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『搾精病棟 全年齢版』打ち切りから見えるモノ ~同人誌を取り込む戦略とその失敗

『搾精病棟 全年齢版』が終わってしまったが、最終巻の帯でもあるように打ち切りという認識で問題はないようだ。実際、てこ入れで新展開が始まろうとしていた中で唐突な終わりであった。

だが、裏表紙側の帯にもあるように、この「搾精病棟」シリーズは今も継続して展開している。

「搾精病棟」シリーズは成年向けコンテンツではある。しかし、別出版社の漫画作品『淫獄団地』は成年向けでなく「搾精病棟」シリーズともリンクして、今なお人気作で連載を継続している(ただ、謎の人気ぶりではあるが)。

例外的ではあるが一般向けでもコンテンツが継続している中で、『搾精病棟 全年齢版』の打ち切り理由は人気不足というのは成立しない。先にも語った様に、てこ入れをしている最中でもあった。
それだけに打ち切り理由は、単なる売り上げが悪いかったのかと考えられる。

さて、このことを前提条件で他を見ていくと、色々と納得できる部分が出てくる。

同様な打ち切りのケースとしては『ケモ夫人』が上げられる。
これも出版社が同じ講談社でwebで人気を博した作品を出版していたが、4巻で打ち切って、作者自身による同人誌で販売は継続している。
ただ、1巻時点でも様子見での出版ではあったが。

逆に成年向けコンテンツでメディア展開して、そこから一般に来たのが、『今泉ん家はどうやらギャルの溜まり場になってるらしい~DEEP~』。

この作品は同人誌と一般が別物の内容ではなく、同人誌のサイドストーリーとして本作が展開していく。それだけに同人誌と一般で相乗効果を生んでいる。
こちらは出版社は竹書房となっているが。

このように同人誌にしても、web連載にしても、人気が出たモノを成人向け、また万人受けしないサイケな作品でも出版社が求めているのが明白。
例に上げなくとも、このような形態での作品が商業化しているのは今となっては日常茶飯事である。

そして、それらの理由とは単純に小さな市場でも売れているから、大きな市場に来ても倍以上売れると判断したという話なのだろう。

数字の例として2022年3月時点では、『姉なるもの』は商業連載版100万部と同人版50万部発行と作者本人が語られている。https://twitter.com/lizhi3/status/1507703651263184906

こういった実例が出版業界において、成人向けであっても一般作品にする呼び水になっているのだろう。
そして、それが適わないと知ると打ち切りを行う。

私はこの状況を“AKB商法”と似ているとみている。それは「CDを複数枚買わせようと誘導」ではなく、「CDが売れない時代での苦肉の策」という点である。実際、“AKB商法”が聞かなくなった今、CDが売れているかはランキング結果からも可視化されている。
さて、出版社においても成人向けコンテンツであれば、購入者は経済力があるだけにそういった流れが自然と生まれるだろう。

それだけに『搾精病棟 全年齢版』は従来の売れないだけの「打ち切り」とは違う。

シリーズは今も継続して、展開している。そう人気もあり、収益もあるコンテンツを切ることは、出版社側にとって打ち切りの正当性を失ってしまっている。これもまた可視化されている事実となっている。

これに関連する話題として、異世界系WEB小説のコミカライズレーベルを立ち上げに対して、編集者を求めていること求人サイトに出されていたりする。また、noteでもそういった編集者の声が掲載されていたりする。

問題は、出版社が外部から採用した編集に任せて企画されていることが、始めから我々にも確認できる点である。

今の出版社は、自社コンテンツに頼らず、人材すら外部頼りなのが様々な点から確認できてしまっている。そのうえ、出版社のやらかしすらもSNSで公表されている。

同人誌を商業展開すること自体は問題でもないし、人気が振るわず打ち切りにする事も仕方が無い。

ただ、人気もありながら、出版社側の利用で打ち切るにするのは企画した時点での失敗であることは可視化されてしまっている。何せ、シリーズは商業的にも継続しているのだから、言い訳の材料が一つも無い。
特に成人向けで可視化されていることは、読者はその背景を推測しやすい現状を生み出している。社会経験がある者が多いからだ。

昔であるなら、不可視であった話であっただろうに、出版社外からコンテンツを持ってきたことで多方面での視点が出来てしまった。

さて、出版社が同人誌を取り込む戦略よりも今後問題になっていく話も可視化されつつある。それはコンテンツを売り込みたい企業からの売り込みである。

これはまだ私の肌感による部分もあるのだが、出版社に限らずそういった話はどこにでも聞く話。今までの上げた話題にしても、オシント、公開された事実から、調べて付き合わせているだけである。

後、一部では関係者が内情というか当時を語っていたこともあるが、漫画配信サイトの『サイコミ』の単行本レーベルを見るにそういった部分が感じされる。

『サイコミ』の単行本レーベルは他社に渡っている。

これに関しては、コンテンツを売り込みたい企業からの売り込みというよりは、出版社の印刷機を間借りすることで足しにしているといった感じかも知れない。

ただ、こういった流れは他業種を見ていても明らか。最近のテレビであっても、ネットの配信番組の宣伝を見かけることも多くなった。確かに広告である以上はそこに何の問題はないだろう。
しかし、テレビでネットが台頭している様を見せられるのは、テレビ関係者にとってどう感じるだろうか。

そもそも、出版社は自身のレーベルすら他の編集に任せるのが、可視化されている今ではどう感じる以前の問題なのかもしれない。
そういう中では、単に収益だけの理由で打ち切ったのは企業としては当然であり、何も感じてないのかも知れない。

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