乾杯するより、一人で飲む酒
「カンパーイ」と横の個室から声が漏れる。
自粛があけ、みんな普段の生活に戻り、乾杯する喜びを身に沁みて感じている。
大学生のサークル、大学友達、仕事の同僚、合コン、など様々な場面で、”乾杯”は行われ、人々を幸せにする。お互いのグラスを”カーン”とし、大きな声で「カンパーイ」と言い、宴や宴会がスタートする。
みんなでワイワイ、ガヤガヤ、アルコールを体内に入れるだけで、今まで辛かったこと、悲しかったこと、忘れたいことを一時的に忘れることができる。人々にとって、”最強のひみつ道具”である。
それを僕に当てはめてみると、実はそうもいかない。
なぜなら、ぼくはお酒が飲めないから。
(正確にいうと、飲めるけど、非常に弱いから飲めないことにしている)
お酒を飲むことは少しの憧れだった。
憧れた先には
憧れた理由は2つあって、
1つ目は、嫌なこと、辛いことを忘れることができるからだ。つまり、処方箋になり得る。「お酒を飲んで忘れよう」そんな日もたまにはあってはいいのではないか。
2つ目は、子供の時に見た、親戚たちの集まりで、おじさんたちがお酒を飲んでいた瞬間だ。
いつもは無口な人なのに、お酒が体内に入ると、めっちゃ話す人。アルコールを体内に入れると、テンションが上がっていつも出せない自分が出てくる。裏の自分なのか、本当の自分なのか?誰にも分からない。
うまく話せない人が、それを飲むだけで、いつもの自分ではない「ダレカ」になることができる。
お酒は悪だ
一方で、親からは「お酒は飲みすぎるな」「飲んでも良いが、人に迷惑をかけるな」と、口が酸っぱくなるまで言われ続けた。
幼い時から、20歳になるまで、「お酒」という言葉が出ると、そんな話をされた。
なぜここまで、僕に言っていたのか?
それは僕のおじいちゃんが原因である。
おじいちゃんは、とてもお酒が好きで、おそらくアルコール中毒であった笑
お酒飲んで、人に迷惑をかけたり、酔いすぎて、暴力を振るうこともあったそう。
(実際のおじいちゃんはもっと優しくて、たくましい人だった。)
一番ヤバいエピソードは
昔、僕おじいちゃんがお酒を飲みすぎて、地元の橋のところで寝そべっていたことがあったそう。そこにきた友人がそれを目撃して、おばあちゃんに連絡した。「あなたの旦那さん、橋の下で寝てましたよ。」と。
その後、おばあちゃんとお父さんがおじいちゃん迎えに行って、家に運んだ。
こういうことあったので、うちの家ではお酒を飲むのはタブーとされてきた。(実際はそんなにピリピリはしてないよ)
僕はこの時、「友人さん、おじいちゃんを車に乗せて、家まで運んであげてよ笑笑」と思った。
大学生20歳のぼく
そんなこともありながら、20歳になり、お酒を飲める年齢になった。そして、お酒と共にする日が増えた。
しかし、僕はアルコールを体内に入れると、すぐに顔が赤くなり、しんどくなり、眠くなる。典型的なお酒がよわい人だったのだ。
「なんで、アルコール耐性弱いねん」と遺伝子を恨んだこともあったし、悲しんだ。
周りの友達にお酒をたくさん飲める人がいて、多く飲めるのが正義みたいな風潮もあって、すごく辛かったし、妬ましかった。
「飲めないのが悪」
そんなレッテルを貼られるのが僕は本当に嫌だった。だから、毎日飲む練習もしたし、飲めるフリもしてきた。
お酒を飲める自分を演じてきた。偽りの自分だと分かりながら、、、、、
頑張っても、飲めるようにはならなかった。
そんな自分を恨んだし、嫌いになりそうにもなった。
友達から取り残される感覚を味わうのが怖くて、お酒に誘われる時は断っていた。
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月日が経つにつれ、僕はお酒を飲まなくなっていた、、、、、
たとえ飲みに行っても、お酒は飲まなくなっていた。
飲むことを諦め、”飲めないこと”を僕の周囲に宣言した。
いつの間にか、お酒からソフトドリンクで乾杯していた。
そうすることで、周りの人と比べることなく、お酒の雰囲気を楽しみながら、ワイワイ話すことができる。
アルコールを飲めないことを理解して、アルコールがある、ない関係なしに接してくれる人がいるんだ。
お酒を飲めなくても、それだけで十分じゃないか。
一方で、僕の心の中で、何か哀しみが蓋を閉じた。
コロナ期間中の出会い
コロナになる前に、3月初期に友達と宅飲みをすることになった。そこでは、色々なお酒を味わい、おつまみを食べた。
お酒に合うおつまみを友達が作ってくれた。
それが最高に美味しくて、飲むことへの楽しさは色々あるんだなぁと深く関心した。
今までは、一部のことしか知らなかったけど、少しずつ深いところの部分も知れた気がした。
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コロナ期間に入り、家での楽しみ、娯楽を探していたその時、ふとお酒を飲みたくなった。
なぜかはわからない.........
ある時、
お姉ちゃんの家に訪ねた時に、旦那さんに聞いてみた。
「お酒飲みたいんですが、何か良い方法ありますか?」
そうすると、
「タンブラーに氷と炭酸水いれて、メジャーカップに少なめにウィスキー入れてかき混ぜて、切ったレモンを絞って飲んだら美味しいよー!」
と教えてくれた。
そのやり方で、飲むとしんどくならないし、自分の好きなペースで、ゆっくりチョビチョビ飲める。
最高の感覚だった。
「こんな飲み方もあるんだ。大人の飲み方ってこんな感じなんだ。」と少し大人っぽくなれた気がした。
一人でも、みんなでも
リアルで大人数で集まって飲むことは、今のご時世中々難しい。人と人が飲み、愚痴、相談などが起こる瞬間は素敵だ。人間らしさを感じる。
いま、人は日常に飲めることを望んでいる。
リアル飲み会の代わりに、オンライン飲みがある。画面越しに映る友達といつまでも楽しみ、夜更かししすぎることもある。
そんな新しいニューノーマルな生活様式も出てきて、新しい選択肢として、一人で宅飲みをするのも素敵だと思う。
大人数の乾杯も良いが、一人で乾杯するのも悪くない。自分のために時間をとり、マイペースに飲むお酒の飲み方も広まるといいなぁ。
「今日も1日おつかれさま!」と自分で言える瞬間も大事な気がする。
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