(2020/5/1)
記事に続きが出ていたので、こちらも読んでの追記。
やはり、衝撃的な部数を話題に出しても大きな効果は無かったようである。部数に関しても明確な数字で出ている。
しかし、部数が劇的に伸びないのは当然だろう。何しろ、語っている内容は部数であり、作品の面白さではないから。この記事では打ち切りのボーダーが目玉である以上、興味を持つ人にとって作品は二の次になってしまう。自分もそうである。
売れてない作品ですから明言しているのに手に取る人は、この景気の中では真のファンしか無理である。
先の発言で毒のあるような言葉と感じてしまっては申し訳ないが、どうしてもお金の関わる話題である以上、ただ買ってというのは無理な相談。
宣伝であれば、買って得をすることを提示しないと手に取ることはない。
しかしながら、漫画は無料でもありふれた娯楽。それに対してお金を出して買って下さいという宣伝は、専門的な知識を持っていても難しいことだと思う。
今、漫画に関わる人にとって面白い作品作りはそういったお金を出してでも買わせる魅力の付与も考えないといけないのは明白なのだろうが。
■追記(2020/5/17)
この配信内の50分頃から作家で漫画家である田中ドリル氏が部数のボーダーに関しては語られており、1、2週間で3、4千部で重版がかかると言っていた。
そのため、ファンとして数冊買いも効果がある事が語られていた。
こちらに関しても作家自らが読者と一緒になって、現状を発信している点でも興味深い配信であった。
それにこの配信を含めて販売促進にも繋がる点もあった様である。この配信後にAmazonで購入しようとしたら売り切れとなっていたからだ。
また、この配信者はラノベのレビューで知名度を上げて、その動画内容から作家からの信頼も得ている。ただ、扱う内容から不信感も多少なりともあるのだが。
ただ、ラノベに置いてはチャンネル登録者数的にもインフルエンサーといってもいい存在となっている。
上記の部数と配信を含めると、下手に個人でブログ等で発信するよりもインフルエンサーと手を結ぶ方が明らかに有効な手というのも明確である。
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