見出し画像

ライトノベル業界から離れた者達 ~数年前から始まっていた変化

書くネタ自体は尽きないのだが、そのことを頭の中でまとめていると結論は他記事と似たり寄ったりとなってしまう。それなら書く必要も無いとかと別の作業に没頭してしまう。

それでも今回は以前と同じ話題を扱うため、結論は同じになることはわかりきっている。

だけど、この話題に触れることで補強、そして、時代が明らかに変わっていると、この内容を見た時、衝撃的に思って書き出している。

それでも私個人で結論を出せる話でもない。今後、様子を見ていく部分もある。

そして、この内容は皆が議論すべき点でもある。それだけに読んでいただいた方にも考える切っ掛けになれば、筆者としては一番の幸せであります。


■あるラノベ作家の引退発言から

今回まず語るのは、「小説家になろう」のユーザーの活動報告からの話となります。とはいえ、なろう系とはいえ、商業作家として名を知れた人物。その人物がしばらく新刊や活動もないことに関して説明がされている。

4年振りの活動報告の更新。柑橘ゆすらは作家業を引退している。

この内容、ほとんど過去に「打ち切り」を巡る騒動で書いたこととほぼ同じである。こちらはもう掲載してない点、また当時から「打ち切り」に注目され違った受け方で話題になっていた。
ただ、こちらは淡々と書かれているのでわかりやすい内容である。

事実、このようなことが書かれている。

この4年間、別に何もしていなかったというわけではありません。

ライトノベルからは、遠い分野にはなるのですが、別名義で、執筆の仕事は相変わらず続けています。

これを書かれた柑橘ゆすら氏はライトノベルは4年間、新刊を出していないがら執筆活動していることが書かれている。それだけにライトノベル業界から離れ、方向転換をすでに行っていたことになる。

続く言葉で個人的に会社を興している書かれているが、それが執筆業であるのか、それ以外かは明白に読み取れない。それを一旦抜きにしても、ライトノベル業界よりも別での執筆が収益性があることは読み取れる。

売上部数が150万部超えている作家ですら、あくまで収益面ではライトノベル業界では「勝率が低い状態」と感じていたのだろう。

それでも、この話のまとめは数年先になるかも知れないが新作は出したいとの話。であるから、ファンの人には前半は読み飛ばして新作を期待して待っていて欲しいというのが、伝えたい内容でしかない。

私のように邪推して考えるのは、そもそも間違っている。

だが、以前語った『運命の人は、嫁の妹でした。』の打ち切り、この後の実例から見ていくと、柑橘ゆすら氏の発言はそれら裏付けることにはなってくる。

その前にこの話には別の内容で注目したい点がある。

柑橘ゆすらは今年で作家デビュー12年目になりました!!!!

振り返ってみると、ボクは、この4年間、新作というものを1本も書いていなかったことになります。

「12年-4年」、つまり、約8年間。これは私が以前から語ってきた部分とリンクするのである。

■ライトノベル10年周期説は正しいのか

数年前から、私はライトノベルの流れが大きく変わると語ってきた。

その根拠は年表的にほぼ10年周期で新しいコンセプトのレーベルが立ち上がっていることにある。これを「ライトノベル10年周期説」と私は語っていた。

ただ、あくまで年表からライトノベル10年周期で入れ替わっている事実に注目していただけ。その上で、私は次に来るモノを予測していた。

しかし、なぜ10年周期で大きく変わるのかということは全く考えてこなかった。これで説としては弱すぎる。

月刊コロコロコミックは小学生が読むための漫画雑誌として創刊された。それだけに読者は一定の年数で入れ替わることになる。その結果、作品も併せて入れ替えのサイクルを行っていると聞いたことがある。

「ライトノベル10年周期説」の原因はコロコロコミック同様、10年周期で読者の入れ替えではないか?そもそも、ライトノベルのターゲット層を10代から20代の若年層とされている。最近ではそれも崩壊している部分もあるが、それでも年代の入れ替わりで、10年周期は理にかなっている。

先にも述べたように、10年周期は柑橘ゆすら氏の発言ともリンクする。そもそも、なろう系が商業化されてきたのが2012年以降であり、その10年後とは2022年である。
そもそも、柑橘ゆすら氏はその前にライトノベルの新刊を出してないと述べている。

作家の方向転換もあるにせよ、市場のターゲット層と自身のジャンルがズレてきていると思った節もあるのではないか?

■ライトノベル業界から離れた者達

昨年では弓弦イズル氏が自信の代表作『IS〈インフィニット・ストラトス〉』の新刊を出さない理由を「金にならないからやらない」と発言したこともある。
一応、番外編としてネットに公開した上でだ。

ただ、氏に関しては元々の素行の悪さもあって、変に話題になった部分もある。それでも今、新刊を出しても内容にかかわらずライトノベルが売れないというのは内心、誰もが思っていたことではないだろうか?

その上で弓弦イズル氏は新たな道に進むことを決意もされていた。これも昨年の話である。

さて、もう一つ話題を出せば昨年、サービスが開始された「学園アイドルマスター」。これのおかげで開発元の純利益が異次元の増加をするほどの好調ぶり。

そんなシナリオに関わっているのが伏見つかさ氏、志瑞祐氏などのライトノベル作家である。

10年周期で読者が入れ替わったのなら、その業界から去った読者は何処に行くのか?そして、作者というか執筆業を生業とする者は何処へ行くのか?

先にも書いたが、柑橘ゆすら氏にしてもライトノベルとは別の分野で執筆を続けられている。以前触れた逢縁奇演氏、また、桜目禅斗氏も打ち切り後にライトノベルからの転向を図っている。

少し話は変わるが『爆れつハンター』がテレビ放送から30周年ということで、YouTube期間限定公開など当時のコンテンツが配信されていた。

この原作者は90年代のライトノベルを含めてアニメ作品を牽引したあかほりさとる氏。そんな氏は近年も漫画原作等を行っているが、作風もあるとはいえ、今はライトノベルをターゲットとした年齢層ではない。

このことからも、「ライトノベル10年周期説」はあながち間違ってないと言えるだろう。

だが、このような例で出すとライトノベル業界への人材の流失の方が問題ではないのか。

■変革する中でも、しがみつく者

変わりゆく時代の中で変化できない人間はいるというか、本来それが普通だと思う。

蒸気機関の発明で迎えた産業革命にしても、労働者は自身の働き口を減らされたくないあまり蒸気機関を壊したと歴史に示されている。

近年のAIに置いても、良い意味でも悪い意味でも「ラッダイト」といった流れである。それを抜きにしても生物の本能でも、現状維持に努めようとする傾向はある

話は壮大となってきたが、単に大きく変わるライトノベル業界の中でも、現状維持に務める者がいるのも当然と語りたいだけ。

二丸修一氏の発言は散々こすってきたので、今更扱うのも申し訳ないとは思う部分はある。それでもこの発言一つとっても、他の方と違って変化に対応し切れてないのが目立ってしまう。

それは他者のライトノベルの推薦文に「古き自由なライトノベル時代」と賞賛している時点でも感じられる。

ただ、二丸修一氏が時代の変化に対応しきれないのは、先ほどのXでの投稿からなんとなく感じ取れる部分がある。

過去に私は、『タイムパラドクスゴーストライター』の主題をこれではないかと語っている。

そう、この作品は漫画家を目指す者達、もしくは漫画家になれなかった者達への慰めなのではないか。

時代の変化に対応することは自分が得た過去の栄光を否定し、捨てることでしかない。それは『タイムパラドクスゴーストライター』の主人公とて本来、それが求められていた。

一応、ネタバレとはなるが主人公は創作への熱を取り戻し、過去の贖罪を果たして、物語のハッピーエンドを迎えることになる。それは増長させていた空虚な自身を捨てた瞬間でもあった。

それだけに、二丸修一氏からは佐々木哲平と同じ影を感じてしまう。

もっとも私の別名義の方で、『デトロイト・メタル・シティ』でも同様なシーンがあったとは指摘もしていたのだが。

この『デトロイト・メタル・シティ』もネットの反応で知ったのだが、度々“お遊戯”という言葉は主人公の脳内が曲解され登場している。それだけに単に才能が無いから“馬鹿”にしているのではなく、本当に“お遊戯”であることが作中でも示されていた。

自分はそこまで読み取れず、単に作品上ヘイト管理上の発言でしかないと感じていた。これは他の人もそう感じていた人は多かったが。

これもまた時代の変化に対応しきれなかった者の末路だろう。

だが、変化を拒み、自らの信念を曲げないと語るのであれば、同じ行為でも全く違って見える。「古き自由なライトノベル時代」を続ける作家も当然いるだろう。

ただ、最初に紹介した柑橘ゆすら氏の投稿にしても、別名義で仕事をしていると書かれていた。それは過去の実績を出すことが出来ないことを示していると言えるだろう。

もっとも、今の実績として、今の仕事を書き出していない点もまた考えるべき所かも知れない。

■「ライトノベル業界の崩壊」は近いのか?

以前書いた『「打ち切り」ではなく、作家のネームバリューが上がる可能性というお話』の最後は、「ライトノベル業界の崩壊」があり得るかも知れないといった感じでしめた。

これに関しても、ライトノベル文芸誌「ドラゴンマガジン」を休刊し、レコメンドサービスへ移行する点からもにじみ出ている。

今の時代だから紙の本が売れていないと言うことよりも、多くのアニメ化IP、新規IPを出して、今なお掲載している媒体ということに注目したい。こんな雑誌はそうそうない。

だが、メディア展開の一次コンテンツが休刊になるのだから、その次、アニメ化等もダメだったと言えないだろうか。

実際、「スパイ教室」のアニメを見れば分かるけど、似たジャンルの「SPY×FAMILY」と比較しても、かなり頭の悪い作品。しかも、入れ替わるようにこの2作品はアニメ放送されていた。
リアルタイムでアニメを視聴する人間には比較するなと言うのが、無理な具合のタイミングであった。

ただ、頭の悪さというのはラノベターゲットに向けたデチューンした結果だと私は考えている。
それはファンタジア大賞の大賞受賞作、つまり審査員が審査しながらも、中身を変え、全面改稿された経緯を持つ点からも、私はそう考えている。

だが、アニメは多くの層が見る媒体。一般作品をデチューンするなど何の効果も無く、頭の悪い作品だとバカにされるだけである。

その結果が円盤販売数が二桁という事実。これではファンすらも買ってない証明になってしまった。

中身だけでなく、数字だけでも駄目さを披露したアニメ作品を見て、一次コンテンツである「ドラゴンマガジン」に誰が行くのか?

また文芸誌から、レコメンドサービス、おすすめ情報を提供するサービスへの移行を見ても明らか。新規層よりも既存層に向けたサービスにシフトするのだから。

先に語った、「ライトノベル10年周期説」。これらの対応からも新規層よりも既存読者の卒業を引き延ばしたり、ラノベ卒業のOBを呼び込む取り込もうとしているような部分が見て取れる。

それだけに、今後どうなるかは静観して確かめる以外、個人が取れる方法はない。個人が作品を宣伝するにしても、今後はレコメンドサービスがやってくれる話だし。

■まとめ

さて、文章コンテンツはライトノベルだけでなく、ゲームが担っている部分も目立ち始めている。それは作家の転向先からも見て取れる。
そして、それらは二次創作を推奨することで、大きなコミュニティを作り出している。それは絵だけでなく文章にも及ぶ。

『最後にして最初のアイドル』にしても、元々は二次創作である。

そういった受け入れ先が出来上がっている中で、ライトノベル業界はどうなるのか?いや、すでに転向が作家、読者の中で明白に見え始めている。

「学園アイドルマスター」の収益からも、シェアの大きさがうかがい知れる。

さて、今回は作家の発言からそういった側面を読み取っている点は、ある種、申し訳ないと思う部分はある。公での発言ならともかく、個人SNSを多用するのは特に。

それでも、業界にいる人の肌感覚がにじみ出ている文章は証言として見るには一級の資料である。そして、それを現実と照らし合わせて、誤差がなければ語りたくもなる。それも課題、問題点を含む話であれば、なおさら。

そして、こう書き出してきた私でも、では今後どうなるか見ていくことしか出来ない。それでも皆様からコメントでご意見、ご感想、ご指摘をいただき議論することで何か見えてくる部分もあるかもしれない。

このユーザー間の議論という点は、ライトノベル業界では弱いところである。

ライトノベルの評論家がいないという良く言われているが、そもそも、この発言の背景にはライトノベルのレビューサイトへの危機感を語られている。

すなわち、ユーザー間の議論が弱いということは、ライトノベルの評論家がいないと並んで作家達にも周知の事実なのである。

今後に対してより一層、ライトノベル業界に静観以外の道筋はないと感じてしまう。


さて今回、多くのクリエイター様の話題にも触れ、ご迷惑にならない文章を心がけているつもりではあります。また、当然語れない部分でも指摘したいこともあったかとも思います。
何かありましたら、ご連絡いただければ誠実に対応させて頂きたいと思っております。

また、今後のライトノベル業界の改善となるような議論に繋がるのであれば、コメントでご意見、ご感想、ご指摘をお待ちしております。

いいなと思ったら応援しよう!

ツカモト シュン
読んで頂き、もし気に入って、サポートを頂ければ大変励みになります。 サポートして頂けると、晩ご飯に一品増えます。そして、私の血と肉となって記事に反映される。結果、新たなサポートを得る。そんな還元を目指しております。